12.スライム草原
G Padで記された地図の場所へ行くと、そこには広大な草原が広がっていた。
所々に青色の物体がいる。よくよく見ると、その物体が動いている。
「スライムは進化したら色が変わるけど、基本的には青色よ!」
「じゃああの青色の物体がスライムか!」
見渡すと確かに辺りにウヨウヨといる。
「よしカルナ! とりあえず1匹ずつ倒すぞ」
「任せて! まずは私のパンチをお見舞いするわ!」
「おりゃあああ!」
カルナのパンチはスライムに確かに当たり、スライムの体にめり込んだが、ぽよんっと弾かれた。
「えぇ!? なんでよぉ!?」
「もう1回! とりゃああ! ……ぶふっ!」
カルナがもう1度パンチしようとした瞬間、スライムが物凄い速さでカルナの顔面に飛び、直撃した。
「いったぁぁい! こいつ、女神の私に攻撃しやがったわ!」
「ははっ! 大丈夫か〜!」
俺はスライムにやられているカルナを見て笑っていたが、それどころでは無くなった。
スライムがウヨウヨと集まってきたのだ。どうやら仲間をカルナに殴られてお怒りらしい。
ドスッと1匹のスライムが俺の腹を目掛けて飛んできた。
「ゴホッ! イッテェ〜……」
「あはは! ケーゴだってやられてるじゃない! プ〜クスクス」
俺がカルナにムカつき、言い返そうとした瞬間、大量のスライムが一斉にこちら目掛けて飛んできた。
「グェッ! カ、カルナ! ゴフッ! とりあえずここは一旦引くぞ! ギャフッ!」
「イタッ! そ、そうね! ブッ! ここは一旦退散ね! イテッ!」
俺たちはスライム達にやられながら走り、木の陰に身を潜めた。
「はぁはぁ。おいカルナ! お前が怒らせたせいだぞ!」
「はぁ!? 私が引きつけていたんだからその間にケーゴが倒せばよかったでしょ!?」
「そんな作戦聞いてねぇよ! 先にそれを言っておけよ!」
「そういうケーゴだって、私の大切な玄武の秘宝を犠牲に獲得したスキルまだ使ってないじゃない! 今使わないでいつ使うつもりなのよ!」
「あ……」
俺としたことが、すっかりスキルのことを忘れていた。そうだよ。俺にはスキルがあるじゃないか!
「ところで聞くのを忘れてたけど、なんのスキルにしたの?」
「ふっ、まぁ見てろ。今からスライムに向けてスキル発動するからよ!」
俺は木の陰から出て大量のスライムと対峙した。
「行くぜ! スキル【モノマネ】! スライムアタック!」
そう叫ぶと体が勝手に動き、凄い勢いでスライムに向かって体当たりをした。
しかし、またしてもぽよんっと弾き返された。
そして先程と同様に大量のスライムが飛びかかる。俺は木の陰に一目散に逃げた。息を切らしながらカルナの方を見ると、ゴキブリを見るような目でこっちを見ている。
「あんた、私の大切な大切な玄武の秘宝を犠牲にそのスキルを獲得したの?」
「おう! スキル【モノマネ】だ! 俺にピッタリだろ?」
俺が自慢げに語るとカルナが顔を真っ赤にして怒った。
「スキル一覧で赤文字にしてあったでしょ!? あれは戦闘じゃ全く使えないスキルを赤文字にしていたの!」
「しかもなんでよりによってそのスキル!? ふっざけんじゃないわよ! ちなみにそのスキルは宴会芸とかで使われるスキルなんですけど!!」
「え、まじ?」
「おおまじよ!!」
「スキル【モノマネ】は1度見たものをコピーできるっていう一見すごい能力だけど、その成功確率は30%なの! 3回に1回成功するかしないかのスキルよ!?」
「しかも、さっきあんたがたまたま発動できたスライムアタックは体が変形できるスライムだから強力なだけであって、普通の人がしたらただの体当たりよ!」
「あ〜も〜! どうすんの!? 転生特典でチートになるのを失敗したどころか、ただのモノマネ芸人が完成したんですけど!?」
どうやら俺は、しくじり散らかしたらしい。
俺が深く反省し落ち込んでいると、カルナの大声に反応したか、スライム達がじわじわと近づいてきた。
「ねぇどうすんの!? 私のパンチも通用しないし、ケーゴのスキルはおふざけだし!」
「私たちここでスライムにやられちゃうわよ!?」
確かにやばい状況だ……ん? なにか目の前に表示が出てきた。なんだこれ? モノマネ一覧?
──────モノマネ一覧──────
スライムアタック スライムアタック
スライムアタック スライムアタック
スライムアタック スライムアタック
スライムアタック スライムアタック
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ファイアブレス スライムアタック
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大量のスライムアタックの中にファイアブレスというものがある。疑問に思ったが、そんな暇はない。俺はスライム達に向かって叫んだ。
「スキル【モノマネ】! ファイアブレス!」
その瞬間、体から熱いものが込み上げ、口から炎が出た。その炎の勢いは凄まじく、スライムはおろか広大な草原をも燃やし尽くし、一瞬で焼け野原になった。
俺とカルナは目を合わせ、唖然とするだけなのであった。




