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秋晴れに未来人  作者: 橿 ひのき
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ついにタイムスリップ!たどり着いたは絶景世界?

世界初のタイムマシーン「四次元式時空旅行機ゲンナイエクスプレス」の試験者に選ばれた、ごく普通の女子高生、鳩羽みづき。

彼女のタイムスリップ時間は刻一刻と迫り遂にその時はやってきてしまう。

だがしかし、機械の様子は少しおかしくて、、、?

件のメールが届いてから、ちょうど2週間たった。「大正時代に行きたい」そう決意し、世界初のタイムマシーン"四次元式時空旅行船ゲンナイエクスプレス"の試験旅行者に応募してからは、もう1年と2週間の月日が流れている。まさか、私が選ばれるとは、思ってもいなかったのだけど。


それからは、世界初のタイムトラベラーとなる私に、取材がひっきりなしに来た。


私はちょっとした有名人になってしまっていた。


学校に行けば、「おお、あれがタイムトラベラーみづきやぞ!」と、好奇の目に晒され、スーパーに行けば、「あなた、過去に行くんですって!私ねぇ、若い頃はこの商店街の松田◯子とか言われちゃって!昔はねぇ、けっこうモテたのよー!ほんと、過去に行ったら一回見に来てよ〜」とレジのおばちゃんに言われ、もうてんやわんやだった。

そんな慌ただしい日々が続きながらも、タイムスリップへの時間は刻一刻と、迫っていった。




そしてついに、その日は訪れた。

2030年4月8日。大手企業Hの実験施設にて。

私は、四次元式時空旅行船ゲンナイエクスプレスの初搭乗者となった。


宇宙服だとか、タイムスリップ用特殊スーツがあるわけでもなく、服装に迷った私は、高校の制服で来てしまった。

こげ茶のに黒と灰色の線が格子状に入ったスカートにクリーム色のシャツと、薄茶色のブレザー、そして赤い棒リボン。

一見して地味だが、私服よりはまだマシだろう。




では、ここで、ゲンナイエクスプレスの内装をザックリと紹介しよう。


真っ白な楕円型のカプセル状で、大きさは横に5メートル・縦に3メートル程だろうか

この乗り物は、船というよりはなんだかUFOみたいな見た目である。

電車の窓の様な曲線状の壁をくり抜いたドアから乗り込むと、中には近未来的な空間が広がってゆく。

外見同様、真っ白な壁には、所々細い金色や銀色の細い管が血管の様に張り巡らされ、床には灰色のカーペットが敷かれている。

座席は私しか乗らないから、ひとつしかない。

真っ白なためか、とても大きく見えるこの空間に、ぽつんと設置された紫色のシートの寂しさよ。


世界中の英知が詰め込まれたこの船のコックピットに乗り込むとまるで映画の主人公になった気分で、胸が高鳴るのを感じた。といっても私は操縦なんてできないけど。


今回は大正時代に旅行する予定のゲンナイエクスプレス。なぜ、「ゲンナイ」?という名がついたかというと、開発者が平賀源内のように、あっと驚く開発で、一代ブームメントを起こそうとしたからだとか。

実際、ゲンナイエクスプレスは、世間で大きな話題になっている。この試験が成功した暁には、それこそ現代の平賀源内と呼ばれるようになるのだろう。


そしてこの、タイムスリップという、大発明は複雑かつ難儀かつ、繊細な仕組みで出来ている。

だがしかし、説明する分にはとても簡単だ。

日本一の国立大学と日本トップレベルの大手ベンチャー企業H社が今まで携えた技術をフル活用し、四次元の磁波に乗れる金属を錬金する事に成功した。

この錬金金属に包まれた物体は、四次元という、10年ほど前まで誰も信じなかった次元を伝って、自由自在に時代を行き来することができるのだ。


まさに人類の科学技術の結晶である。


こんな人類の一大イベントに、私が選ばれて良かったのだろうか。

ましてや、私にとっては、大切だけども、世界に何千といる作家の一人に会いにいくだけという私に。


座席に深く腰を下ろした。もう後悔しても遅いだろう。

ふっかふかのシートが猫背の曲線に合わせ優しく包み込む。せっかく当選したのだから思いっきり、楽しもう。





「ようこそ、時空の旅へ!ようこそMiduki hatoba」

室内アナウンスが流れ出した。まるでアンドロイドのように冷たく淡々と喋るその声に、一気に緊張感が増す。

私はいっきに現実に引き戻された。


そう私は、実験体なのだ。世界初のタイムマシーンの。




もし、実験に失敗したら?


