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危機、そして覚醒

どうも蒼榛です。

今回は少し短めです。あと、最後の方はわかりくいかもしれませんがご了承ください。(会話文ってほんと難しい…)

「ぐ…少々しくじったか…」

痛みに耐えながらも、何とか家の前までたどり着いた。

「あと少し…なんとか…」

意識がもうろうとする。それでも何とか力の解除をし、家のカギを開け中に入る。この際、親にばれないようにこっそりなどと言っている場合ではない。

玄関で靴を脱ぎ、二階にある自分の部屋に向かって歩き始める。そこで、意識が暗転した。



次の日、朝から大宮の姿はなかった。朝礼での先生の話によると、どうやら体調を崩したらしい。

(体調を崩す…??あの大宮が??これまで学校を一度も休んだことなく、少しの体調不良も見せなかったあの大宮が??)

意外なこともあるもんだっと思った。

大宮がいないのは少し寂しかったが、授業はなんの問題もなく進みすぐに放課後を迎えた。あの後、木林とはまだ話ができていない。日が少し西に沈み始めた時、俺は一人で教室を出る。清水は部活があるといってさっさとどっか行っちまった。久しぶりの一人の帰り道だ。

(一人ってこんなに寂しかったんだな…)

俺は、いつでも大宮と一緒に帰っていた。小学校のころからの幼なじみだ。小学校の時から、気が付いたら一緒に帰っていた気がする。まあ、ずっと俺が話をしてずっとそれを聞いてもらってるって感じだったが。あんときから変わってない。今もそうだ。そして、やはりいざいないとなると少し寂しい。

太陽が遠くに見える山に沈んでいくのが見える。俺は、その景色を横目で見ながら物思いにふけっていた。

その時、唐突にそれこそふと思いついたかのように公園によってみたいと思った。多分、少し黄昏たい気分だったんだと思う。このまままっすぐ家に帰っても多分、気分が晴れないだろうと。けど、このときこの行動をとったことは、今思えばとてもいい判断だったと思う。

空が赤く染まっていく。周りの景色は、少しずつだが色を変えていく。俺は、初めて外の景色を真面目にみていることに気付く。こんなところにちいさなパン屋があったのかとか、この家は家庭菜園頑張ってるなとか。そういう景色を見ながら、ひとりで歩くのもたまにはいいかもなって思い始める。

(たまには、ここら辺一人で散歩でもしてみようかな)

そう思った時だった。

「…きゃぁぁぁああ!!」

…ん?悲鳴…???

うっすらだが、確かに聞こえた。それは今俺が向かっている方向、つまり公園の方からのものだ。…この声はどこか聞き覚えがある気がする。

(もしかして…木林か!?)

間違いない。このよく通る高い声は木林だ。

(まさか…悪霊か!?)

可能性はある。なぜならあいつには俺が見えた。それはつまり、悪霊も見えるという可能性がとても高い。それにもし力を宿しているというのならば、悪霊に襲われるリスクも高くなる。どうやら、力には悪霊を引き寄せる力もあるらしい。…と、大宮から聞いた。確かに悲鳴を聞いただけで、悪霊が関係しているなどとすぐ推察するのはおかしなことかもしれない。もしかしたら、昨日のこともあり俺は少し神経質になっているだけかもしれない。

だが、どちらにせよこのままほっとくわけにはいかない。俺は、そういう性分である。周りを見渡す。人影はない。木林にはもう姿が見えているとわかっているので、力を使って向かって行ってももう問題はないだろう。それに、もし悪霊が関わっているのなら事態は急を要する。少し迷ったが近くの道端にバックを放り投げ、俺は走りながら精神統一を図る。少し苦労はしたが、なんとか力の開放に成功する。

「くそぉ…間に合ってくれ…!!」

俺は、本気で地面を蹴りあげる。限界までスピードを上げる。体の皮膚が、あまりのスピードに震える。

すぐに公園につく。公園は段々になっていて、上にはグラウンドがあり、下には、アスレチックと、ベンチがある中庭のようなところがある。俺が今いるところはグラウンドの上だ。

(ここではないか…なら…下か!)

