第三話 第一章 沈黙の祝祭
【第三話 第一章 あらすじ】
神々が去り、狂気が去った地球の背の上に訪れた、かつてない沈黙と平穏。
言葉を捨てたミナたちは、極彩色の樹海で星の鼓動に身を委ね、穏やかな日常を過ごしていた。
しかし、安らぎに包まれる聖域の陰で、静かに加速を始める古生龍の不穏な脈動。
かつて神であった「守者」が不気味な異変を感じ取る中、月影の裏側に眠る「もうひとつの処刑機構」が静かに目を醒ます——。
第一章:沈黙の祝祭
天上界が塵へと消え、ドラゴンハンターたちの狂気が泥に溶けてから、地球という名の「古生龍」の背の上には、かつてない静寂が訪れていた。
富士の裾野に広がる極彩色の樹海。そこでは、かつて人間だった「獣たち」が、言葉を捨て、服を捨て、自意識という名の重荷を捨てて、ただ静かに寄り添い合って生きていた。彼らにとって、世界はもはや「解析し、利用すべき対象」ではない。ただ、肌に触れる風、土の温もり、そして足元から伝わる龍の脈動そのものだった。
ミナ(20歳)は、樹海を見下ろす巨岩の上に四つ足で座していた。彼女の隣には、かつて神であった小さな獣たち、そして言葉を失った元ハンターたちが、まるで最初からそうであったかのように穏やかに丸まっている。
ミナの瞳は、空の彼方を映していた。
神々の支配は終わった。だが、この星の物語はまだ終わっていない。
ドクン…………ドクン…………
龍の鼓動が、わずかに速まっていた。
それは怒りではない。それは、外部からの「不純な干渉」に対する拒絶の反応であった。
守者は、ミナの少し後ろで、泥に塗れた身体を休めていた。彼はかつての神の知性をわずかに残しながらも、その思考はもはや言語ではなく、星の生体電流の「揺らぎ」として処理されていた。
(……来……る……)
守者の半透明の皮膚が、チリチリと青いリン光を放つ。
彼が感じ取ったのは、大気圏外——月影の裏側に潜んでいた、神々の「第二の処刑機構」の鼓動であった。




