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レオンが隠された王子の秘密に驚愕の表情を浮かべている、その頃———。
リサは兵舎で魅惑の裸祭りを巻き起こしていたのだった。
リサはカイゼル王子との一件の後、シャルロット姫の主導で兵舎で働く騎士や、従卒、使用人たちに裸魔法を打ち明けた。
人望厚いシャルロット姫の鶴の一声が効いたのか、大きな騒動にはならなかった。
リサは暫くは男性(主に騎士)からは敬遠されていたが、レオンが兵舎を留守がちになるのを見計らったように、兵舎内で奇妙な遊びが流行りだした。
度胸試しならぬ、美貌試しである。
最初は下位貴族に縁を持つ騎士や従卒の間でリサの前で判定を待つと言うような感じであった。
上位貴族や、団長クラスはくだらない遊びだと一蹴していた。
しかし、風向きが変わったのはあるメイドの一言であった。
「きっと高貴な方々は身体も高貴な筈だから、お綺麗過ぎて自信がないのよ」
勿論あるメイドとは我らがガーネットお姉様である。
これを聞いては血の気の多い騎士連中は黙っていられない。
中庭を掃除中のリサの前に二十人以上の腕にも美貌にも自信のある騎士団精鋭たちが立ちはだかった。
その軍団の周りを待ってましたとばかりに詰め掛けたメイドら、兵舎の女達である。
リサは顔から血の気の引く思いで、騎士らを見ると、あっという間に二十人を超える裸体の騎士団の出来上がりである。
兵舎内は一瞬で、異様な熱気に包まれた。
ガーネットは後に語る。
唯、良い男がいれば、裸にしたくなるのだ、と。
そう、そこに山があるから登るのだ。
トワイスは兵舎二階から、その地獄絵図を眺めて思った。
今日もここは平和だ、と。
リサは早くレオンに会いたくなった。
この兵舎の良心はレオンだけなのだから。
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リサはがっかりしていた。
それは何に対してか。勿論レオンに対してだ。
レオンはリサを放っておけないとばかりに構い倒して、ある時から急に離れていった。
リサはお預けを食らった犬の気分だった。
リサだってレオンが常に忙しく騎士団の仕事をしているのは勿論理解している。
しかし、レオンがリサを探して会おうとしてくれなければおいそれとは会えない。
それ程、騎士とメイドには格差があるのだ。
リサが吐く気も無い溜め息を吐きながら、裏門近くの落ち葉を掃いていると、声を掛けられた。
「娘。久しぶりだな」
リサが思わず大声で叫びそうになると、口を抑えられる。
そこには目深にフードを被ったカイゼル王子が居た。
「こんな所で何やってるんですかあ?!」
「ちょっと遊びに来たのだ。相変わらず頓珍漢な娘だな」
リサはカイゼル王子にだけは言われたく無いと思った。
王城から追放され、僻地に飛ばされ、しかもその原因となったメイドに会いに来るとは。そちらの方が余程頓珍漢では無いかとリサは思った。
「娘、少し頼まれ事をしてはくれないか?私のように素晴らしい人間はどこに行っても注目の的でな。これを娘の知り合いのレオンとかいう騎士に渡して欲しいのだ」
カイゼルは辺りを伺ってから、懐から一通の手紙を取り出した。
「こ、困りますよう!私だってレオン様には最近会えてないんですから」
「なんだ、捨てられたのか?」
カイゼル王子のあんまりな言い分にリサはカチンとくる。
本当にこのアゴはリサをおちょくるのが得意だ。
「犬猫じゃないんですから!そういうのじゃないんですよう。最近レオン様は忙しいみたいで夜警の仕事がメインみたいなんですよ!だから昼間は休んでられるみたいでお会い出来ないんですよう」
「昼間は兵舎にいるのだろう?矢張り娘、捨てられたんじゃないのか?」
ははあー、としたり顔で見下してくるカイゼル王子。
リサはその顎を物理的に捻り切りたい気持ちを我慢してワナワナと震えた。
「まあ、悪戯はこれくらいにしてやるか。普通に部屋を訪ねて渡してくれれば良い」
カイゼル王子が事も無げに言う。
リサはキュッと下唇を噛んで下を向く。
「簡単に言わないでくださいよう。一介のメイドなんかが簡単に会いに行っていい方じゃないんですよ?」
カイゼル王子はぽかんとした後に大笑いした。
「娘、お前は妙な所を気にするのだな。一国の王子に説教垂れる割りに、恋には臆病だと申すのか」
「恋って……。誰が、誰にですか?」
リサが訝しんでカイゼル王子を見上げると、カイゼル王子はまたもやぽかんとする。
「気付いてないのか。まだまだ子供なのだな。まあ、良い。必ず渡すのだぞ、娘!」
カイゼル王子はそう言ってリサに手紙を押し付けて去って行ってしまった。
一体この警備の厳しい兵舎の敷地内にカイゼル王子はどうやって侵入して来たのかリサには見当も付かなかった。
それ以上に、どうやってこの手紙をレオンに渡せばいいのかも分からなかった。
レオンが近付いてくれなければ、リサにはレオンに会う権利が無い。リサはそう考えていたからだ。
リサは途方に暮れるしか無かった。




