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裸の騎士様  作者: 叶 葉
3/22

服がない!3



小さなノックが聞こえた。


レオンが急いで扉を開けると、そこには全裸事件の首謀者と思われる少女が居た。

「どうぞ」

レオンは少女を招き入れる。

少女はビクビクと震えて怯えていた。兎のようだな、とレオンは思った。

「あのおー、怒って、ます、よね?」

少女は恐る恐るレオンに尋ねた。

「どうしてそう思う?」

「服、消し飛ばしちゃったから」

レオンは少しこの状況が楽しくなってきた。

「あれは、服はどこにいったんだ?」

意地悪く問い質すと少女は眉をきゅうっと下げた。

「分かんないんですよお。本当です。いいなあ、かっこいいなあ、って私が思ったら服が消えちゃうんです」

「かっこいい?俺が?」

レオンはドキドキしながら聞いた。

「あっ!でも最初の一回だけなんです!だから、レオン様はもう大丈夫!」

少女は胸を張って、何故か得意げに言う。

「そうか。それは良かった。会う度に服が無くなったら、本当に君の言った通り捕まってしまうからな」

レオンが小さく笑って言うと少女は肩を下げた。

「怒ってないんですか?」

「怒ってはいるかな。君、俺のことを避けていただろう?」

「だって、すっごく怒ると思ったから」

「名前は?」

「え?」

「君の名前だ」

「リサです。リサ・メイヤー」

そうか、とレオンが頷くとリサはホッと肩の力を抜いた。

「リサ、あれはなんなんだ?」

レオンは問う。

「多分なんですけど、魔法?多分、魔法です。小さな頃から私がいいなって思った男の人の服が光になっちゃうんです。うちの家族も知ってて、修道院に入れられそうになっちゃったから従姉妹を頼ってここに働きに出てきたんです」

魔法使いなら城にも確か数人居たが、そんなくだらない魔法があったのかとレオンは思った。

「光になるのか。しかも魔法?ふん。それで修道院か。妥当なところじゃないか。でも、嫌だったんだな?」

「はい!こんなハレンチな魔法が使えますけど、夢はお嫁さんなんです」

ポッと頬を染めてリサが言う。大変愛らしい仕草にレオンは微笑ましい気持ちになった。

「そうか、お嫁さんか。良い夢だな。叶うといいな」

「はいっ!」

リサは元気一杯に頷いた。

「相手はいるのか?お嫁さんにしてくれそうな相手は」

レオンが問うとリサは一転暗い表情を浮かべる。

「それがですね。問題があるんですよう」

リサが話しだそうとする前に、レオンは遮り、室内に置かれた小さな椅子を勧める。女性を長々と立ち話させてしまったと思いながら自分はベッドに腰掛けた。

「続きを」

レオンに促され、リサは話し出した。

「私って、こんな魔法が使えるくらいじゃないですか。人をそんな事で判断するなんてと自分でも思うんですけどお。面食いなんですよねー」

リサはがっくりと肩を落とす。

「面食い?……それは厳しいな」

そこで件のアゴ王子である。

王子によって王城と隣接する本隊の騎士団からは見目の麗しい者は尽く地方に飛ばされてしまっている。

リサが面の良い男がタイプなのだとしたらかなり厳しい闘いになるだろう、とレオンは思った。

「普段なら、レオン様は裸の魔法の餌食にはならなかったと思うんです」

「えっ?」

「確かにレオン様ってかっこいいんですけど、ちょっとタイプじゃないっていうかあ。レオン様って綺麗系じゃないですか。私はちょっと男臭い感じの野生的なかっこいい人がタイプなんです。でも、この兵舎にいる騎士様って野生的っていうよりも野生そのものって感じで。だから多分飢えてたんです。ごめんなさい」

なんだろう、振られた気分だ。とレオンは思いながら、ムッとした。

「そうか、俺はタイプじゃないのか」

そう言いながら、レオンはリサの膝に揃えられた手の甲をツツーッと撫で上げた。

「きゃっ!」

リサは驚きに顔を真っ赤にする。

———可愛いじゃないか。

「タイプじゃないなら平気だろう?」

意地悪くレオンが聞く。リサはレオンの追撃から逃れるように両手で頬を覆う。

「タイプじゃなくても!卑怯ですよお。私ってこうゆう事免疫ないんですから!」

キッと見上げてくる大きな瞳が矢張り愛らしい。

レオンは笑ってリサに謝罪をした。

「すまなかった。タイプではないと言われたから少し意地悪してしまったんだ。リサ、良かったら友にならないか?こんなに楽しい女性と一度きりは惜しい」

リサは警戒の目を向けたが、レオンに裏がない事を悟ったのか、ニッコリ笑顔で頷いた。








友になってから数日後。

「リサ」

「レオン様」

兵舎の廊下を掃除するリサに出会ったレオンは迷わず声を掛けた。

「掃除か?いつもありがとう」

「お仕事ですからねっ」

何故かリサは得意げに胸を張る。レオンはそれが微笑ましい。

「お嫁さんにしてくれそうな相手は見つかったか?」

少し意地悪に聞いてしまう。リサは途端に肩を落とす。

「いませんよう。だから、城下町に行ってみようかなあと思ってるんです。明日お休みだから」

レオンはピンときた。

「明日は俺も非番だ。一緒に行くか?」

レオンが聞くと、リサは首を振る。

「えっ?嫌ですよう。レオン様がいると出会いがなくなりそう」

「城下町とはいえ、女の一人歩きは危ないぞ。出会いの前に攫われたら元も子もないだろう?」

「そうかなあ、でもお、父兄同伴で男漁りって聞いた事ないですよう」

レオンは吹き出した。

「父兄同伴って」

「えー、違います?保護者同伴?」

「リサ」

レオンは嗜めるように言うと、リサは頷いた。

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