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裸の騎士様  作者: 叶 葉
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レオンはシャルロット姫の侍女に誘われ、以前の応接室に入室した。

そこには既にシリウスが居り、優雅に茶を口にしていた。

「来たか」

遅かったとでも言いたげなシリウスの様子にレオンは苦笑で返した。

「トワイスと会って立ち話をしていたのだ」

シリウスは大して興味無さげに聞いていた。

侍女はレオンの前にも茶を持ってきた。

「ありがとう」

レオンが言うと、頰を赤らめて会釈した。

その仕草が何となくリサを思い起こさせて自然にレオンは微笑を浮かべた。

侍女がそのまま退室するのを見送ってから、レオンは茶を一口啜った。

「昨日のナイフだが」

レオンがそう言うとシリウスは頷いた。

「ああ、矢張り妙だな。暗殺に来たにしては堂々と正面からの突入だったし、わざと足が付くような証拠品。二流の暗殺者でもやらないくらいのお粗末さだな」

「矢張り、ジャンロード家を嵌めようとしているとしか思えない」

レオンが同意する。

そこで、シャルロット姫が一人の男を連れて応接室に入ってきた。


男は鷹のような鋭い眼つきをした大層大柄な人物だ。

ギョロリと鋭い視線は、文官にしては鋭すぎる。

一軍の大将のような風格を備えた五十過ぎの大男は、ロベルト・ジャンロード、その人であった。

レオンとシリウスは呆気に取られながらも、なんとか立ち上がり、姫と宰相に礼をする。

シャルロット姫が手で制して二人は腰を下ろす。

その向かい側に姫とジャンロードは座す。

「二人共、ご苦労様。驚きは分かります。先ずは私達側の事情をお話ししなければいけませんね」

姫は一息付いてから話し始めた。

その内容はレオンに大層な驚きを齎した。








カイゼル・ユリアス・クラウディウス。


その男は現国王、ガルバ三世の長子である。

本来ならば、次期国王として立する予定の第一王子であった。

しかし、王国内で彼を次期国王に臨む者はいない。

彼の国内での評判は最悪を極めている。

だが、実際に彼が国を傾かせる程の大罪を犯したかと聞かれれば皆首を横に振る。

そんな不思議な王子であった。

シャルロット・ルイ・クラウディウスは彼の実妹であり、非常に聡明な王女であった。

性格も穏やか、そして賢王と名高い二代前のガルーダ二世に似た知性の輝きを秘めていた。

次第に家臣や人民は放蕩者のカイゼルよりも、シャルロット姫に執政を握って貰いたいと臨むようになる。

王国始まって以来の素晴らしい女王を賜りたい。

皆がそう望むようになっていった。


それに反比例するようにカイゼルは評判を下降させていく。

罪に問われるほどのものではない。

王族としては普通ならさして問題になるような物でもない。

その一つと言われているのは軍事力の低下である。

若き優秀な騎士達を国境の砦に顔が気に入らないという理由で飛ばした。おかげで城は手薄になり、時代を担う王族を危険に晒した。

カイゼルの罪を問えば、一番にこの横暴が上がる。

しかし、実際はどうだろうか。

他国と隣接する国境沿いはいつでも小さな小競り合いが多い。

特にカイゼルが兵士を飛ばし出した数年前はそれが顕著で、何度も他国からの奇襲に近隣に住まう者たちは脅かされていた。

その土地を管理する辺境伯からは数度に渡る軍事的援助の嘆願が来ていた。

しかし、国防会議の度に理由を付けて退けようとする勢力が高位貴族に複数居り、国王の独断では派遣出来なかった。

それをしてしまうとバランスが崩れてしまうとガルバ三世と宰相のジャンロードは頭を悩ませた。

国境沿いはもう幾ばくも余裕は無い———。


そんな時だった。

カイゼルが顔が気に入らないと将校クラスの騎士を部下諸共国境沿いに左遷し始めたのだ。

当然カイゼルに対しての悪評は凄まじかった。

しかし、不思議と他の貴族たちからの反発は無かったのだ。

カイゼルは左遷と並行して反対をした貴族たちの開く夜会に出没し、馬鹿騒ぎをした。

裏があってやっている訳ではない。

ただの馬鹿だとカイゼルの側近連中から話しが漏れるようにわざわざ触れて回ったのだ。

すっかり安心した反発する勢力に居た貴族たちはカイゼルが表で派手に遊び周る内にシャルロット姫と、宰相ジャンロード、それに隣国の王子の協力の元一掃された。


そして、ガルバ三世はカイゼルに言った。


名誉を回復し、その素晴らしい知性、機転、行動力を生かし、国を導いて欲しいと。

シャルロット姫も、大賛成した。

しかし、カイゼルは頷かない。


「毎日あくせく働くなんて御免被る。余生は愛する妻と側妃達と、腹心と共に王領の端に居を構えたい」


名も無き名君になるべき者が椅子を譲った瞬間だった。


賢帝は二人は必要無いのだ、と。



そして、起こされたリサの事件は、悪ノリした王子が騒ぎを起こしたリサを保護する名目で、妹姫に軋轢無く椅子を譲る為の茶番劇であったのだ。

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