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私はモルモット


 私は今、国家が厳重監視する寄宿制魔術学園に通っている。

 ――いや、通わされている、というほうが正しい。


 入学理由はシンプル。

 「集団生活は管理しやすいからだ。年齢的にも自然…魔力特異個体の観察」

 ……つまり私は、モルモット。

 可愛い制服と立派な校舎は、甘いお菓子で包んだ鉄格子みたいなものだ。


 クラスメイトは全員年上。

 私は飛び級入学。

 身長が低いせいで、遠目から見ると迷子の親戚幼女みたいに扱われる。


 もちろん、誰もそれを口に出しては言わない。

 だって――このクラスで一番成績がいいの、私だから。


「……まったく。才能って人間関係を難しくするわね」


 授業では教師が難しい魔術理論を解説しているけど、私は既に理解済み。

 板書を写しながら、別の問題を考えている。


(……今日の魔力市場の取引価格。前月比で1.8%上昇。

 金融緩和でもしたの? それとも規制の影響?)


 はい、普通の学生が考える内容じゃないことは自覚している。

 でも前世での知識がある以上、私は考えてしまう。


 ――この国の魔力経済。

 私のせいで、激変した。



 昔は魔力は個人の才能や努力で使うものだった。

 でも今は違う。


魔力の売買は国家認可の専門会社のみが取り扱い可能。


魔力は銀行の預金みたいに預けられ、貸し出せ、運用できる。魔力は資産なのだ。売買もできるし、担保にして資金を借りることも。魔力を親から受け継ぐ者もいれば、買い集めるものも。またたくさんの人から魔力を投資してもらいより大きな魔力で大きな事業を行うこともできる。そしてその事業利益を魔力を投資した者に還元することも。

これらの取引は国家の管理下に置かれている。

その省庁は魔力省。

そのトップにはあの、私を検査しに来たあの目つきの役人だ…なんの因果か…


魔力検査は全国民義務化。


魔力保有量・属性・操作適性に応じて魔力資格証明証が発行。


その資格には更新試験がある。



 ……嘘みたいだけど、これは全部私が原因。


「ほんと、過去の私。余計なことしたわね……」


 偽装契約魔法事件。

 あれから法律が十倍くらい増えた。

 経済省・魔術庁・司法局が合同で泣きながら制度作ったらしい。

そして最終的にいろんな部門をまとめてできたのが魔力省。



 学園には教師、寮母、生徒、清掃員、庭師……

 いろんな大人がいる。


 そしてその一部は――監視員

彼ら彼女らはそれを私にはかくさない。

なぜならそうやって私にプレッシャーを与えてくる。

まあ私もそれを時々楽しんでいる.。

わざと疑われる行動することも…

それで反応をみて楽しんでいる。

だけど、だんだん慣れてくる同じ方法では引っかからない。

そこでこちらも新しい方法を考えて試す。

そんなことをしてるので結構ここの生活は楽しい。忙しい。


でも私は知ってる。

 彼ら彼女らは私の自由を許す気なんてないってことくらい。


(でも残念。私はもう自由を確保する準備を始めてる)



 教室では浮いても、図書館は落ち着く。

 誰も私に話しかけてこないし、本は黙って知識をくれる。


 私は魔術理論と経済法、国家制度、魔力取引規約……

 読み漁って整理していく。


(この国の弱点は……金融設計の甘さ。

 魔力の流動性調整機構が脆弱。

 つまり――攻略ルートは整ってきた)


 ページを閉じ、私は息をひとつ吐いた。


「……さて。国家さん。私が本気出す前に、準備、終わらせておいてね?」


 声はもちろん誰にも届かない。


 ただ、静かな図書館の空気だけが震えた気がした。



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