二度と2030年に帰れなくなったら?




絶対に考えようとしなかった、不安材料が一気に脳内に流れ込み、私の脳内はあっという間に恐怖という感情に跋扈(ばっこ)されてしまう。


足がガクガクと震えを起こした。

ギュッ、と閉じた目があげられない。

背筋に羽虫が駆けるように、悪寒が走る。


そして、たっぷり抱えた恐怖を加速させるかの如く私の体は、足元から、腰に、更には頭まで揺れていた。

違う、ガタガタガタガタ、横に縦に、小刻みに、この機械が震えているのだ。予期せぬ機械の揺れに、溢れ出す恐怖と焦りは滞りを感じさせない。


もう、これは失敗ということで、宜しくて?


もちろん、乗る前にはマニュアルも読んできた。マニュアルには、揺れるなんて一言も書いてなかった筈だ。安全安心な時空の旅がコンセプトじゃなかったっけ?

めっちゃ揺れとるやんけ。


「本機体に、ご搭乗いただき誠に有難う御座います。四次元式時空旅行船ゲンナイエクスプレスはまもなく、四次元にワープします。」


先程同様、かなり冷淡な声色のアナウンスがまたもや、恐怖を煽る。


ワープ、四次元。

普段、あまりSF作品を見ない私にとっては、聞き慣れない言葉が、今、私の身に影響を及ぼそうとしている。


そう考える私は、少し決意が足りなかったかもしれない。


今すぐにでも帰りたい。もうなんだか、あったかい風呂に入りたいや。ギュッと閉じた目尻と目元には水滴が溜まっている。


もう、後悔しても遅い!


ガタガタガタガタガタガタ、ゴトゴトゴト、機内の揺れが最高潮に達した。

その瞬間、ドサッと重たい物体が地面から離れる音と感覚を最後に、私の意識は遠のいた。







気がつくと、硬い布団で横になっていた。最悪な目覚めだ。しかも、若干、土か埃の匂いがする。


ここはどこだ。


「あっ、目が覚めたみたい!」

「おー、無事やったか」


複数の女の声がする。重い瞼を持ち上げると、複数の乙女達が私を不思議そうに見つめていた。見た感じ、年は若そうだ。全員で8名、ここにはいるのは皆、10代か20代くらいだろうか。だが、その声には、独特な訛りがある。

そして服装は着物のようだが、赤い(たすき)がかけられ動きやすそうな形装になっている。私は唖然としてしまった。


「にーしても、姉さんあんた、変わった服装してるねぇ」

「そうやねぇ、外国の国の人かも」

「だから、さっきから喋れねぇんだなぁ」

女性たちが口々に話す。


この状況から察すると、私のタイムスリップは実行された。

そう、時空旅行は成し遂げられたのだ。だが、いつの時代だろうか。

ここにはあまり時代感がないのだ。

否、時代感というものはある。今居るのは、木造の少し広い屋敷の部屋の中だ、同じく木で格子が張られた窓からの風景は少し高いので、おそらく二階くらいの建物だろう。

だが、二階の木造の建物は、大正時代にも有るが、江戸時代にもあるし、もしくはそれ以前、なんてこともある。


だから、というわけではないが、今私は、大正でない時代に来てしまった気がするのだ。さっきからとても嫌な予感がする。


「今は何年ですか?」

勇気を出して聞くと、女性たちは、少し驚いた後にすぐ、可笑しそうに笑っていった。


「そりゃ、1907年、明治40年だよ!あんたそんな事も忘れたのかい、面白い人だねぇ!」


8人の中の恐らく一番年上の、姉さん的立場の女性は、言った。そして、声を上げて笑った。

私の悪い予感は的中してしまった。


(明治40年?私が望んだのは大正時代の筈、まだ5年先じゃないか!しかも明治40年ってまだ堀川秋晴、デビューすらしてないよ!活躍見れないじゃん!)


