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101.惚気に嫉妬、会食は成功でした

 付き合いの長い人がお客様でよかった。知らない人との会食は気を遣いますからね。運ばれた料理も気取ったコース料理ではなく、大皿中心でした。我がエインズワースの流儀なので、遠慮なくお食べください。


 珍しいと言いながら、回転式テーブルを使い料理を取り分けるパトリシア様は、楽しそうです。フィリップ様はお父様が留守なのを残念がっていました。


「荷を運んでもらうのだけど、大丈夫?」


 心配になって尋ねると、アマンダが笑い飛ばしました。


「もう王子様じゃないんだ。立派な騎士だぞ。なあ、フィリップ殿」


 アマンダが気安そうに話しかけ、フィリップ様はにっこり笑いました。笑顔は昔と同じですね。可愛らしい。いけない、この年頃の男の子に、可愛いは禁句でした。


「ええ、任せてください。じぃに会えるので、楽しみです」


「あらあら、フィリップったら。アイヴァン様とお呼びしなさい」


 パトリシア様が窘めますが、お母様は「じぃでいいわ」と微笑みました。昔からそう呼んでいましたし、お父様も気にしていないので構わないでしょうね。


 ふわふわの溶き卵が入ったスープを飲みながら、隣のラエルの様子を窺う。私は皆様と知り合いですが、彼は違うから。疎外感を覚えていたら……。


『どうしたの? 僕の愛しいグレイス。そんなに見詰めたら、穴が空いてしまうよ』


 くすくす笑う姿や口説き文句からは、平気そうね。ラエルって二人の時は饒舌だけど、他の人がいると大人しくなっちゃうの。人見知りかしら。


「話に加わらないのね、ラエル」


『うん? そうだね、でも聞いているよ。ちょうど聖獣からの声が届いて、少し集中してたから』


 耳を澄ませていたと言われ、何かあったのか心配になる。フィリスとシリルが向こうに行ってるの。お父様達もそうだけど、戦いが終わったからって安全ではないもの。


『危険ではないから安心して。新しい聖獣の二匹目が見つかっただけ』


 整った顔でくすっと笑うラエルは、本当に魅力的だわ。お母様やパトリシア様はもちろん、アマンダも顔を赤くした。


「私の婚約者よ」


「わかってるわ。目の保養くらいさせて」


 お母様が苦笑いしながら肩を竦める。パトリシア様はバツが悪そうに目を逸らし、アマンダは声を立てて笑った。


「仕方ない。それだけの美形が微笑めば、女性なら見惚れるさ。浮気じゃないんだ、嫉妬深いと大変だぞ」


 アマンダに指摘されて、今度は私の頬が赤くなる。だって、心配になるじゃない。魅力的な人ばかりだもの。ラエルが私を選んでくれた理由が、いまだによく分からないから。


『表面の皮で選んだりしないさ。中身も魂の輝きも、そのすべてが好ましいグレイス以外を選ぶことはないよ。それにね、僕のグレイスは姿形も綺麗なんだ』


「「ご馳走様」」


 惚気られたとお母様やパトリシア様が笑い、穏やかな雰囲気で会食は進んだ。フィリップ様の出発は明日の午後、それまでにアマンダが荷馬車に支援物資を積むらしい。私も早起きしてお手伝いしましょう。

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