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EX04.戦うレスラー

コータ達が居なくなって1か月。

隣国の戦争はまだ続いている。


村に攻め込んできたのは、ゴデュア王国だろう。

この前のように転移者やモンスターが来ることはないが、時々偵察で兵を送ってきていた。

ベンジーとニッキ―を取り返したいのだろうか。


ニッキ―はベンジーと同じくアメリカで育ったようだ。

いきなりこの世界に連れて来られ、ベンジーと同じように勇者だと言われていたそうだ。

2人は面識がなかったようだ。

転移者は会わないように徹底されていたんだろう。


「おい!ジジイ!」

ヒューズがいつものように生意気な口をきいてくる。

「なんだ子ザル」

「訓練してくれんじゃねーのかよ」

ヒューズは少しふてくされているようだ。

「悪かった悪かった。すぐ始めるから準備しろ」

「おう!」


俺自身もピエロ野郎と謎の腕、それに爆弾にやられてしまった。

身体はスキルのおかげで回復はしたが、次戦う時に勝てるかどうかわからない。


俺も鍛え直さないといけないな。


▽ ▽ ▽


国に呼び出された。


冒険者としてでなくギルドマスターとしてだ。

俺が冒険者時代にお世話になったギルドマスターのコルビーと一緒に王都に向かった。


「なんでなりたての俺が呼び出されるんだ?」

「ギルドマスターは全員参加なんだと、まあこの国には4個しかないけどな」

「他のお偉いさんも集まってるんだろ?」

「らしいぞ。噂じゃこの国は別の国に吸収されるって話だ」

「あり得るのかそんなことが」

「しらん。噂は噂だ」


俺達は馬車乗り、王都へ向かった。



▽ ▽ ▽



王都には数日滞在した。


国王からの話は、噂通りだった。

隣国のワイアット王国に吸収されるという。

ワイアット国王の慈悲深い提案で、エサトス国はエサトス領になり国王は領主となることになった。

他の機関は基本的に今まで通りみたいだが、貴族だった者は貴族として扱われるがいろいろ大変になるらしい。


今回の招集は、国王自らそのことについての説明と謝罪をするために集められたようだ。

エサトス国王が我々に頭を下げてきたときは驚いた。

この人の良さが、この国が無くなる原因になったんだろう。

場はもっと荒れるかと思ったが、まったくもって荒れなかった。

呼ばれた人間達もお人好しなのだろう。

俺はこのお人好しが多いこの領を守っていきたいと心から思った。


冒険者ギルドマスターは別で再度集められた。

国王には、ギルドマスターに就任させて国境を守らせてたことを謝罪された。

既にワイアット王国と交渉を進めていて、バタバタしていたらしい。


国王は謝罪をすると俺とギルドマスター達に要望を伝えた。

国の吸収されることが公に発表されるまで、隣国のゴデュア王国とダラーガ帝国の戦争で国民が被害に合わないようにしてほしいと。

公に発表されればゴデュアもダラーガも簡単には手出しをしてこないはずだから、それまでの防衛を任された。

俺達ギルドマスターは冒険者を国境に近いうちの村に集めることで話がまとまった。



俺とコルビーは馬車に乗り込んだ。

「やっと帰れるぞ!」

「そうだな。就任早々お疲れ様。1週間後くらいには俺も村に行くから、受け入れるように準備頑張れよ」

「そうだな。気合入れないとな」


俺達が話していると、馬車は進みだした。



▽ ▽ ▽



馬車からコルビーが降りた。

「じゃあ頑張れよ」

「おう!」


馬車が出発しようとするとギルド職員が走ってやってきた。

「ギルドマスター!コングさん!大変です」

「どうしたんだ。王都から帰ってきて疲れてるんだが」

「コングさんの村が、ゴデュアに攻め込まれています」

「は?」


俺は馬車を降り、馬を外した。

「コルビー。馬を借りるぞ」

馬にまたがり村へ向かった。


▽ ▽ ▽


半日フルスピードで馬を走らせた。

そろそろ村に着く。


ドーン!

ボーン!

