22週目.チキンソテーのレモンバターソース
米は炊いたが、さすがに次の連絡には間に合わない。
「次はパンで攻めるか」
俺は鶏肉の下味をつけ、シメジとホウレンソウとニンジンを軽く炒める。
炒めた野菜に牛乳とコンソメを入れて加熱する。
「とりあえずメインとパンは、呼ばれてからでいいか」
俺は連絡が来るのを待った。
タッタラー♪ダン!ダン!タッタラ―♪ダン!ダン!
音楽が部屋に鳴り響いた。
「やっぱり30分ペースだ」
俺はタブレットを持ち、【スタート】をタップし、レッドホーミングのマスクを装着した。
気絶をするような衝撃に襲われ、目の前は真っ暗になった。
[10秒後プレイ画面に移行します。プレイ時間は1時間。それでは良いバトルを]と目の前に表示された。
カウントが進んで0になると、スマホのバトロワゲームのような画面に切り替わった。
小屋の中に2人はいた。
「あれ?室内だ」
「今日は特にすることないんだよ」
「え?まじ?」
コータは暇そうにダラダラしていた。
「小屋も人数分作り終わったし、ヒューズ達の指導はコングとベンジーに任せてるし」
「ベンジー?」
初めて聞く名前が登場した。
「あー首輪男のこと。ベンジャミンって名前なんだけどベンジーってみんな呼んでる」
「え?首輪男起きたの?」
「ああ。気絶した翌日に起きたよ。ベンジーは戦争してた国に勇者として召喚されたらしい」
「まじか。アニメでよくあるやつ」
「1年くらい訓練をしながら王城で生活をしていたらしいんだけど、隣国との戦争ががっつり始まったあたりから記憶がないらしい」
「え?ってことはそこから洗脳が始まったの?」
「多分な。それに俺らと戦っていた時ほど魔力の容量は大きくないから、これで無理やり魔力を入れられてたんだと思う」
コータは注射器みたいなものをインベントリから取り出した。
「ん?それってあの鎧着てたやつが持ってたやつ?」
「うん。『鑑定』したら、人から無理矢理魔力を奪ったり入れたりできるアイテムだった」
「じゃあ誰かから取って、ベンジーさんに入れてたってことか」
「そう。洗脳とこのアイテムを使ったら、従順で火力が高い人間兵器のできあがりってことだよ」
「えげつねー」
俺はコータの話にドン引きした。
「とりあえず、今日は飯食ってから動こうと思ってんだけどいいか?」
「わかった。ちょっと準備してくる」
俺はマスクを外し、キッチンに向かった。
下味をつけた鶏もも肉を皮がパリパリになるまで焼く。
ロールパンをトーストに投入してして温める。
もう1つのコンロを使ってバターをフライパンで溶かし、レモン汁と胡椒を入れてソースの完成だ。
さらにチキンソテーを盛って、ソースをかけたら完成だ。
テーブルの上にチキンソテーとパンとスープを置く。
「転送!」
テーブルの上のものが光ってなくなった。
カウントダウンが始まった。
「いい匂いだな」
「おいしい匂いするー」
コータとユイは匂いにやられているようだ。
「チキンソテーだよ。ソースはレモンバターソース」
「えーなんかおしゃれだな」
「2人に美味しい料理を食べてほしいからな」
「ユーサクのご飯はいつもおいしいよ」
「ありがとユイ。ユイがかわいく食べてくれるから頑張れるんだよ」
ユイはちょっと恥ずかしそうにした。
▽ ▽ ▽
俺はさっきニョッキを食べたばかりだったから、2人が食べている間は会話を楽しんでいた。
「うまかったー」
「ユーサク、ありがとう」
「いいんだよ」
食べてる様子が見れるとやる気が出るな。
「この後どうするんだ?」
「ヒューズ達の事、見に行くか?」
「いいね」
「ユーサクが考えたスキルの使い方をいろいろアレンジしたみたいだぞ」
「うわー楽しみだ」
俺達は小屋を出て、訓練場所へ向かった。
訓練場所では、コングさんがヒューズさんと組手をしていた。
そして見覚えのない獣人がリリアンちゃんに何かを教えていた。
「あ、アライグマの獣人?」
「いや、あれはベンジーだぞ」
「え?あれが?」
「だいぶ身体が弱ってたみたいで、心配だからってコングが元の世界から持ってきたプロレス衣装を渡したんだよ」
「なんでプロレス衣装?」
「いや、一応マジックアイテムらしい」
「あーなるほど」
「なんか名前もあったはず。コングが相方が出来た時に着させるつもりだったっていってたな」
「ラクーンマスクだよ」
ユイが教えてくれた。
ラクーンマスクことベンジーさんが俺達に気付き歩み寄ってきた。
「Are you Yusaku?」
俺はしっかりきょどった。
「おーイエスイエス。マイネイムイズユーサク!」
コータが俺を不思議そうに見ている。
「ユーサク。なにしてんだ?」
「え?何って?ベンジーさんと話してるんだけど」
「ん?言葉通じてない?」
「あーそういえばスキルを持ってるとか言ってたよな。うわー俺適応外なの?」
「機械越しじゃだめなのかもな。まあユーサクは英語の成績よかったし大丈夫だろ?」
「いやリスニングなんてできねーよ。日本の英語教育の弱さ舐めるな!」
「そんなもんなのか。まあ話したいことがあれば俺が伝えるよ」
「ありがとう」
コータを交え、ベンジーさんと話した。
洗脳とかがあったから元の国には戻るつもりがないとのこと。
助けてくれたコングの手伝いをして、今後の事を決めること。
ベンジーさんはコータほどではないが魔法が使えるから、リリアンの指導をしろとコータに言われたらしい。
ちなみに元の世界でプロレスが好きだったらしく、マスクは喜んでつけてるとのことだ。
▽ ▽ ▽
訓練を見ていたら、2人が俺の元へやってきた。
「ユーサクさん!スキル上手く使えるようになれました」
「私も少しだけどなりました」
「本当?じゃあ少し見せてもらえる?」
「「はい!」」
リリアンちゃんは少し離れたところに行った。
「ウォーターボール!」
リリアンちゃんの手のひらの上には水の球が浮いていた。
「増殖!」
水の球が2つになった。
リリアンちゃんが手を向けると、その方向に水の球が飛んで行った。
ヒューズくんはインベントリからナイフを出して空に向かって投げた。
するとナイフが飛んでいる先にヒューズくんが移動していた。
空中で数本のナイフを地面に投げつける。
ナイフが刺さっている場所に次々と瞬間移動のように高速で移動していた。
「おー2人共凄いな」
「そうだろ?『武器拾い』を移動手段に使うとか、さすがユーサク」
「レベルアップで高速移動できる範囲が広くなればいいよな」
「そうだな。『増殖』の使い方はベンジーとの戦いを見て思いついたのか?」
「うん。数の暴力でコータが止められてたしな」
「一応言っておくが、地形を変えない魔法縛りで戦ってたんだからな」
コータは俺の言い方が気に食わなかったようだ。
「はいはい。わかったよ」
俺はカウントダウンが終わるまで、2人の訓練を見て過ごした。




