08.生ける伝説
いつもより少し長めになっているのでご了承ください
俺が助けれてくれた女性の手を取ると、横でカルナが目をキラキラとさせている。俺と一緒でこの女性の魅力に惚れたのだろうか。
助けてくれた彼女はニコッと微笑みながら口を開いた。
「自己紹介が遅れたな。わたしの名前は……」
「レイラ様!!」
女性が自己紹介しているのを遮るようにカルナが口を挟んできた。
俺がきょとんとした表情でカルナを見ていると、信じられないとした目をしながら俺に言ってきた。
「ケーゴ知らないの!? この人は冒険者として数々の難関クエストを討伐していき、女性として初、しかも史上4人しかいなかった5人目のSランク冒険者になったお人よ!」
「さらにさらにその強さを認められてこの世界で1番の大国、インザベラ王国の国王陛下から直々に貴族の位を授与されたの。平民から貴族の位をしかも国王陛下直々になんて異例のことよ!」
「レイラ様はこの世界の生ける伝説なの!」
「あ、私の名前はカルナって言います! そしてこっちがケーゴです」
「私ファンなんです! よかったら握手してください! あ、それからこれG Padていう物なんですけど、これにサインもお願いします!」
スラスラと早口で噛まずによく言えたなと思った。
カルナが目をキラキラさせていたのはそう言うことか。それにしても自分が担当する世界の人間に対してファンって……
レイラさんは1度びっくりとした表情を浮かべたがすぐに微笑んでカルナと握手し、G Padにサインをした。
ここで1つ疑問に思ったことがあったので、子供のようにはしゃぐカルナに尋ねてみた。
「どうしてこんな強い人がいるのに魔王に侵略されているんだ?」
「ケーゴはバカねぇ。王国の貴族になったってことは王様の直々の部下ってことになるの。つまり国の許可が出ない限り魔王討伐に出れないのよ」
「インザベラ王国にとって、国の戦事力を1人で半分以上担っている人を遠くの地に、しかも死ぬかもしれない魔王討伐に行かせるわけにいかないってわけ」
「世界が滅びそうなのに、インザベラ王国の王様は自分の国優先だなんて困ったものよね」
「まぁ、そう言わないでくれ。若くして父である前国王を亡くした上に、長男であると言うことが理由で齢14にして国王になってしまったのだ」
「陛下も陛下で、年功序列があるせいか前国王の側近達には意見が通らなくて困っているのだよ」
14歳で国の主!? 日本では中2だぞ!?
あぁ、なるほど。古株である側近達が自分達の権力欲しさに、前国王の長男に国王の座を与えた訳か……インザベラの現国王は相当に苦労されているのだと理解できた。
レイラさんが続けて口を開く。
「まぁそれは置いといて、カルナから丁寧な説明があったがわたしの名前はレイラ。それから敬語はあまり好きじゃないんだ。歳も近そうだし、気軽に話しかけてくれ。改めてよろしくな」
「じゃあタメ口で話させてもらうな? 俺はカルナの紹介があった通りケーゴだ。こちらこそよろしくなレイラ!」
俺とレイラは改めてガッチリと握手した。
「ところで、ケーゴとカルナはどうしてこんな所にいるんだ? ここは終焉の大地。人は滅多に寄り付かない危険な場所だぞ?」
俺が今までの出来事を口に出そうとすると、慌ててカルナが手で口を塞いできた。そしてコソコソと耳元で呟く。
「この世界の人に、自分は他の世界から来た転生者だってことを伝えると怪しまれるでしょ? だからここはごました方がいいわ! 私に任せて!」
なるほど。確かにそうだな……と思ったがカルナの嘘はめちゃくちゃだった。
「レイラ聞いて? まずケーゴが記憶を無くして行方不明になったの。古くからの友人である私は必死に探したわ。そして、探しに探したらこの終焉の大地で発見したの」
「私はケーゴと合流して、魔物から逃げながら彼の忘れた記憶を思い出させようとしたんだけど、どうしてもこの世界の常識とかが思い出せないみたいなの」
「しかも終焉の大地から出られなくなって……」
なんで俺がそんな記憶喪失でお荷物状態なんだよ。しかもこんな嘘、誰が信じるんだよ……んっ?
レイラの方を見ると涙を浮かべている。そしてガシッと肩を掴まれた。
「大変だったなお前たち! 私がお前たちの行きたいところまで送ってってやる!」
や〜だこの人信じちゃったよ。俺がそんなことを思っていると、カルナが食い気味に話す。
「私たち、フリーデンに行きたいの!」
「おいカルナ! レイラだってやることがあるだろうし、迷惑だって」
「いや、わたしはかまわないぞ? しかもわたしのスキルがあればすぐだ」
「スキル【ゲート】!」
レイラがそう言うと扉のようなものが地面から出てきた。
「ど○でもドアかよ!」
「ど○でもドア……なんだそれは? しかし、どこでも行けるわけではないぞ。自分が行ったことがあり、なおかつある条件を満たして登録をしないと行けるようにならないんだ」
「今回はフリーデンで条件を満たしてるから行けるんだよ」
なるほど、それでもすごいスキルだ。なんて考えているとレイラが扉を開けた。
「さぁ行くぞ! フリーデンへ!」
俺たち3人は扉の中へ歩みを進めるのであった。