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106.聖獣と聖樹のあれこれは目から鱗

 エリスの説明によると、ミカと離されたことで卵は成長を止めたみたい。生まれる前から不安定な状況じゃ、まだ殻の中にいたいと思うわよね。そう同意したら、ぽろぽろと彼女は涙を零した。


「わかっていただけて嬉しいわ。この子もきっと安心したら出てくると思うの」


「分かるわよ。生まれる前に世界が不穏だったら、幸せな殻の中に閉じこもるのは普通だもの。早く生まれるといいわね」


 ミカのところへ持ち帰ったら、きっと生まれるわ。だから不安がることはないわね。まだ卵の聖獣を抱き上げて、ラエルから受け取った布で包む。大きさとしては、人間の頭の3倍くらい。結構大きいのよね。


 重さはあまり感じなくて、聖獣は見た目より軽いことを思い出す。ノエルが膝に乗ってても、普通の猫より軽い。特に大型化しても体重に変化がないのは不思議だった。


「ねえ、ラエル。聖獣が軽いのはどうして? 大きくなっても小型の時と重さが同じくらいよね」


『気づいてたの? 元々獣だった時の重さしかないんだ。大型化すると聖霊の力を取り込んで大きくなるけど、聖霊に体重はないからね』


「そういう仕組みだったのね」


 大型化したノエルに足を踏まれても痛くないのは、その所為だったのね。感心する私の横で、ラエルがぼそっと物騒なことを呟いた。


『ノエルは一度お仕置きが必要だね』


「お仕置き?」


『何でもないよ、グレイス』


 誤魔化されてあげるけど、足を踏まれただけだから、同じくらいの罰にして欲しいわ。あの子、図太そうだけど意外と繊細なんだもの。ストレスで毛が抜けたら悲しいじゃない。


 卵を包んだ布をエリスに巻こうとしたら、彼女は遠慮した。というか、理由になるほどと納得する。


「私は体温が低いから、温められる人の方がいいと思うわ」


 ちらっと目を向けた先は、ふわふわしたシリルの尻尾だった。気持ちは分かるわ。あの尻尾の魅力に逆らえる者はいないと思う。続いてフィリスに視線が向き、最後にパールを見つめる。エリスがこてりと首を傾げた。大蛇姿でも可愛いわね。


「なぜミー様の兄君の聖獣は毛皮や羽毛があるの?」


「私は逆だと思うの。どうしてエリスは毛皮のない種族だったのかしら」


『妹のミカエルが亜種だからだね』


 亜種……え? 双子じゃなくて? 疑問を浮かべて振り返ったラエルが、卵の入った袋を優しく撫でた。


『種に双子という概念はなくて、発芽した条件が全く違うんだよ。僕は肥沃な森の大地に落ちたし、ミカエルは氷の上に落ちたと聞いてる。発芽が遅れた関係で、いつの間にか妹になってたし』


 僕も多少は困惑した。そう締め括ったラエルの言葉に、気になる表現がいくつかあったわね。蒔かれた場所で発芽の条件が変わるのは理解できるけど、()()()()()()()()()()()……って、どういう意味?


「聖樹の性別って選べるの?」


 好きな性別を選べるなんて、凄いわ。


『違うよ。本来、僕達は無性が正しい。ミカは分化したんだよ』


 雌雄がない種族が、雌に分化した。昆虫の知識で処理しながら飲み込む過程で、今度は恐ろしい事実に直面する。


「……ラエルは無性なの?」

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