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裸の騎士様  作者: 叶 葉
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「あの、それ王子様からレオン様に渡すように言われたんです」

「カイゼル王子とはどうやって会ったんだ?というか、ここまで王子が来たのか?」

「裏門前を掃除していたら急に声を掛けられたんですよう。しかも、好き放題言ってあっという間に帰っていったんです」

「隠密の魔法でも魔術師に掛けてもらったかな?まあ、いい。取り敢えず中を確かめる」

レオンはペーパーナイフで封を切ると、ザッと中身に目を通した。

「リサ、すまないが、すぐに城に行かねばなくなった」

リサは頷いた。

「あの、レオン様。また会えますよね?」

「少し周りが騒がしいが、これが過ぎたらまた会いに行く。リサ、これを」

レオンは自分の首にかけていたシルバーのネックレスを外し、リサにつけた。

「レオン様、これは?」

「祖母から貰ったものだ。大事な人が出来たら渡しなさいと言われた」

シルバーネックレスの先にはブルーの小さな石がついていた。

「レオン様!そんなもの受け取れませんよう」

「大事な人とは言われたが、恋人や妻に渡すようにとは言われなかったぞ?妹にあげてもおかしくないだろう?」

「ほんとの妹でもないのにいただけませんし、お婆さんの意図を勝手に変えちゃだめですよう」

「いいんだ、リサ。それ以上言うな。俺が君に身につけていて欲しいだけだ。それに、そんなに高いものじゃない。本当の家宝は兄のものだからな」

リサに強引に押し付けると、レオンは準備を終える。

「行ってくる」

レオンが言うと、リサは眉尻をキュウと下げてから、一転、笑顔を作った。

「行ってらっしゃい」

レオンは胸の中に暖かなものを感じる。

その感情は、かつてレオンは経験したことのないものだった。

燃え盛るようなものではない。

じんわりと染み込むような暖かな感情だ。

それは、リサそのもののような優しい灯火のようだった。

この感情はなんだろう、レオンは思案しながら扉を開けて部屋を出た。

駆け足気味に急ぎ王城へと向かう。

結論を出すのは酷く簡単なことだが、今はしたくはないとレオンは思った。

感情の機微をこんなに大事にしたいと思ったことは無かった。

リサに関わる総てを大切にしたいのだ。

それは己の感情一つにしても例外ではない。

そんな繊細な気持ちが自分にあったのかと驚くと共に、可笑しくなった。

レオンは微笑を浮かべながら、城へと急いだ。










「お兄様から手紙が来たそうですね」

姫はレオンが姫の執務室に入るなり、前置きも無くレオンに問うた。

「はい。流石に城に忍び込むのは難しかったようで、私宛てにリサに託したようです。シャルロット姫様、これを」

レオンは姫にカイゼル王子からの手紙を差し出すと、共にいた宰相のジャンロードが銀盆に乗せてから姫に差し出した。

姫は受け取り、内容を確認すると、レオンを見た。

「レオン、面倒を掛けますね。どうやら今回は以前お兄様が退けた反対派の高位貴族と、他国が手を組み仕組んだもののようよ。内外的にもお兄様は放蕩者で通ってますから、追放されたお兄様に目を付けてすり寄ってきたらしいわね。想像通り過ぎて拍子抜けだけれど、裏を取る必要があるのよ。レオン、行ってくれるかしら?」

レオンは胸に手を当て、

「お心のままに」

と、礼をした。

「カイゼル王子にお考えがある様子。しかし、王子のいる屋敷には、王子の腹心数名しか居らず、警護の手が足りないだろう。レオン、シリウスとトワイスと共に王子の元へ行ってくれ」

ジャンロードの説明にレオンは頷き、兵舎で事の次第をトワイスとシリウスに伝えた。

そして各々支度をし、兵舎を出たのは夜中過ぎだった。

夜闇を切り裂くように、三人は馬を駆けた。

僅かばかりの休憩以外は、中継地点の街で馬を二度変えた時以外休まずに進んだ。

かなりの強行軍で通常よりも早い到着となったが、それでも四日移動に掛かった。

王子の屋敷に着いたのは、四日目の矢張り深夜であった。

門前に着いた三人は、それぞれ馬から屋敷の様子を伺った。

本来であるならば、こんな時間の訪問はあり得ない。

しかし、屋敷全体が三人の訪れを待ち構えているような気配を醸し出していた。

門が、金属質な音を立てて開いた。

三人は目配せをし、馬首を操り入場した。

レオンはひらりと馬から降りた。

控えていた厩番の男に手綱を渡した。

「カイゼル様がお待ちです。どうぞ、こちらへ」

カイゼル王子の側近の男(シモンと名乗った。)に促され、屋敷の応接間に通された。

幾ばくも待たない内に、寝巻きにガウンを纏ったカイゼルが現れた。

頭にかぶったナイトキャップから顔の輪郭が出っ張った顎まで流れた形が、三日月のようだとレオンは思った。

カイゼルは眠そうな様子を隠しもせず、ソファにどさりと腰を下ろす。

立ったままの姿勢で黙礼を続けるレオン達に、カイゼル王子は右手を挙げ、座るように無言で促した。

「お前たち。長旅ご苦労であった。道中碌な休息も取らずに駆けつけてくれた事、嬉しく思う。明朝、と言っても夜中過ぎだから、もう今日の朝であるが———、慌ただしくなる。今日はゆっくり身体を休めろ。明日、またここで詳しく話そう。———シモン、彼らを客間に案内しろ」

カイゼル王子は欠伸を噛み殺しながらレオン達に伝えると、早々に退出していった。

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― 新着の感想 ―
[一言] レオンとリサの心の交流。風雲告げる内外の状況、しっかり、伝わってきました。 無理がない程度に続けて下さい。
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