07.終焉の大地にて
この話から、初めての異世界編です!!
富士山の2倍は超えるであろう高さの山が連なる山脈。草すらまともに生えていない広大な地。その荒れ果てた地を駆け巡る無数の魔物。
見上げれば夕焼けよりも赤く染まった曇天の空。そこを颯爽と飛ぶ巨大な魔物。
どこを見渡しても魔物、魔物、魔物……
「なんだここはぁぁぁ!!」
「おいカルナ! お前とんでもないところを選んでくれたな!!」
「わ、私は比較的平和なフリーデンを選んだつもりよ!」
「これのどこが平和なんだ! それに空間の管理人が終焉の大地にワープするって言ってたじゃないか!」
「この機械音痴め! 2度と機械を扱うな!」
「うるさいうるさいうるさーい!」
そう大声で口喧嘩していると、視線を感じた。振り向いてみると、1匹の巨大な魔物が遠くの方からこちらを見ているように見えた。
「な、なんかあの魔物、俺たちの方を見てないか?」
「き、気のせいよケーゴさん。そんなわけないじゃない」
気のせいだと思いたかったが、そうもいかなかった。魔物がこちらに向かって走り出したのである。
「に、にげろぉぉぉ!!」
「ちょ、ちょっとケーゴ待ってよぉぉぉ!」
やばいやばいやばい。あの魔物巨体のくせに足が速い。このままじゃ追いつかれる。
「あっ……!」
ズザァァァとカルナが派手にコケた。俺は見捨てるわけもいかず彼女の元へと駆け戻る。
「なにコケてんだ! さっさと肩に捕まれ!」
「待ってケーゴ……足捻って立てない……」
涙目でカルナがそう言ったとき、辺りが影で暗くなった。上を見上げると先程の魔物がよだれを垂らしながらこちらを見ている。
「終わった……」
その瞬間、横から灼熱の炎が巨大な魔物を包んだ。
魔物は丸コゲになり、ドシーンと倒れた。
炎が飛んできた方向を見ると、違う魔物がいる。
手と足には鋭い爪。全身を包む硬そうな鱗。頭から角を生やし口には鋭い牙がある。そして大きい翼……
間違いない。ゲームやアニメでしか見たことがないが、ドラゴンだ。
「た、助けてくたの……か?」
そのドラゴンは俺たちにノソノソと近づいてきた。
俺とカルナは頭を下げ、両手を頭の上で合わせ、声を揃えてこう言った。
「助けてくれてありがとうございます!! この恩は一生忘れません!!」
ドラゴンの方を見上げると様子がおかしい。
よだれをたらしてこちらを見ているのだ。
もし仮に、助けてくれたならこんな風になるはずない。じゃあ考えられるのは1つだ。
このドラゴンは助けるためではなく、俺たちという獲物を横取りするために倒したのだと。一難去ってまた一難とはまさにこのことだ。俺は震える手でカルナに指を差した。
「あ、あの〜ドラゴンさん? 食べるならこいつの方が美味しいと思いますよ?」
「は、はぁ〜!? ふざけんじゃないわよケーゴ!」
「ドラゴンさん、私はこの世界の女神なの。だから食べられたら困るわけ。食べるならこの人にしてちょうだい?」
「なーにが女神だ! ドラゴンさん、こいつのいうことはデタラメです。女神なんて嘘です。こいつの方が美味しいです」
「なんで私が食べられなきゃならないのよ!」
「そもそも、お前がこの場所をG Padで選んだからこうなったんだろーが!」
「ぎゃあぁぁぁおぉぉ!!」
ドラゴンは俺とカルナの言い争いを遮る様に、体の芯が震えるほどの大きな雄叫びをあげた。俺たちの方に鋭い目つきと共に詰め寄ってくる。
俺は今度こそ終わったと思いながら、天を見上げながら命乞いした。
「助けてください許してください。神様なんとかしてください」
「落ち着いてケーゴ。私がその神様よ。その私も今ここにいるんだからどうすることもできないわよ……」
カルナが正論を言ったので少しムカついたがそんな暇はない。
ドラゴンが大きく口を開け、俺たち2人を一気に食べようとした……
────その瞬間、一筋の閃光がドラゴンを横切り、ドラゴンの首がボトリと落ちた。
次も魔物かよ! ……と思ったが違った。
そこにいたのは剣を持つ1人の若い女性だったのである。
その女性は俺たち2人に近づき、手を差し伸べた。
「レッサードラゴンに襲われるとは災難だったな。大丈夫か? 立てるか?」
彼女の強さと優しさと逞しさ、そして何よりその美しさに惚れ惚れとし、俺は目を見開きながら彼女の手を握る。
この出会いが俺たちの……いや、この世界の運命を大きく左右することになるとは、この時誰も予想だにしていなかった。