起きたらそこは樹海
「なんでこうなったんだ……」
起きたら目の前に樹海が広がっており、彼は20分くらいベンチだったところに座り何故こうなったのか考え込んでいた。
まず今の状況だがリュックや身につけていた物はそのまま残っている。座っていたベンチも無事(蔦に覆われている部分もあるが)周りは木が生い茂っており遠くをを見渡すことはできそうになかった。
「なんで樹海になってんの!?」
目が覚めたら見たことのない大きさの木や地面には苔や色鮮やかな人間大のキノコだとかよくわかんない植物がたくさん生えている。
「絶対ここ日本じゃないでしょ⁉︎」
現代日本にこんな樹海があったらもっと有名になるだろうしあんなデカイ木やキノコが生えてたら名所になっているはずだ。樹海といえば富士の樹海が有名だが
こんなに大きな木が生えてるとは思えない。
「落ち着け俺……落ち着け……落ち着け」
恐怖と不安で声が大きくなってきてるのが自分でもわかる。如何にかなりそうなのを自分に落ち着けと何度も言って抑え込む
「はぁはぁはぁ……ふぅ」
恐怖で息が早くなっていた。大きく深呼吸を二回して恐怖も不安もあるがなんとか呼吸が落ち着くと少し冷静に考えれるようになっていた。
胸ポケットにしまっていたスマホを取り出し、無理だろうなと思いながら電波が入っているか確認をするが、案の定届いているはずもない。マップやコンパスのアプリを起動すら出来なかった
「終わってんなぁ……」
今の状況を冷静に考えても自力で生きてここを脱出できるとは思えなかった。現代日本の高校2年生の彼の知識では一週間も持たずに死ぬ未来が簡単に想像できてしまった。救援を待つというのが一番生存確率が高いとは思う。だが食料がガムやフリスクしかなく飲み物も五百mlが1つと半分ほど飲んだのが1つ、空きのペットボトルが1つだ。
そして何より今いる場所に本当に救援が来るかもわからない。
「はぁ。どうしよかなぁ」
ため息を吐きながらそう呟いていると突然悲鳴が聞こえ、体がビクッと震えた
「今度は何なのさ!?」
涙目になりながら逃げた方がいいのか人がいると考えて行った方がいいのか迷った。だが突然知らないところでここで死んでしまうかもしれないという恐怖と不安のため、人に会えるかもしれないという期待を大きくしていた
「行ってみるか……」
とりあえず悲鳴が聞こえた方だと思われる方に足を進めた。少し早足で歩いていると物音が聞こえてきたので足音を立てないようにゆっくりと一歩一歩踏みしめながら歩く、数メートル進むと2、30メートル先の木々の間から人のような形が見えたが何をしているのかわからない。気づかれないようにゆっくりゆっくり歩いていく。
「うーうーー!」
緑色の体が女性の上に馬乗りになり口を片手で押さえていた。女性は暴れているがが緑色の体はビクともしていなかった
「ギャギャ」
耳障りな鳴き声がした。
これからどうしようか楽しみで嬉しそうな鳴き声だ
「人間じゃない……?」
近くで見ると緑色の奴は一応人型だが人にはとても思えなかった。そいつは腰に汚い布を巻き、身長は140センチくらいで鼻や耳はとんがっていた。裂けているくらい大きな口に歯はギザギザでお腹は昔、教科書で見た飢餓の子供のように大きく膨らんでいて嫌悪感を湧かせる
「いやっ!誰かたすけっ」
女性の塞がれていた口が一瞬開かれ助けを求める声が聞こえた
「助けないとだけど……」
助けないといけないということはもうわかっていたが足は彼女の方ではなく気づかれないように後ろに下がっていた。
人が襲われている
――それは分かっている
でも怖い
死にたくない
関わらないで逃げれば
彼女に夢中になっている間に逃げれば
「やめて!いたいっ!」
逃げようと足が後ろに向かっている途中、彼女の首元にヤツが噛み付いた。ギザギザの歯は容易く皮膚を貫通し首元から肉を抉り取っていた
「ギャギャ」
ヤツはその大きな口に血を滴らせ笑いながら彼女の肉を食べていた。
それを見た自分は凄まじい嫌悪感と殺意が湧いた。家の中でゴキブリを見たときのような、こいつを今殺さなければ自分は安心して寝ることができない時と同じ感覚で自分は足元に落ちていた拳大の石を手に持ち気づかれないようにゆっくりと背後から近付いた
彼女は首元を抉られた後、大きな声を上げて暴れていたが少しずつ大人しくなっていた。ヤツの方はそれが嬉しいのかそれを見ながら先ほどよりも大きく口を開けて笑っている。
「……っ!」
後ろから思い切り後頭部に石を叩きつけた。一回、二回、三回、四回…何度も何度も。最初に聞こえていた汚い鳴き声が聞こえなくなっても頭から液体が出ようとも繰り返し叩き続け、何かを砕いたような感触でやっと安心する。
――そこで彼女のことを思い出す。
「あっあの大丈夫ですか?!」
首元から血が止まらない彼女の姿を見てもう助からないと思いながら大丈夫な訳ないのにバカみたいなことを言った。
彼女はもう息をするのも辛そうにもかかわらず返事をしてくれた
「大丈夫っ……じゃ……ないです……」
「あっその……そうだよね……ごめん」
それ以上言葉が出てこなかった。もっと早くあそこで逃げようなんて考えて躊躇しなければ彼女は助かったかもしれない。
彼女の死は自分のせいだ。
「ごめん……ごめん」
謝るしかできない彼に彼女は
「手を……握っててくれませんか?」
そう小さい声で言う彼女の声に涙が出そうになりながら彼女の手を傷つけないように優しく握りしめた
「ありがとうございます……最後が……一人じゃなく……てよかった…」
彼女の小さい手から命が失われていってるのがわかる。こんな子が死んでいい訳がないのに自分には何も出来ない。そのことに無力感と絶望を覚えながら握る力を強めた
「ギギャ……」
その時動かなくなっていた緑の体から声が聞こえた。まだ生きているのかと驚いたがもうすこしでヤツも死ぬだろう。彼女とヤツの死が同じ日なのは嫌だけれど彼女の手を最後まで握らなければならないので自然にヤツが死ぬのを確認するしかない
【異世界領域内でのモンスターの殺害を確認しました。スキルを習得します。
『セーフハウス』を習得しました。
この世界での初めてになるモンスターの殺害なので合わせてステータスの表示を開始します』
【名前 】サトウ マコト
【性別】男
【力】 12
【魔】 0(+30)
【体】 11
【速】 10
【スキル】
セーフハウス Lv1