本当に明治40年だろうか?部屋を見渡してみると、今で言うカレンダーというグッズには、ずばり「明治40年、4月8日、月曜日」

と記されていた。部屋には、ラジオもテレビもない。もちろん、黒電話すらなかった。


あまりにものショックと、絶望によって体から力が抜けていく、、、。


「ま、じ、か、、、」

私はそれだけを言い残し、再び深い眠りに落ちた。




目覚めると、朝だった。

昨日のは夢だったのか、だとしたら嫌な夢だったなぁ。

さぁ、今日はいよいよ待ちに待った、私が、タイムスリップする日だ。

それにしても、とても目覚めの良い朝だ。

いつもは、「チュンチュン!」しか聴こえてこないが、今朝は「キューキュー」とか「ぽぽっ、ぽぽっ」とかいろんな鳥の声がする。

朝日はいつもより少し優しい光だ。

重たい瞼を開き、立ち上がる。

目覚めたばかりの曖昧な意識をシャキッとさせるため強く頬を叩いた。

顔を上げると、部屋にはきっちりと敷き詰められた大量の布団が!

その上に横たわるのは、思い思いの寝相をとった上、少し寝巻きが崩れ、ほんの少し淫らな格好になっているうら若き乙女達?!


夢じゃ、なかった。

例のカレンダーらしき物は、誰が変えたのか、「明治40年、4月9日、火曜日」となっている。



私は、部屋を出て、急な階段を降り、少し迷いそうになりながらも、外に飛び出した。

木造の引き戸は勢いよく開けると、バンと激しい音がした。


朝日が少し眩しい。

あたりを見渡すと、畑、畑、海、木造の町。

切り開かれた、山の中腹にあるこの屋敷の周りには山の斜面に沿って、麓まで果樹園が広がり、所々、小川が流れている。地面はアスファルトではなく、固まった灰まじりの茶色い土。

麓にはかなり広範囲で町が広がっていた。

だがその町は、見た限り全て木造だ。


まるで異世界にきてしまったような大自然だ。

海も山も空も、今まで生きていた時代とは色が、全く違う。

全てが、ほんのりと朝日の橙色に色づいているが、山の緑は、ぐっと密集して生い茂っている。

海も空も、青の濃度がまるで違う。青は澄んでより濃くなり、とても深い色となっていた。


「空気が気持ちいい〜!」

深呼吸をすると、肺の奥まで染み渡った空気が染み渡り、身体が浄化されていく。

なんて思ってる暇はねぇ!

どうにか戻る方法を考えなければ。




一方、みづきが明治の朝日風景に黄昏ている間、後の大作家となる青年、堀川秋晴は同じく山の中腹で朝日を眺め、大きく深呼吸した。

そんな、青年の顔には濃いクマが浮かび、目は充血していた。そう、彼は寝ていなかっのだ。

「なんでこう、うまく書けないんだー!」

溜まりに溜まった鬱憤を燃える朝日に向かって叫んだ。少しスッキリした。


そしてしばらくして

「なにがー?」


と能天気なやまびこが帰ってきた。









読んで頂き大変有り難う御座います。

今回は、最後の方に秋晴青年が少しだけ出てきますが、次回は、秋晴青年が沢山登場する回になると思います。

まだ、文章も未熟で、文章力や、語彙力に感じても、足りないものは多いですが、他の作家さんの作品も読みながら努力していこうと思います。

ですから、暖かい目で見て頂ければ幸いです。

では、次回もよろしくお願いします!

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