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70.公国軍と騎士団の初陣

 話し合いはすぐに纏まった。上陸を試みる隣大陸の住人は、兵士で武装している。明らかに敵対行為だった。外交で来るなら、事前に連絡が届くのが普通だ。きちんとした港ではなく、砂浜からこっそり上陸しようとする行為に、本音が透けていた。


「聖樹様、現在は足止めしてくださっているのですな?」


 お父様の確認に、ラエルはあっさりと頷く。その仕草に迷いはなかった。


『砂浜を柔らかくして、その先の大地も泥濘ませてあるから……君達が落ちないように気をつけてくれ』


「目印はありますか」


「カーティス兄様、そんなものがあれば敵にバレてしまいますわ」


「すまん」


 思わず口出ししてしまいました。だって、目印なんて言うんですもの。カーティス兄様の後ろで、メイナード兄様も青ざめた。もしかして同じ言葉を口にしようとしたのかしら?


『聖獣を付けるよ。誰が行く?』


「私が行くわ」


「え、ちょ! 僕が行く」


 ラエルの提案に立候補したのは、翼ある狼フィリスと八尾の白狐シリルだった。案内役なのに、随分と積極的ね。お母様達を案内してきたノエルは、のそっと伸びてから寝転がった。


「僕は残るぅ」


「期待してないわ」


 昼寝を宣言する猫に、尾羽が自慢の白オウムがピシャリと言い放った。容赦ないパールは、気合の入っている二匹を見て溜め息を吐いた。


「私は留守番でいいわ。ここを守る聖獣も必要だもの」


 聖樹がここに引っ越したので、必ず誰かが残らなくてはならない。以前みたいに人が到達できない山奥じゃないから、危険度は増した。でもラエル自身がいれば、敵なんて根が排除するわね。火も消せるし。


「では部隊を編成して、聖獣様達と敵を排除してきてちょうだい。これは私の命令よ」


 公国の主としてお母様が命じた。膝をついて一礼するお父様とお兄様達が「承知」と返すのを見ながら……私はそわそわしてしまう。


「グレイスはここに居なさい」


 見透かしたお母様にストップをかけられ、私は肩を落とす。聖獣の背に乗ってたら攻撃も届かないし、戦場を見てみたかった。でもラエルを置いていくのも気が引ける。それにオリファント王国の王太后様と国王陛下も拉致したままだし。


『見たいなら、僕と視覚を共有しようか』


「そんな方法があるの?」


『巫女であるグレイスなら、出来るはずだよ』


 屋敷に戻ったらね、そう約束する。公国が国として成立してから作られた騎士団と軍隊がある。騎士や兵は志願者ばかりで、初の出陣に沸き立った。


「ねえ、ラエル。砂と土をどうやって柔らかくしたの?」


『根を揺らしたんだよ、後は地下水を誘導したりしてね』


 なるほど、下から揺すったのね。納得した私はそれ以上追求しなかったけど、ラエルは曖昧な笑顔を浮かべた。巫女に嘘はつけないから、何か隠してるの? まあいいわ、戦場を見ればわかるもの。この時はそう思ったけど、結果としてラエルの方が一枚上手だった。

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