10.管理長ガルバス
あれから数分経ち、冒険者達がざわつき始めた。
「レイラさんの知り合いだと?」 「何者なんだあの2人は」「一見弱そうに見えるな」 「女の方は中々に美人だな」 「後で声かけてみよう」 「連れがいるだろ?」「ありゃねぇだろ、男に魅力を感じない」 「レイラさんと知り合うなんて超ラッキーな奴らだな」
一部俺の悪口が聞こえたが無視しておこう。喧嘩になったら負ける気しかしない。
そんな中、奥の扉がバーンと開いた。そこには髭が生やした大柄な男がいた。男はキョロキョロと周りを見渡し、俺と目が合った。そしてズカズカとこちらの方に詰め寄り、肩を掴み息を切らしながら言う。
「レ! レイラはどこだ!!」
「レイラが来たんであろう!? なぁ!?」
「レイラはどこにいる!!」
俺の肩をユサユサと……いや、グラグラと激しく揺らす。俺がその激しさと威圧にたじたじになっていると、こっちにコリーが走って向かってくるのが見えた。
「管理長! 人の話は最後まで聞いてください! レイラさんはここにはいません!」
「む?そうなのであるか?」
「レイラさんからの紹介状を持った人が来てますって言おうとしたんです! それなのに、自分がレイラさんの名前を口にした瞬間飛び出して行くなんて!」
「レイラは大切なわしの娘であるぞ! 会いに行くのは当然のことであろう!」
「そう管理長が勝手にいってるだけでしょう? 血も何も繋がってないじゃないですか!」
「関係ないのである! わしが娘のように思っとったら娘みたいなものであろう!」
「管理長がそんなんだから、レイラさんが嫌がって中々ここに来ないんですよ!」
なるほどレイラさんが言いかけたのはこのことだったのか。ここに来るのを渋る訳だ。※9話参照
コリーがハッとして、俺とカルナに会釈をして話し始めた。
「お騒がせして申し訳ありませんでした。この方がここの最高責任者の……」
「わしが管理長のガルバスである! 好きに呼んでくれて構わないぞ!」
「管理長、ここでは話し込むのはなんですので、管理長室に行きましょう」
「うむ! その通りであるな! よし、2人ともわしについてくるのである!」
「あ、ケーゴさんカルナさんこちらへ」
そうして、奥の部屋へと案内してもらっている間、コソッとカルナに聞いてみた。
「なぁカルナ、ほんとにガルバスってすごい人なのか? 体が大きい以外、ただの陽気なおっさんな感じがするんだが」
「もちろん超強いし、ああ見えて頭がすごくキレて戦略家の一面もあるのよ!」
「レイラのことを溺愛してるって言うのは初めて知ったけど……」
そう話している間に部屋に着いた。
壁には本棚にびっしりと分厚い本が入っており、部屋の中央には高そうなソファーとテーブル。そして奥には社長が座るような椅子と机。その机の上には書類が積み重なっている。
「ここの部屋で話し込むことができるのである! さぁここに至るまでの経緯をわしに話してみるのである!」
「実は……」
俺とカルナはガルバスにここまでの経緯を話し始めた。まぁほとんどレイラにも話したカルナのでっち上げた嘘の経緯だが……
「ほう、それはそれは大変だったのであるな……そしてレイラに助けられ、わしを頼るように言った訳なのであるな?」
俺とカルナは首を頷く。
すると、ガルバスは大きな拳で胸をドンッと叩いた。
「うむ! レイラの頼みなら喜んで承るのである!」
「まずはそうであるな……お前たち冒険者カードは持っておるのか?」
「冒険者カード?」
「その様子だと持っていないのであるな。冒険者カードは身分証みたいな物で、持っておくと何かと役立つのである」
「簡単な試験クエストを達成するだけで発行されるから、冒険者じゃなくても身分証代わりに持っている人も多いのである」
なるほど。身分証は確かに必要だな。簡単な試験クエストって言ってたし、試験を受けるに越したことはないか。
「なぁガルバス。その試験クエストってすぐに受けれるものなのか?」
「本来は予約制なのであるが……レイラの知り合いということで特別に受けても良いのである!」
「か、管理長! また勝手にそんなことして!」
「別に仕事が増えるのはわしだけであろう? それならば良いではないか」
「そ、それはそうですけど……」
「うむ! それじゃあ、ケーゴとカルナはコリーに試験クエストの内容を聞くのである! また何か困ったことがあれば遠慮なくわしを頼るのである!」
俺とカルナはガルバスにお礼を言い。コリーと一緒に、先程の受付の場所に戻って試験クエストの内容を聞くのであった。