村の方角から爆発音が聞こえている。

現在進行形で戦っているようだ。


村が見えてきた。

だが俺が知っている村ではなかった。

村は大量の石の柱で囲まれていて、外から人が入れない様になっていた。


「ベンジーの魔法か?」

俺は柱のそばに馬を止め、マスクをつけた。

「行くぞー!」

俺は柱を飛び越えて、村に入った。


村は戦闘の影響を受けていなそうだった。

いつもと違うのは、村の中にタマゴンが大量にいた。

多分、村を守っているのだろう


俺に気付いた村人が小屋から出てきた。

その中にはヒューズとリリアンも居た。

「みんな大丈夫か?」

みんなは頷いた。


「ベンジーや冒険者達は?」

ヒューズとリリアンが口を開いた。

「みんな昨日から帰ってきてない」

「危ないから、良いと言うまで村からでちゃダメだって」

「なるほど」

ベンジー達は外で戦っているみたいだな。


「俺もベンジー達のところに行く。みんなは今まで通り、出来るだけ小屋の中に居てくれ」

「「「「「わかりました」」」」」」


ドゴーン!

俺がベンジー達の元へ向かおうとすると、石の柱の1つが爆発した。

「みんな、小屋へ!」

村人たちが小屋に入っていく。


爆煙の中から現れたのは、良く知っている真っ赤な服を着た男だった。

「ほーほーほー!」



▽ ▽ ▽



私は村に置いておいたタマゴンからコングさんが帰宅したことを感じ取った。


「よかった。コングさんが帰ってきた」

安心してちゃダメだ、私を受け入れてくれたみんなの為にこいつを倒さないと。


私の目の前にはガリガリの長髪で顔に刺青がある男性がいた。

戦ってる最中もニヤニヤしながら私を見てくる。


「ねーねー。もうやめようよ。その綺麗な体に傷が付いちゃうよ」

「うるさい。私はあなたを倒さないといけないの」

「君が遊んでくれるのはうれしいけどさー。昨日からずっとモンスターと戦ってたあの男は大丈夫なの?」

「うるさい!」

刺青男の言葉に私は動揺した。


昨日の朝、数人の兵士とモンスターが大量に攻め込んできた。

ベンジーと私、それに冒険者の方々で1日中戦っていた。

ベンジーは何回も魔法を使い、フラフラになっていた。

モンスターも何回も攻め込んできた。


今日の昼、やっとモンスターが来なくなったと思ったら、大量の兵士と転移者と思われる人間が3人現れた。

目の前にいる男がその転移者の1人だ。


ベンジーが1人・冒険者の方々で1人を対応している。

もうボロボロのベンジーをこれ以上戦わせてはいけない。

私はこの男を倒して、ベンジーの元へ行かなければ。


「これ貰っておいてよかったかも」

私はポケットから羊をモチーフにしたマスクを取り出した。



▽ ▽ ▽



「ははは!やめてくださいよー当たっちゃいますよー」

ピエロ男は僕の攻撃を飛び跳ねながら避けている。


昨日からずっと戦っているせいで魔法の精度が下がっている。

「当てにいってるんだけどね!ストーンランス!」

僕は大量の石の槍をピエロ男に飛ばした。

「ははは!」

ピエロ男はカラフルなボールを石の槍にぶつけて攻撃を防いでいる。


「くっそ!何でこんなふざけたやつに攻撃が当たらないんだ」

「ははは!行きますよ」

ピエロ男が手を叩くと、ピエロ男の周りに色とりどりの風船が浮かんだ。

「行って来い!」

風船は僕に向かって飛んできた。


「ウィンドカッター」

飛んでくる黄色い風船に風の刃が当たる。

風船が破裂すると中から雷の球が僕に飛んできた。


僕はストーンウォールで雷を防いだ。

その様子を見てピエロ男はニヤニヤする。

「ざんねーん。ハズレを壊しちゃったねー。次は頑張ってねー」

風船は僕の周りを囲んだ。


「コングさん。そろそろ限界かもです」

僕はポケットにしまっていたマスクを被った。



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