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裸の騎士様  作者: 叶 葉
8/22

服がない!8




レオンはその日、城でシャルロット姫と隣国の王子の茶会の警護をしていた。

ああ、疲れたな。最近連日ハードな毎日でレオンはくたくただった。

王城も婚姻前でピリピリした空気だし、アゴの王子はお目付役の目がないのを利用して連日城下町に出没しているそうだ。それに伴う騎士の穴埋めとしてレオンも城に詰める日々だったのだ。

———そういえば、最近リサに会ってないな。

レオンは忙しく動きながらも、偶に兵舎で見かけるリサの姿に癒されていたのだ。

ふと浮かべてしまった笑みをシャルロット姫に指摘される。

「レオン、思い出し笑いなんて珍しいですね」

優雅に談笑していた姫と王子がレオンを見る。

「あ、いえ。申し訳ございませんでした」

深く詫びると姫は扇子を口元に当てる。

「咎めた訳ではないのよ。貴方いつも無表情でしょう?珍しくって。ね?王子もそう思いませんか?」

「知り合って間もないですが、姫の仰る通りですね。僕は初めて見ました」

優しげな表情でシャルロット姫に同意する王子。とても似合いの二人であった。

——姫に懸想するなどと、身の程知らずだった。

レオンは恥ずかしくなった。

「レオン、思い出し笑いの相手は女性ではなくて?」

微笑を浮かべる姫。

「姫の仰る通りです。しかし、姫のお心に留め置く事も無い事です」

「相変わらず、お堅いわね」

「人の秘めたる想いを暴こうとは、いけない姫様ですね」

王子は優しいながらも姫を窘めた。

「そうね。でも何かわたくしが力になれる事があるならいつでも言ってちょうだい」

「姫様、三年前の事を仰っているのなら、私は職を全うしただけですし、姫様には返せぬほどのご恩がありますので……」

レオンが固辞しようとするが、姫に手で制される。

「世間知らずな私が城を出て、野盗から身を守ってくれた事を言っている訳ではないのよ。私は本心から仕えてくれる貴方にしてあげたいだけなのよ」

シャルロット姫の言葉に一瞬胸が詰まるが、寄り添うように座る姫と王子を見て、

「お言葉、有難く……」

とだけ返して後は静かに姫と王子の睦ましい様子を見守った。










その日兵舎に帰ると慌ただしく近付いてくる人がいた。


「レオン様!レオン様!」


知らないメイドだった。酷く慌てたその様子に胸騒ぎがした。


「急にお声掛けして申し訳ございません!」

「どうしたのだ?」

レオンはメイドを落ち着かせるようにメイドの背に手を当てた。

「す、すいませっ。リサを、リサを知りませんか?」

ぜいぜいと肩で息をしながらメイドは声を絞り出す。

———リサ?

「リサがどうした?」

「今日、リサは休暇だったんですっ。城下町に一人で行くと言って朝出て行ったっきり戻って来ないんです!」

もう夜も遅い。

兵舎は申請があれば外泊も出来るが、夕方になると、正門が閉められる。職務がある騎士などは裏門からの出入りが出来る。しかし、外泊届けを出さないメイドは門限があった。そのメイドの門限からもかなり過ぎていた。

「一人で城下町に行ったのか?!」

レオンが問うと、メイドは頷いた。

「はい。勿論外泊届けも出していません。何かあったんじゃないかと、私、私……!」

かなり動転しているメイドを落ち着かせて、部屋に戻るように伝える。

レオンはすぐ様、トワイスの元へ向かった。












トワイスの協力の元、城下町でのリサの捜索が行われた。

当たり前だが、日の落ちた城下町では人が疎らだ。

酒屋などの密集している裏路地近辺を明け方まで探した。

しかし、成果は上がらず、焦燥ばかりが募った。

翌日、騒ぎを聞きつけた同期の幾人かが日勤の交代を申し出てくれた。

その日休暇のトワイスと共にリサの捜索を再開した。

色々聞き込みをする内に頭を抱えたくなるような話がチラホラ聞こえてきた。


「昨日もあったみたいだな、集団全裸事件」

「そのようだな。しかも、王子に連れて行かれた少女がいたらしい。間違いなくリサだと思う」

「これはちょっと俺らじゃ手に負えないだろ。どうする?レオン」

「どうすると言ったって……。くそっ!あのアゴめっ!」

「おいおい、不敬だぞ」

レオンは後悔していた。

リサにきちんと釘を刺さなかった事を。

流石のレオンも王子の居る宮に勝手に乗り込む権限は勿論無い。

気ばかりが焦り、己の掌をぎゅっと握りしめていると、不意に声を掛けられた。

「レオン?貴方、どうしたの?」

そこには馬車の窓から覗くシャルロット姫と隣国の王子が居た。

「シャ、シャルロット姫……」

「姫、何か事情がありそうです。湖への散策は次回にして今日は宮殿に戻りませんか?」

王子が心配げに声を掛けると、シャルロット姫は頷いた。

「ええ。王子、ありがとうございます。レオン、わたくしたちは先に戻ります。貴方も直ぐに城のわたくしの応接間にいらっしゃい」

レオンとトワイスは深く頭を下げた。

「シャルロット姫、王子。ありがとうございます」

レオンは急いで馬車を追った。



———リサよ、無事で居てくれ!!








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