EPILOGUE-エピローグ-
峰君。
僕は、君のことを買っていたんだ。
君には充分な知識と熱意がある。科学者として申し分無い。それに人柄も良い。もしこの計画を立てていなかったら、僕は君を次のトップに選んでいただろう。
だから、君が目の前で死んでゆくのは見たくなかった。あのとき近藤と一緒に行くように薦めたのも、目の前で動物達に食われるか、或いは私に殺される君を見たくなかったからだ。先に別の場所で死んでくれれば、僕の良心は苦しまずに済む。
何度も言うが、ウイルスは止められない。止めたとしても、もう手遅れだ。
せいぜい見守っているよ、君がどこまで頑張れるか。
あれからどれだけの時が経っただろう。
高田の言った通り、ウイルスは全世界に蔓延した。
日本では山に住んでいた熊や猿も感染、凶暴化し、山を下りて次々に人間を襲った。更に船に侵入したマウスが他国に移動、最初は隣国の中国等で事件が発生し、その後すぐに全国に広がった。
たった数匹のマウスが持ったウイルスが全域に広がってしまった。もう生きている人間も当初の人口の半分を切っただろう。
「どんな感じだ?」
「……駄目。まだウイルスは死なない」
「そうか」
峰と仁科はまだあの研究所に残っていた。食料も限られているためここに居られる期限も必然的に制限されてしまう。その期間内に、2人はどうにかしてウイルスを殺す方法を探すつもりである。
「全く、とんでもない置き土産だぜ。応援が呼べれば良いんだが、この調子じゃ難しいかもな」
「やれるだけのことはやりましょう。人が生み出したものなら、必ず人が壊せる筈よ」
自分達がやらねば、被害はさらに深刻なものになる。無駄なことかもしれないが、それでも、少しでも生きている者がいるのなら、彼等を救い出さなければならない。
空を狂った鳥が覆い、血を求める獣達が地上を、地下を徘徊する。
そんな世界の中で、2人は研究を続けている。
いつか必ず、平和な日が戻ることを信じて。