18週目.シュウマイ弁当
日曜に1通だけ『メッセージ』が届いた。
無事にモンスターと仲良くなることができたみたいだ。
今はそのモンスターに魔力を島に流す方法を教えているらしい。
ユイも魔法が多少使えるらしく、率先して教えているみたいだ。
火山に居たモンスターは、魔力が膨大な量になっていたようで、そのせいで狂暴化していたらしい。
ユイが『テレパシー』をつかって話しかけなければ、火山が噴火していた可能性があったとのこと。
コータは絶賛マジックアイテムを製作中で、なんか変な物をいろいろ作らされているみたいだ。
素材などは女神が用意しているらしく、組み立てと魔力を込めるだけらしい。
やっぱり少しバグっているみたいで、返信したけど返事は来なかった。
「今日の夜あたり連絡来そうだなー」
俺は仕事現場で休憩していた。
仕事中に連絡が来てもすぐ対応できるように、撮影機材を置いている部屋にいることが多かった。
トゥントゥルルン♪トゥントゥルルン♪
タブレットが鳴った。
「うわー最悪だ。休憩あと少ししかないし、飯どうしよう」
俺は緑の受話器マークを押してビデオ通話にした。
「ユーサク。今大丈夫か?」
「いやなかなかまずい。絶賛仕事中だ」
「まじか」
「とりあえず送れそうなもの探してくるから、まっててくれ」
俺は食べ物が売ってそうな場所へ向かった。
撮影現場から出ようと急いでいると、ケータリングを見つけた。
「え?これいいじゃん」
俺はそこに詰んであったお弁当4つと飲み物を持って機材部屋へ向かった。
「すまん。弁当まだ食っていないであろう制作部の若者達」
俺は部屋に戻ってきた。
「待たせた。すぐ送る!転送!」
弁当は光って消えた。
そしてカウントダウンが始まった。
「ありがとう。うわ!シュウマイ弁当じゃん」
「ケータリングからパクってきた。まあ食べさせたいと思ってたものがあってよかったよ」
「最高だ。ユイも喜ぶぞ」
「うん。早く食べさせてあげてくれ」
「おう。今日は『ゲーム』はなしの方がいいよな」
「そうだな。そうしてくれ」
ディスプレイは暗くなった。
「早すぎ!」
俺が機材部屋から出ると、制作部の若い男が話しかけてきた。
「そろそろ撮影開始しますよ」
「おっけー行くわ。そういえば弁当食った?」
「食えるわけないじゃないですか」
「そうだよな。今日撮影終ったら飯おごってやるって制作部の若い奴に伝えといて」
「まじっすか?あざす!」
俺の財布から金が飛んで行く音が聞こえた。
▽ ▽ ▽
「このシュウマイ弁当大好きだったなー」
俺はシュウマイ弁当を食べ始めた。
ユイに弁当を持って行った時に、戻って一緒に食べようと言ったが断られてしまった。
あのモンスターが心配だから、近くに居たいそうだ。俺は少し寂しくなった。
俺は寂しさを紛らわすようにシュウマイ弁当を食った。
「うーん。クソドジ女神の言われたものは全部作ったけどな」
俺の目の前には謎の機械が2つ2セットとモニターみたいなもの2セット、そして腕輪が10個。
そして謎にドアまで作らされた。
「あのクソ女神、今度会ったらぶん殴る」
クシカ♪クシカ♪
不快な着信音が鳴った。
「マジでこの通知音どうにかならないか?」
俺はタブレットで『メッセージ』を開いた。
クソ女神からだった。
[マジックアイテム製作してくれてありがとー!とりあえずドアを小屋の壁に設置してくれたら、他のものは僕の方で設置しておくよー]
「ドアを設置?」
俺はとりあえず作ったドアを小屋の壁に設置した。
「おい!見てんだろ?良いのか、壁にドアが付いているだけだけど」
クシカ♪クシカ♪
[うん。それでいいよありがとう]
そのメッセージを見た瞬間小屋が光り、ドアの周りに俺が作ったマジックアイテムが1セット置かれていた。
「これは本当に何に使うんだ?」
クシカ♪クシカ♪
[これの使い方はあとでメッセージに送っておくよ!最後のお手伝いについてだけど、数日以内にそのドアからある人が来る。その人がしたいことを全力で手伝ってあげて!あとユイちゃんとユーサクの存在は教えちゃダメだからね!お互いに存在を知っちゃうといろいろめんどくなるから。]
「いや、無理だろ。てかしたいことって何?」
クシカ♪クシカ♪
[この島で暮らすもよし、元の世界に戻るもよし、この世界を楽しむもよし!ちなみに来るのは君の世界に居た人間だから、チートスキルも得られると思うよー。ちなみにコータがその扉を使って日本に行こうとすると身体が消滅しちゃうかもだからやらないでね]
「は?元の世界のやつが来るの?はぁー意味わかんねーよ」
とりあえず俺はいろいろと頭の中を整理した。
元の世界の誰かがこのドアからやってくる。
その人がやりたいことを全力で手伝う。
ユイとユーサクの存在をばれてはいけない。
「とりあえず数週間、ユイには火山で生活してもらった方がよさそうだな」
俺はユイにそのことを伝えに火山へ向かった。
▽ ▽ ▽
山を登っていると、ユイが下山していた。
「あれ?どうしたの?」
「あの子が眠いっていうから、コータの手伝いに来た!」
「そうか。魔力は落ち着いてそう?」
「うん!私ももう少し魔法がうまくなりたいなー」
「練習あるのみだな」
冒険者登録をしたときに魔力適性検査というものをしてもらって、ユイは火と風と聖の魔法が使えることが分かった。
けっこう練習しているんだが、なかなか難しいみたいだ。
「ユイ、依頼のことなんだけど」
「なに?」
「ユイにはあの子と火山で生活してほしいんだ。その間に俺が依頼を済ませるから」
「え?」
ユイは不安そうな顔をした。
「数日だけの話だから。終わったらすぐに迎えに行くし、ユーサクと連絡が取れるタブレットを渡しておくから」
「う、うん。がんばる。ちゃんと迎えに来てくれるよね?」
「当たり前だろ。こんなかわいい姫を迎えに来ないわけないだろー」
「コータ。久しぶりに姫って呼んだ―」
ユイは少し笑顔になった。たぶん大丈夫だろう。
「じゃあご飯とかいっぱい用意しないとね」
「そうだな。この前の洞窟で拾ったバックをユイにあげるよ」
「ダンジョンのマジックバック?」
「そうそう!それに魚を焼いていっぱい入れておこう」
「うん!」
「じゃあ海に行くか」
「行くー」
俺はユイをお姫様抱っこし、海に向かった。