俺は地面を蹴る。一瞬飛んだかと錯覚ほど大きく飛び出す。グラウンドは軽々と飛び越えてしまった。グラウンド先の階段から、下を見降ろす。そこには、左にアスレチック、右にはベンチと中庭が広がっている。人影は、いつもこの時間は多いイメージだが、今回は、少ない。左に少しばかり遊んでる子供たちがいる程度だ。その子供たちは悲鳴がしたことに対して、特に気にしてる様子はない。今度は右のほうに目をやる。そこにはひとりの少女と…

悪霊がいた。

少女は…やはり、うちの制服を着ている。そしてあの茶髪のショートで華奢な後ろ姿は、やはり木林だ。

悪霊に追いかけられ、端まで追いやられている。悪霊は、いつもの奴より少し大きく、足も小さいが、生えているように見える。

(これは…少し強い悪霊か?)

となると、ますますやばい。俺はすぐに剣を抜き、もう一度地面を蹴る。悪霊との距離を詰める。

…だが

(…間に…合わない…!?)

地面を蹴る瞬間にはもう、悪霊が木林の距離は埋まっていて、もうすぐにでも木林の体に入ってしまう。つまり取りつかれる寸前だった。

「くそぉぉぉぉぉ!!!」

(間に合わないのか…あと少し、ほんの少しだけ…目と鼻の先だっていうのに…!!)

左手を強く握る。すると左手に何か熱を感じた。見てみると、あろうことか左手が燃えていた。

(…!?…こうなったら一か八かだ!!)

俺は、躊躇なく無我夢中でその左手を突き出した。

ゴォォォォォオオオ!!!

前方に激しい炎が放射される。すると悪霊は、その業火に焼かれ、跡形もなく消え去った。木林にも炎が当たったと思われるが、不思議と無傷だ。周りも焼けて火事になったりもしていない。どうやらこれは悪霊、または俺ら力を宿したものにしか効かない力の一部であるのだろう。

俺は、木林の目の前に着地し左手をじっと見つめる。するとおもむろに木林が口を開く。

「日野本…君…??」

やはり、見えているのか。まあ、今はそんなことどうだっていい。俺は顔を上げてる木林の方を向く。木林は、驚きを隠せない表情で少し潤んだ目でこちらを見ていた。

「あー、大丈夫か??」

ちょっとバツが悪そうに頭を搔きながら俺はそう話しかける。

「…うん、何とか。」

そう答えると、さっきまで今にも泣きそうだった表情が、少しずつ平静を取り戻していく。

「で、今の何だったの??あの黒いの」

どうやら完全に落ち着いたらしく、とても冷静な声でそう質問してきた。

「あれはな…うーん」

もう言い逃れはできそうにない。俺は意を決して自分の知っている事実を話すことにした。

「…まあ、そうだな…俗にいう悪霊…てやつだ。」

「悪霊?あの、悪い霊って書く悪霊?」

「ああ、そうそう。」

「へぇ~…で、あんたが今倒したの?」

「まあ、そういうことになりますね。」

「ふ~ん…」

木林は、考え込むように下を向いて、あごに手を置きながら何回かうなずいた。

(こいつ、意外とさらっと受け入れたな…もう少し反論すると思ったんだが。)

