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EX03.不死王マーシー

スタンピードの件以降、街は僕を英雄扱いをするようになった。

正直嬉しかった。

色々大きな依頼をこなし、僕達はBランクに昇格した。


僕とホルンは家のリビングで話をしていた。

「やっと俺らもBランクか」

ホルンは嬉しそうにしていた。


「そうだね。まあ大変な依頼もちゃんとこなしたからね」

「お前の『学友召喚』のおかげでだいぶ助かったぞ」

スタンピード以降、『学友召喚』を隠さず使うようになった。

そのおかげで力量以上の仕事が出来ていた。


ユーンが帰ってきた。

「おかえり!」

「た、ただいま」

ユーンは何か気まずそうな表情だった。


「どうしたの?」

「え、えっと。気を悪くしないでほしいんだけど」

「ん?」

「街でマーシーの事が噂になってて」

「え?噂?」

「うん」

ユーンは言いづらそうにしていた。


それを見たホルンが口を開いた。

「マーシーが人間じゃないって話だろ?」

「え?」

僕はユーンの顔を見ると頷いた。


「スケルトンを操るし、魔法もものすごく強い。それに見た目が何年も変わらないから、マーシーは人間じゃないって」

「あいつらはスケルトンじゃないんだけどな」

「まあそれを知ってるのは俺らだけだし、噂を流してるやつもお前に嫉妬してるんだよ」

「そうなのかな」

「気にすんな。噂なんて数日経てば無くなるよ」

ホルンの言葉で僕は安心した。



▽ ▽ ▽



数日経っても、噂は消えなかった。

むしろ悪化していて、僕ら3人は街の人から距離を置かれるようになっていた。


「次の依頼なんだけど…」

ユーンがまた気まずそうにしていた。


「Cランク冒険者と合同で依頼を受けるんだけど、マーシーには留守番をお願いしたいの」

「え?」

「相手のパーティがマーシーが居るのなら受けないと言ってきたの。いつもなら断るんだけど、最近活動しにくくなっててお金が必要なの」

ユーンは下を向いた。


ホルンが口を開く。

「その一緒に依頼を受けるパーティなんだが、噂を流した犯人の可能性があってな」

「え?」

「無理にマーシーがついて行くってなったら何をしてくるかわからない」

「なるほど」

「だから今回は俺達に任せてくれ」

「…わかった」


僕は納得し、2人に任せることにした。



▽ ▽ ▽



今日は2人が依頼から帰ってくる日なのに、まったく帰ってこない。


僕は心配になり、冒険者ギルドに向かうと同行してたパーティが居た。

僕に気付いたギルド職員が声をかけてきた。

「マーシー。ユーンとホルンが依頼中に事故に遭って、崖から落ちたみたいなんだ」

「え?そんな」

僕は愕然とした。


「まだ生きてるかも!捜索にはいかないんですか?」

「同行したパーティが捜索したけど死体はモンスターに食べられてしまってなかったそうだ」


僕は同行したパーティを見ると口元がにやけていた。

こいつらが何かしたんだ。


僕が睨むと、そいつらの1人が口を開いた。

「お前みたいな人間じゃないものが一緒に居るせいであいつらは不幸になったんだ」


僕はそいつらに飛び掛かろうとしたが思いとどまった。

今はそんなことより、2人を探しに行かないと。


冒険者ギルドから出ていき、骨竜を召喚して2人が死んだと言われた場所に向かった。


▽ ▽ ▽


2人が落ちた崖に来た。


「ここから落ちたのか。くっそ!」

崖はあまりに深く、底が見えなかった。

僕は骨竜に乗って崖の底に向かった。


「ユーン!ホルン!」

2人を呼ぶが応答がない。

いくら探しても2人は見つからない。


「なんでだよ!」

探している最中、モンスターに襲われるが瞬殺して捜索を続ける。

「本当にモンスターに食われたのか?」


僕は目の前が真っ暗になった。

そこからの記憶はほとんどなかった。

崖の底にいるモンスターを殺しては腹を切り裂いていった。

だけど2人を見つけることはできなかった。


「もしかしたら行き違いで帰っているかも」


僕は骨竜に乗り、街へ戻った。


▽ ▽ ▽


僕は絶望を通り越して憤慨した。


街に戻ると目の前が火の海だった。

僕らの家が燃やされていた。


「おい!出てけ化け物!」

「お前のせいで未来ある冒険者が死んだんだ!」


40人近い人間が石を投げながら暴言を吐いてきた。

その中には同行した冒険者も居た。


何でこんなことになってるんだ。

僕が不老不死にならなければよかったのか。

なんでなんでなんで。


「化け物死ね!」

僕に殴り掛かろうとする冒険者の腕をつかんだ。


「もう知らない」

「なんだよ化け物!離せ!」

「僕らしくないかもしれないけど、今日だけは許してくれ」

「何言ってんだよ」

「僕はこいつらとは違って殺しはしない。だけど報いは受けさせるから。僕のせいでごめん、ユーン、ホルン」

僕は冒険者達に報復をすることを決めた。


「さっきから何言ってんだ化け物」

「うるさい」

ゴキッ!

僕は冒険者の顎を砕き、学生鞄から不死王の骨面を取り出してつけた


▽ ▽ ▽


僕は骨鳥に乗り、逃げるように街を飛び出した。

僕に向かってきたやつらは1人も殺さなかった。

だけど簡単に生活ができないようにはした。


「人と関わって生きちゃダメだ」

僕は島に戻ろうかとも考えたが、あそこは元の世界から人が来る可能性がある。

『サーチ』をかけながら人がいない場所を探し続けた。




▽ ▽ ▽




街を飛び出してから27年。


僕は1人でダンジョンの最下層で暮らしている。

たまたま見つけた無人島にダンジョンがあったので攻略をした。

ダンジョンコアを1年ほど調べていたらダンジョンマスターになることができた。

27年間、このダンジョンには両手で数えられる数しか人は訪れていない。


僕は孤独の中でホルンとユーンを生き返らせる方法を研究し続けていた。



ドゴン!

目の前に階段が現れた。


「え?」

階段は99階層のモンスターを倒さないと出現しない設定にしていたはず。

まさかダンジョンをここまで攻略してきた冒険者が居たのか?


僕の研究の邪魔をするのなら容赦はしない。

僕は不死王の骨面を付けて構えた。


「おい。マサシ!なんで変な仮面付けてんだ?」


階段を下りてきたのは、良く知っている人物だった。




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