あの世~天国支店~
「いらっしゃいませー。お客様は何をお求めでしょうか?」
目を開けるとそこは―夢のような綺麗な場所でも教室の机の上でもなく―デパートのまん前だった。
店名・『転生デパート・天国支店』
…なんだ。なんだ天国支店って。地獄にもあるのか?それから本店は?つかそんな地名あったか?
それから転生って…なんのことだ。
そもそもなんでデパートの入り口前で突っ立ってるんだよ。変だろ俺。
しかも目の前にはニコニコ笑顔の店員さんが。
この状況における問いは『なぜこんなところにいる?』かで、回答は……
「お客様?記憶の混乱でもしましたか?」
「よくわかったな」
そう、その通り。現在記憶の整理中だ。
「よくあるんですよ。ただいま直しますね」
ただいま直す?治すじゃないのか?つーか。
「よくあるってどういうこ、と…ですか…?」。
最後丁寧なのはしょうがない。
お姉さん、なんでハンマーもってるんですか。
「多分おそらく痛くはないかもしれないと5人中1人に言わせた『混乱修正ハンマー』です」
5人中1人?他の4人は?痛いか全く痛くないの二択?
ちなみに答えは…「あきらかに前者…!」
慣れた手つきで振り下ろされました。
え、何?俺なんかした?
たしかに面倒くさがりでやりたいこともない奴だがやりたいことがないからこそ人助けとかはいっぱいしたが。悪いことは全くではないがしてないよな?
「って…人助け?」
痛みに問題有りだが効果もあったらしい。…効果だけなかったりしたら女でも殴るかもだが…。
とりあえず思い出した。というかお姉さんもうやめて。
もう一回きたら今度こそ記憶全部飛ぶよ?
「…俺、死んだんじゃねーの?」
ここで目を開ける前の記憶によると俺は公園近くの歩道をいつものようになにをするでもなくぼんやりと歩いていた。
そしてその後漫画のようにトラックが突っ込んできて俺だけなら余裕で避けられたが近くに公園で遊んでた幼稚園児———男女仲良く計四名———がいて……そうだ。
「助けて代わりに轢かれたんだ」
「はい。思い出していただけたようでなによりです。それでは改めてようこそ転生デパートへ!」
「だからなんでデパート?」
死んだってことはここ所謂あの世だろ?
「魂魄というものをご存知ですか?魂とは所謂タマシイのことです。ここで重要なのは魄のほうです。魂が核ならこちらは…そうですね徳といいますかなんといいますか…まあ単純に言ってお金みたいなものです」
単純に言いすぎ。まあ馬鹿なんでいいけど。
「魄は最初、つまりどこかの現世に生を受けた時点で千です。そこから死ぬまで[千-悪行+善行=]で増減いたします。そして死んだあとこのデパートで買い物をしてから転生できるのです」
なるほどお金ね…。
でも死んでから買い物してどうするんだか。
「とはいえ死んだ魂に物を売るなんてなんの意味もないのでこの店で売っているのは物ではありません。簡単にいいますとこのデパートでは能力…所謂スキルを売っております。売れるんで売買していますが正しいかもしれません」
スキル?能力って…いいのか天国。
「お客様の持ち魄すごい点数ですよ。神様昇格も夢じゃありません」
神様昇格?なれるもんなんだな…でも神様?興味なし。
「とりあえず店内へどうぞ!」
さて、いったいなにが売っているのやら…。
とりあえず転生なんてものがあるのなら次の人生ではやりたいことがない。
なんてことはないだろう。記憶がないなんてお決まりだし。
次の俺、まともに生きろよ。
なーんてな
確かに冗談だが後からそれはないと思ったのも事実だった…