長田route1
「早速君のデータを見せてもらおうか」
「良いだろう。俺の嫁を見て驚くなよ」
PCカードを家から持って来た俺は花園に自慢の嫁を見せつけるためにソフトを起動した。
「ときめきワンダー楽園〜幸せの甲州街道〜」
PCからの音とタイトル画面が表示された。このゲームは言わばギャルゲーに該当するゲームだ。エロゲーではない。
「MACアドレスを確認しました。worldを再構築します。暫くお待ち下さい」
このゲームの特徴として、世界番号システムが内蔵している。例えばAというPCでは、主人公の家が北にあるとする。次にBのPCにカードを挿すと東にに移動していたりする。この様にプレイヤーごとに違うゲームをプレイすることが出来るのだ。
MACアドレスは約70億あると言われており、このゲームも70億位の別内容のゲームに変化するのだ。
その中でプレイ動画等で人気の物は後に個別パッケージとして販売されている。発売しているのは、幼馴染の美告のお父さんの会社だ。
「再構築完了しました。マップをご確認ください」
今回のマップでは自宅が雑居ビルになっていた。
それと嫁のミルスちゃんの家は同じ雑居ビルになっていた。
「これはなかなか興味深い配置に成ったものだ」
花園は釘付けになるようにモニターを見て言った。
それもそのはずだ。主人公とヒロインが初期配列で同じ建物に住んでいる事は今まで確認されていないのだ。
「とりあえず、キャプチャしよう。スペックは足りてるか?」
「君は有名なトキワンプレイヤーだから、録画の用意はもうしているよ。ちょっと古いものになるけど磁気テープでね」
「画質が悪そうだな。ソフト録画の方が俺はすきだな」
「僕はこのゲームについて少しだけ解析していてね、一部映像にコピープロテクトが掛かっているようで、一般的な録画方法では映像がカットされて完璧には撮ることができないんだ。WEBカメラを使うのも考えたのだけど動画の品質が一定にはならないからね」
動画の件はひとまずおいていおいて、プレイしよう。まずはミルスちゃんに会いに行こう。彼女の居場所は同ビル1階のカフェ ミル倉亭のようだ。
早速入るとするか。
「イラッシャーイ。ワオ、来てくれたんだ。嬉しいなー」
ミルスちゃんが店員として現れた。
「君がくれたコーヒーミルのお陰でこの店が建てる事ができたんだから何でも言うことを聞いちゃうよ。あんなことや、こんなことも、痛いこと以外なら全部受け入れちゃうよ」
未確認テキストだ。だが、内容が妙だ。俺はコーヒーミルを渡した事はないし、持っていない
worldが構築し直しても、好感度と今までに行った行動が書き変わる訳じゃない。
「妙だな」
俺は花園に向かっていった。
「バックログの確認をしてみるのはどうだろうか?
トキワンはユーザーの行動からメモリの状態までありとあらゆるデータが自動で記録されるんだ」
バックログを確認してみると次のような内容が記載されていた。バックログだから最新の内容からの表記だ。
・ミルス・アナスタシア・プロコープ 特殊会話パターン2実行中
・イベント 新規開店ミル倉亭 発生
・world再構築
・MACアドレスを確認
ここまではこのPCでの出来事だ。
・取り外しを確認
・イベントアイテム コーヒーミル取得
・管理者権限実行
・プロテクト一時解除
・外部接続を確認
「花園、聞きたい事がある。管理者って誰の事だ?」
「僕の考えでは、これは大羊告じゃないだろうか。君は彼の関係者か何かだろうか?」
「いや、会ったことのない赤の他人だ。逆に会いたい位だな」
「PCカード版のセキュリティは今までに突破された事のない難攻不落、鉄壁の防御。製作者以外には突破できないはずなんだ。他に心当たりはないのかい?」
「無理に挙げるならば発売元の関係者が一人いる」
「それは誰だい?」
「幼馴染の美告だ。彼女の父親が発売元の社長をしている」
「それならば直接聞いてみればいいじゃないか。彼女は君が大好きなんだろ。何でも答えてくれると僕は思うよ」
「以外にもな、ガードが硬いんだ。昔から美告と遊んだりしたことがあるのだが、部屋にすら入れてくれないんだ。プライベートは完全に秘密に包まれている。昔、俺は調べようともしたが失敗に終わった。ある日は近所のビルの屋上から双眼鏡で美告の部屋を覗こうとしたら、逆にレーザーポインターの光をレンズに直接直射されてひどい目にあった」
「実にcrazyのようだね。僕から言わせてもらうと君もなかならの変人のようだね。
分からないなら調べればいいじゃないか。
この時間は、女子体育が行われていて、更衣室は調べ放題だ」
「だが、見つかったら一生レッテルを張られて生きていかないといけなくなる」
「その為に時計を渡したんだ。後はわかるよね」
「気が引けるが良いだろう」
「それじゃあ始めようか。スニーキングミッションスタート」