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裸の騎士様  作者: 叶 葉
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共に戦う騎士達が声を上げる。

「カイゼル様!ここはお任せ下さい!我が国を、王城をお願いします!!」

決死の呼び掛けだった。

数僅かな疲れ果てた騎士達にとっては茨の道である。

それでも望みを託したのだ。

カイゼルは僅かばかりの迷いも見せず、王城へ馬首を駆る。

「シモン!レオン!二十騎連れてついて参れ!!」

レオンとシモンはその場に居た近くの騎士二十騎と共にカイゼルに続く。

敵味方構わずという矢の雨を薙ぎ払い、襲い掛かる兵士を切り捨て、血塗れになりながら進む。


そして分かれ道。

真っ直ぐ進めば王城は目と鼻の先だ。

しかし———。


「レオン!何を迷っているのだ!五騎だけ貸してくれる!存分に振るってこい!負けは許さぬぞ!!」


カイゼルは、自らも死地のような王城に行かねばならぬというのに、振り返りもしない。

レオンに貴重な戦力を分け与え、自らの矜持を守れと背を押したのだ。


レオンは、グッと奥歯を噛み締め、馬首を兵舎へと向けた。


「死をも恐れぬ不届き者だけ付いて来い!」


レオンの掛け声に迷わず五騎の屈強な騎士が後を付いて来る。

焦る気持ちを堪えながら、レオンは懸命に兵舎へと急いだ。











兵舎までの道程は幾度も危ない場面の連続であった。

勇敢なる騎士達はたったの六騎で兵舎までの道を駆け抜けた。


いつもは固く閉ざされている巨大な兵舎の正門が開け放たれている。

街中よりも酷い惨状に、滑り込むように駆け抜けた。

中に残る兵士達の抵抗あってか、完全に制圧はされていないが、酷い有り様だった。

襲い来る敵を薙ぎ倒し、進むレオン達に、矢が大量に降り注ぐ。

最早、嬲り殺しに近いような猛攻に、レオン達も足を止める他ない。

降る矢を払いながら、向かってくる敵を打つ。

暫く小競り合いが続く中、矢の雨が止み、声が響く。

「忠実なる王国の騎士達よ!!抵抗を止めろっ!」

声のする方を見て、レオン他騎士達は絶句した。

兵舎入り口の石畳みに並べられた人々。

肉壁である。

人質として繋がれた兵舎で働く使用人やメイド達が縄で繋がれ並べられている。

その中にリサがいる。

皆が攻撃を止めざる得ない。

攻撃を続けること、即ち人質の命を刈り取る事を意味している。

リサ達肉壁の向こうから、意地の悪そうな嫌な笑みを浮かべた男がレオン達を嘲笑っている。

「そう……。大人しくしていろ」

レオンは唇を噛みしめる。

ここまでの戦いで付いた傷とは別に、レオンの唇がプツリと切れて血が流れた。

「卑怯な」

レオンが吐き捨てる。

その顔は怒りで真っ赤に染まり、ガチガチと歯を鳴らす程の憤怒を表していた。

「構え」

いやらしい笑みを浮かべながら、男が右手を挙げた。

その左手が振り下ろされた瞬間に無抵抗なレオン達騎士が矢の雨に打たれる事は確実であった。

誰の目にも明らかな敗北の色が辺りを染め上げた時、リサが叫んだ。



「レオン様っ!!!」




男が正に右手を振り下ろそうとした時に、辺り一面を光が覆った。


光がきらきらと敵の兵士どもを染める。



「リサ!」


レオンが叫ぶと同時に悲鳴が上がる。


裸魔法だ!


しかし、いつもと違う。

敵の兵士は老いも若いも関係無く、美醜すら関係無い。

ただ、敵兵だけが光に包まれ、その光が大きく弾け飛んだ瞬間に、現れたのは丸腰の敵兵だった。

「何が?!」

いやらしく笑っていた男は武器すら持たない全裸の自分を見下ろし、驚きの声を上げる。

リサの裸魔法の筈なのに、美しく無く、醜く笑う男ですら丸裸だ。


———趣旨替えしたか?


一瞬間抜けな事をレオンは考え、止めた。


「敵を捕らえろ!」


正に素っ裸の武器も持たない男達を制圧するのは赤子の手を捻るより容易い。

何より、急に武器すら無く素っ裸になってしまって動揺しない人間がいるだろうか。

難無く捩伏せ、縛り上げる。


捕まっていた兵舎で働く者達を解放すると、レオンはすぐさまリサを抱き締めた。


「酷い事はされなかったか?」

リサの顔を確かめるようにレオンは撫でた。

そのリサの髪を梳き、つむじに顔を埋めた。

リサは安堵からか、大声を上げて泣き始めた。

「大丈夫、大丈夫だから」

抱き締めたまま、レオンはあやすようにリサの背を撫でさすった。


———リサを一人にしたくない。しかし、行かなければ。


苦渋の表情を浮かべながら、レオンはまだ嗚咽を漏らすリサをガーネットに預け、王城へと駆け出した。












王国歴、七百五十二年———。


王国を襲った悲劇は、王国側の勝利で幕を閉じた。


その悲劇を救ったのは、騎士トワイス、シリウスに請われて駆け付けた辺境伯軍と、王国の次期女王となるシャルロット姫の婚約者である隣国の王子が派遣した隣国の正規軍だった。

しかし、王国の正しい騎士達や、カイゼル王子が両軍が到着するまで持ち堪え無ければ成されなかった偉業である。

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