04.理不尽な女神
言い争いする場面を表現したかったので、会話部分が多めになっています。ご了承下さい。
「──転生するには、1度その生涯を終わらなければならない決まりなの」
「あなたが住んでいた世界の神様と約束した滞在期間は5年間しかなくて、それなのにあなたは死ぬ気配はなかった」
「そこで私思いついたの! 私が直接殺せばいいんじゃないかって!」
「だからあなたに持っていく夕飯に毎回ちょこっとずつ毒を盛っていたの。美味しかったでしょ? 味と匂いでバレないように調合するの大変だったんだから!」
こいつ狂ってやがる……
あんなにモジモジ話していたのに、途中から開き直りやがった。
それに死なないのなら自分から殺せばいい?
あれだ。こいつバカだ。バカで、アホでサイコパスだ。
「ねぇねぇ聞いてる? 美味しかった? ねぇ美味しかったでしょ?」
あんなに俺が恋を抱いていた女性の本性がこんなだったなんて。恋していた自分を殺してやりたい。まぁ殺されたのだが。
「ねぇケーゴ! 聞いてるの! 美味しかったかって!」
「あぁもう、うるさいな! ちょっと黙ってろ!」
「女神に対して、なにその口調!」
「人を1人殺しておいて、女神もクソもあるか!!」
「自分で死んだならまだしも、人に殺されてその上その殺人者に、転生して異世界を救えだ? 無理に決まっているだろ!!」
「ほら、早く女神の権能かなんかで生き返らせてくれ」
「そうしたら100歩譲ってお前を許してやるから」
「女神の権能? なに言ってるの? 転生させる能力はあっても、生き返らせるなんて無理よ?」
「はぁー!?」
「だいたいね、私にそんな力があったら、転生なんて回りくどいことせずに、死んだ歴代の勇者とか英雄を生き返らせるわよ!」
こいつ、アホのくせに正論叩き込みやがった。
もう俺には異世界に転生するって道しかないのか。俺みたいなやつが異世界を救うなんてそんなの無理に決まって……
ん? 待てよ? こいつが最初の方に言っていたことがあったよな?
「なぁ、転生特典でチートスキルが貰えるってお前言ったよな?」
「ええ、そうよ?」※3話参照
チートスキルが貰えるのなら話は別だ。
不安が少しずつ無くなってきた。
もしかしたらこんな俺でも、スキルによっては異世界で無双できるかもしれない。
「おいカルナ! しょうがなく、しょうがなくだぞ? お前を許してやる!」
「チートスキルが貰えるんだろ? どんなのが貰えるんだ?」
「お、やっとやる気になったようね! まずはそうね……あ、大賢者なんてどう?」
「大賢者? どんなスキルなんだ?」
「そうね簡単に説明するなら叡智をつかさどるスキルよ。異世界を渡る上で大賢者に勝るものなし! 超オススメよ!」
「なるほど、大賢者……便利だな! で、スキルをもらうにはどうすればいいんだ?」
「自分の中でそれがほしいと思いながら、スキル大賢者って言ってみて? そしたらこの空間を担当する神からもらえるはずよ」
「わかった、やってみよう」
「スキル大賢者!」
──なにも起こらない。欲しいって気持ちが足りなかったのか?
俺はしっかりと欲しいと思い浮かべたところでもう一度言った。
「スキル大賢者!」
「ビィー! スキルポイントが足りません。」
!?
謎の声がそう告げた。俺はわけが分からず、カルナの方を見た。
血の気が引き、元々白い肌がさらに真っ白に……いや、真っ青になった状態で、彼女は口をアングリとさせながらこちらを見つめるのだった。