16週目.おせち
年末はもの凄く忙しかった。
最近、金の使い過ぎで貯金残高が少し怖くなったので、年始からの仕事の打ち合わせガンガン入れた。
1月と2月がちょっとハードだが、3人のためだ。
頑張ろう。
今日の食事の準備はもうできていた。
だいぶ前に特大和洋おせちの注文を済ませておいた。
小分けになったものが大量に冷蔵庫に入っている。
「お重はないから、とりあえずさらに並べておくか」
30種類もあるので、大皿は3つになった。
「とりあえず、通知が来るまで仕事でもするか」
俺はパソコンの前に座り、作業を始めた。
▽ ▽ ▽
昼過ぎになった。
「いやー結構仕事に関係ないことしちゃってたなー」
俺は仕事をすると言いながらネットサーフィンをしていた。
タッタラー♪ダン!ダン!タッタラ―♪ダン!ダン!
音楽が部屋に鳴り響いた。
「あれ?ゲーム?」
俺はタブレットを拾い、【スタート】をタップした。
[10秒後プレイ画面に移行します。プレイ時間は1時間。それでは良いバトルを]とディスプレイに表示された。
カウントが進んで0になると、スマホのバトロワゲームのような画面に切り替わった。
「すまん!ユーサク!」
タブレットから聞こえてくるコータの声は少し焦っているようだった。
ディスプレイには、大量のモンスターと戦っている3人の姿が映っていた。
「え?なにこれ」
「すまん。なんかあの洞窟から大量のモンスターが出てきてるのを見つけたんだ。倒してるんだけどどんどん出てきてきりがなくて。ユイのテレパシーも全く効かないし」
「なるほど、じゃあモンスターを一緒に倒せばいいのか」
「うん。ここはユーサクとユイとヤリネに任せたい。俺は洞窟の中に行って、大量に出てくるモンスターの原因を探してくる!」
「わかった」
「頑張る!」
「やってやります!」
俺達の返事を聞いたコータはモンスターを見えない刃で切り刻み、洞窟の中に向かった。
モンスターは倒れると霧のように消えていた。
▽ ▽ ▽
バシュン!
バシュン!
俺はひたすらタップをして弾丸をモンスターに撃ち込む。
「すげえ多いな。ユイとヤリネは大丈夫?」
「うん。大丈夫」
「はい、なんとか」
ユイは余裕そうだが、ヤリネは少し大変そうだ。
バシュン!
バシュン!
最後に撃った弾がモンスターに当たると、ディスプレイに文字が出てきた。
[累計100キルを達成しました。スペシャル技を使用できます]
「え?スペシャル?」
ディスプレイには今までなかったボタンが現れていた。
「とりあえず試してみるか」
俺は新しく現れたボタンをタップした。
すると画面が小刻みに揺れ始めた。
「デスホーミング!」
「え?」
ディスプレイからレッドホーミングの声が聞こえた。
その瞬間、弾丸が放たれた。
弾丸はモンスター達の眉間を縫うように貫通していく。
次々と倒れるモンスター。弾丸の威力は衰えない。
[累計200キルを達成しました。スペシャル技を使用できます]
またディスプレイに文字が現れた。
俺はスペシャル技のボタンをタップした。
すると同じように弾丸が発射され、洞窟の前にいるモンスター達は2つの弾丸に頭を抜かれて次々と倒れていった。
「すごーい」
ユイが目をキラキラさせて俺を見ていた。
「いつまでこの攻撃が続くかわからないけど、終わるまで一旦休憩しよう」
「「はい!」」
俺達は少し距離を取って休憩をした。
▽ ▽ ▽
最終的には400キルしたようで、スペシャルを1つ残した状態で洞窟からモンスターは出て来なくなった。
弾丸3つがモンスターを蹂躙してくれたおかげで、俺達はしっかり休憩をすることができた。
「そろそろ時間だな。コータはまだ帰ってこないのか」
コータを待っていると洞窟が爆発した。
ドボーン!
「「「え?」」」
爆発した洞窟からコータが出てきた。
「ごめん待たせた―」
「おい!大丈夫なのかよ。てか今の爆発はなんだ?」
「いやーあの洞窟だいぶ地下深くまであってさ、地上に戻るために階段上がるのめんどくさくて穴開けたんだよ」
「はぁー。お前は本当に」
「ははは」
忘れていたが、コータはチート級の力を持っていたんだった。
「そろそろ時間に…」
画面が切り替わった。
[ゲームが終了しました。キル数414]と表示された。
「あぶねー。コータ来てから時間切れになってよかった―」
もしかしたら増援が来る可能性がある中でユイとヤリネを2人は出来なかったので、コータが帰ってきてくれて安心した。
俺はいつ呼ばれてもいいようにおせちの準備を始めた。
▽ ▽ ▽
トゥントゥルルン♪トゥントゥルルン♪
タブレットが鳴った。
俺は緑の受話器マークを押してビデオ通話にした。
「ユーサク。さっきはありがとな」
「問題ないよ。モンスターはあれ以降現れなかった?」
「現れてない。洞窟の一番下で一つ目の巨人みたいなモンスターを倒して、部屋にあった宝石がぶっ壊したらモンスターが現れなくなった」
「うーん。ダンジョンとかいうやつじゃね?アニメとかであったじゃん」
「ありえるな。今度ラドニークに聞いてみるわ」
「それがいいかもね。それで洞窟はどうなったの?」
「え?消えたよ。ここさっき洞窟があったところ」
「え?」
コータが居る場所は完全に平野になっていた。
「消滅したのかな?」
「あーそんなかんじなのか。なんか想像できなさすぎてわからんわ」
俺は洞窟が消滅したというのを理解できなかった。
「そういえば!今日はおせちなんだよな?」
「そうだよ。すぐ送れるけど送っていい?」
「ああ頼む」
俺はテーブルにおせちを載せた大皿を乗っけた。
「転送!」
テーブルの上のものが光ってなくなった。
そしてカウントダウンが始まった。
「おー豪華!2人共、飯にするぞー」
「「はーい!」」
ユイとヤリネがコータの元へやってきた。
「ごはんがすごく綺麗」
「クリスマスのご飯と同じくらい豪華ですね」
「これはおせちって言って、新しい年が始まるときに食べるごはんなんだよ」
「「へー」」
2人は俺の説明そっちのけでおせちの見た目に夢中になってた。
「ヤリネは間に合ってよかったな」
「なんとか」
コータがヤリネに何か言っているが理解が出来なかった。
「何が?」
「この日の為に箸を練習しました」
ヤリネはドヤ顔で言ってきた。
「おーすごいね」
「僕だけ使えなかったので、頑張って練習しました」
「ユイはだいぶ前から使えてたよね」
「うん!」
ユイはニコニコしていた。
「じゃあ食べるか」
コータがそういうと、2人はコータの元へ行った。
「いただきます」
「「いただきます!」」
3人はおせちを食べ始めた。
「これはローストビーフでは?」
「うん。たぶんそうかなー。俺も買っただけであんまり見てないけどたぶんそう」
ヤリネはローストビーフにはまっているようだ。
「この白いのおいしー」
「それはかまぼこって言って、魚のお肉で出来てるんだよ」
「そうなの?美味しいよ!」
ユイはかまぼこや伊達巻を食べていた。
「どう?久々のおせちは」
「うん。うまい!いいところの買ったな」
「だいぶ高かったよ」
「あっ!良い忘れてたな。あけおめ」
「あけおめ」
俺がコータに新年のあいさつを済ませると、ディスプレイは暗くなった。
「よーし。1月2月気合入れるか―!」
俺はパソコンへ向かった。