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流れ星と未完のレクイエム  作者: 千秋蛍維都
8/8

Epilogue

 ラジオをつけると、ゲストが帰るところだった。「また遊びに来てくださいね」「こちらこそお願いします」と男女のにぎやかな声がする。短いCMを挟んでコーナーが変わり、馴染みのパーソナリティが話し始める。

 老人は、いつものように木箱から道具を取り出して、流れ星の修理に掛かった。

「X月X日金曜日。まずはお聴きください。この番組が、初オンエアになります。先日亡くなった、ティム・ベネディクトさんの最後の遺作で、『未完のレクイエム』」

 雄大で、重厚なチェロの音が電波に乗って届いた。老人は、ラジオの前に座り直して音量を上げる。明るい曲調なのに、大切な思い出とともに誰かをぎゅっと抱きしめたくなるようなメロディだった。

「ね、いい曲でしょ?」

「そうだな」

 そばで一緒に聴いていたジョージに応える。

「そういえば、レクイエムは音源化を断ったんじゃなかったか?」

「ああ。それなんだけど、家族で世話を焼きにくる元同僚がいるって言ったでしょ?あの人たちに、自分が死んだら曲をレコード会社に持っていくように手紙を残してたんだよ。ほら、あの作曲を辞めていた期間に」

 しばらくすると曲のボリュームが絞られ、パーソナリティによって、レクイエムはティムが妻のために、生涯をかけて作曲したものであることが紹介される。曲自体は長すぎて、結局最後まで放送されることはなかったが、これはまた、今この瞬間にも、急速に世界中の話題をかっさらっている予感がする。

「ニーナにも届くといいな」

 そう言ったジョージの声は、弾んでいた。

「きっとどこかで聴いてるさ」

 見上げれば、今日も果てしなく広がる宇宙の海を、数多の星達が瞬き、駆けていく。一つひとつの星に、それぞれの人生がある。それを思うと、見た目にはただの石ころだったものが、途端に愛しくなる。

 修理しなければいけない流れ星は山ほどあって、まだまだ手を休める訳にはいかない。どんな願いが込められているのかは知らないけれど、その想いの先に、温かい未来が待っていてほしいと思った。


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