資産家独居老人の道楽6
ある日の昼前に剛田甚左衛門は大広間に元特殊部隊の八咫烏メンバー6人と配下である八岐の大蛇メンバー51人そして、医療チームとして闇医師の黒澤惹句と発明家の独田中松ほか4人の医師と看護師と死体掃除屋の代表を集めて話し合いの席を設けた。
もちろんアキも塩澤もいる。
「という体制で行こうと思うのじゃかどうかのう?」
「はいはーい!剛田さん私はここで司令塔をするよ!」
「好きにすればよい」
「オーナー、地下での演習はこの邸宅の敷地。特に庭園での戦闘を想定した内容でよろしいですか?」
「ブラボー1よ、それで頼む」
「剛田さん!私も射撃の練習をしてもいいですか?」
「アキが射撃をするのかのう?必要かのう?」
「剛田さん、この環境だと転ばぬ先の杖も必要よ。私も守りたい物があるから」
「好きにすればよい。ブラボー1、指導も頼めるかの?」
「オーナー、お任せください」
そして、各自解散となりそれぞれのミッションへと向かった。
「アキさん、これがベレッタM92FSです。あの的に向かって撃ってください。とりあえず1発だけです」
そしてブラボー6はアキに基本的な射撃姿勢やコツを説明して撃つように言った。
バンッ!
「6さん、これ意外と軽いわね」
「ちょっと的を寄せてみます」
ブラボー6が的を寄せると的の心臓付近に弾は当たっていた。
「アキさんはセンス良いですね~。じゃあ的を戻すので残りの弾を撃ち尽くしましょう」
「はい!」
バンッ!バンッ!バンッ!バンッ!
アキは連射した。そして弾が尽きた。
「6さん弾が切れました」
「アキさん、射撃はここからが大切なところです。自身の安全を確保しながら弾倉をいかに早く入れ替えれるかで勝負が決まります」
「どうすれば良いの?」
ブラボー6は丁寧に撃ち終わった弾倉の出し方や新しい弾倉と素早く交換する方法を説明した。
一方地下の演習場には剛田邸の庭を模したレイアウトが施されて、八咫烏と八岐の大蛇による演習が行われていた。
剛田甚左衛門宅に対しての飽和攻撃への対応を研究するためだ。
それぞれメンバーを組み替えて八岐の大蛇の数名に対して、八咫烏と八岐の大蛇混成チームでのシュミレーションなど数々のシチュエーションで日々演習は繰り返されていた。
剛田甚左衛門とアキを要人に見立てて警護する演習もおこなったがメンバーの多くから意見が出た。
「オーナーは護衛対象から外した方が良いと思う」
この意見は非常に多く強い意見だった。
アキは護衛対象である。
このように剛田甚左衛門宅は防衛力を高めて行ったのである。
そして射撃場では。
「やっぱりこれが1番しっくりくるわね!」
アキは2丁の拳銃を両手にひとつずつ持ち、ひとつの的や複数の的に射撃練習をしていた。
「アキさんはスポーツをしていましたか?」
「高校卒業する前までは新体操をずっとしていたの。大学入ったらお金なくてバイト三昧だったけどね」
「なるほど。射撃練習の次の段階に移りましょうか」
「えー!」
アキは悲しそうに、そして寂しそうにベレッタM92カスタムプライヤチャット・ソード・カトラスを2丁台の上に置いた。
アキとブラボー6が狙撃用の射撃場へ行くと、剛田甚左衛門がうつ伏せになり銃を構えて射撃していた。
タンッ!
そして剛田は双眼鏡で的を見る。
「いやあ、オーナーは射撃もされるのですか?」
「ワシは拳銃より狙撃が好きなのだろうなあ」
「普段接近戦ばかりされているのにですか?」
「それはそれこれはこれなのじゃよ」
アキは双眼鏡で的を見ている。
「剛田さん!なんで全部真ん中に当たってるのー?」
「オーナーはオーナーですから」
ブラボー6は爽やかな笑顔を見せる。
そこへ塩澤がやって来た。
「甚さんよ。なんか妙な客がきたぞ」
「誰じゃ?知り合いかのう?」
「まあ、同好というやつだろうな」
剛田甚左衛門と塩澤は客間へと向う。
そこには1人の壮年の男が座って茶を飲んでいた。
横には袋に包まれた刀のような物が置いてある。
「すまぬ。だいぶ待たせてしまったのう」
「いえいえ、剛田どの私は渋沢歳三といいます」
「良い名じゃのう。気配も素晴らしい」
「ありがとうございます」
「で、その渋沢殿がワシに何の用件があるというのじゃ」
「手前勝手ながら剛田さまと真剣での立合いをお頼み申し上げます」
「ふむ」
「ダメですか?」
「というか何故ワシなのじゃ?」
「出来るだけ正直に申し上げますと、私に剛田甚左衛門さまの暗殺の依頼が多く困っておりまして。最終的には家族を人質にとられまして。まあ、退っ引きならなくなったというか…。ならば立合いでの真剣勝負の方が私のしがない剣客としての矜持もたつというか…。調べれば調べるほど剛田さまと真剣での立合いをしたいという願望を止められなくなりまして」
「渋沢殿が負けたら、そなたの家族はどうなるのじゃ?」
「約束では家族は開放されると」
「水波を呼んでくれ」
天井から水波が落ちてきて、畳に正座した。
「主殿、お呼びですか?」
「ふむ、ここまで気配が消せるとはのう」
「お褒め頂きありがとうございます。どのようなご指示で」
「なんか水波よ。いつもと様子が違うのう」
「客前でございますから」
「良い!渋沢歳三殿の家族を人質から救出保護し、その組織を壊滅して来てもらおうかのう」
「お任せください」
そして水波は影だけ残して消えた。
「さてと、渋沢殿。渋沢殿?なぜ泣いておるのじゃ?」
「剛田さまの情けの深さに胸を打たれました」
「もう昼じゃのう。腹が減っては戦はできぬと申すし、お互い胸襟を開いて食事をして、腹が落ち着いたら真剣での立合いをしようかのう」
「何から何まで感謝申し上げます」
強盗よりこっちのほうが芯から胸が熱くなるのう。道楽終いになるかも知れんが後の立合いを心底味わうとするかのう。
剛田の胸の内には今まで味わったことのない高揚感があった。
湯呑の茶を飲む剛田は茶がいつもより味わい深く感じた。