「ちょっと待ってろ。今から、力解除してくるから。」

俺は急いで戻るといって、近くにあった倉庫の裏に隠れる。

数秒後俺は、力を解除して戻ってくる。

「…なんで隠れる必要があったの?」

戻ってくると首をかしげてそう聞いてきた。

「それは…俺のさっきまでの姿。お前以外には見えてなかったからさ。」

「え…、じゃあ、さっきまで周りから見たらひとりで勝手に喋ってたってこと!?」

「あーまあ、そういうことになる。」

「なにそれ…恥ずかしい…」

木林は、顔を少し赤らめて手で覆う。

「…まあ、今はあまり人が近くにいないから、なんの問題もないと思うよ。それに

見られてたとしても、ちょっと痛い子としか思わ…」

「いや、それ結構困るわよ」

話の途中でツッコミが入る。どうやら、さらに落ち込ませてしまったようだ。

「だ…大丈夫だって!ここには小さい子しかいないからそんなクラスで話題になったりはしないって!」

「…子供の噂は意外と広く知れ渡ったりしてしまうものなのよ?」

「え??そうなの??まあ、でも叫んだりしていない限りはそこまで話題には…」

…あっ

そう、目の前にこの公園で、叫んでいた少女がいるではないか。

顔色を窺うと木林は、顔を真っ赤にして右手のこぶしがわなわなと震えていた。

「責任…取ってくれる?」

蔓延の笑みで木林はそういった。笑顔が怖い。

「せ…責任もなにも襲ったのはあくりょ…グハッ!」

…頭を殴られました。


 その後、木林の心を落ち着かせるのに数分間を要した。

「で、なんの話だったっけ?」

少し不機嫌そうな口調でそう尋ねてきた。やっと本題に戻れそうだ。

「あ…悪霊の話だよ」

俺は疲れ切った表情でそう答える。

「あ、そういえばそうだったね。え~と、あなたが倒したんだっけ?」

「そうそう。」

「どうやって?」

「この左手に宿る業火でバーン!っと」

左手を突き出してそう答えると、木林は呆れた表情で、

「何それ、厨二病?」

と一掃された。

「って、目の前で見てただろ!!」

「あ、いやその時ちょっと目つぶってて。」

「あ~悪霊にビビッて…って、ちょっと待て!今のなし!暴力はよくない!」

木林がまた拳握り始めたので、俺は急いで自分の言ったことを訂正しなだめる。

「てか、お前そんなキャラだったか!?どっちかというと大人しいイメージだったんだが!?」

木林は、中学内ではまだ転校生ということもあるのかとても大人しいし、いつも誰にでも優しく接するイメージで、どこか弱そうな感じがあったのだが。

「それは…クラスで浮きたくないし?それにまだ転校してきたばっかだし。今はクラスに馴染むことが大切でしょ?」

「まあ、否定はしないが…疲れねぇか?そういうことしてると。」

すると、少し意外そうな顔をした。

「ふ~ん?心配してくれんだ~?」

こっちの目をまっすぐに見つめてくる。しばしの沈黙のあと俺は耐えきれなくなって目を逸らす。

「まあ、いい。今後は気をつけろよ。ここら辺、結構悪霊いるから。けど強いのはあんまいないから、逃げようと思えば逃げれるはずだから安心しろ。」

「そう…でももしまた襲われても日野本君が助けてくれるんでしょ?」

「…ち…近くにいればな!」

下から、顔を覗き込まれ少し顔が赤くなる。なんなんだこの態度の変容ぶりは。

「…けど、今回は令を言うわ。…ありがとね。」

うつむきながら、そして呟くようにそう言う。

「え??なんだって?」

俺は、わざととぼけたような返事をする。なぜなら、これ以上真面目に答えてしまうと自分の中で何かがはじけてしまいそうな気がしたからだ。

「な…何でもないわよ!じゃあ、また学校でね!」

少し顔を赤らめてそういうと、木林は左手を大きく上げて公園の下の方の出口に向かって駆け出す。

「ああ。こっちこそいきなり変な話聞いてもらってごめんな!」

「ううん。ってやっぱり聞こえてたんじゃない!」

すぐに立ち止まり、こちらを向いて突っ込む。俺は、それが面白くて思わず笑ってしまう。木林も少し怒ったような顔をしていたが、それを見てすぐ笑顔に変わる。

「じゃあ、改めて…また明日!」

目いっぱいの笑顔で手を振りながら木林はそういった。

「おう、また明日な!」

俺も、手を振りながら目いっぱいの笑顔でそう返す。

夕日に向かって、駆け出す少女は、とても幻想的で、文字通り輝いて見えた。

 その後ろ姿に少し見入っていると、突然不意に思い出す。

「…て、バッグ忘れてた!!」

俺は、急いで来た道を戻った。


読んでいただきありがとうございます。

次も、来週中には投稿する予定です。

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