魔法経済省・適性検査の日
孤児院の応接室は朝からざわざわしていた。
原因は…
魔法経済省査察部の来訪。
そしてその中心で、私は――
椅子に座っていた。
だって、10歳児だもの。見た目は。
前に座る職員が書類をめくりながら確認する。
そして私に聞いてくる。
「はーい」
(※声のトーンは幼児営業スマイル3。馬鹿そうに、愛嬌100、知性0)
「ねぇ、こんな小さな子が無認証契約なんて、本当にできるのかしら? 誤解じゃない?」
と同僚に話してるのが聞こえる。
(……そう思ってくれるなら助かるんだけどね)
まず渡されたのは――
算数ドリル。
(……あのね? 私、前世で国際金融商品という地獄を渡り歩いてたのよ。いまさら…いや)
「シエラさん、答えを書けますか?」
「はーい。……」
数分後回答を書き終わった。
「!」
職員達は互いに顔を見合わせる。そして私の回答を一つ一つ確認していく。
(え、これで驚くの? 逆に私が驚きたい)
その後も問題は少しずつレベルが上がった。
・分数→瞬殺。 ・方程式→秒殺。 ・関数→気合で幼児字体で書くのが一番大変だった。
「す、すごい……10歳で関数がわかるなんて……!」
(はい拍手拍手。ソロバンじゃ株価指数は読めませんよ?)
次、魔力試験。
試験官は丸い水晶を机に置き、優しく説明する。
「シエラさん、この水晶に触るだけでいいんですよ。魔力量は数値として表示されます」
私は――本気を出せば水晶が割れるのを知っている。
だから、
そっと、弱々しく触れた。
水晶が淡く光る。
数字は――
134。
普通の子供より少し高い程度。
ざわつく職員たち。
「……認証なしで契約魔法を扱えるほどではないが……十分高い」
(よし、普通以上、天才未満。理想的なラインね)
実技試験
「では簡単な浮遊魔法をお願いします」
私はチラッと職員を見る。
(ここで全力はダメ。机なんか浮かせたらとんでもないことになる)
私は――机の上のカップを少しだけ浮かせた。
ふわっ
「す、すごい!制御が精密だ!」
「10歳でこれは異例だ……!」
シエラ: (´▽`) ←顔はあくまで“偶然できちゃった感”
心の中: (これくらいどころか、建物ごと空に浮かべることできるわよ(笑))
試験終了
私は机に突っ伏した。
「あーーー……疲れたぁぁぁぁ……」
(演技7割、本当に疲れた3割)
職員たちはひそひそ声で評価をまとめている。
「……予想より高い潜在能力だな」
「教育すれば将来的に――」
しかし。
あの鋭い目の青年職員だけが、違う反応をした。
じっと私を見る。
その目は笑っていなかった。
「……君は余裕だね…手を抜かなかった場合の君をみてみたい…」
何こいつ…いやなやつだやっぱり…
私は、ゆっくり顔を上げる。
笑顔は営業スマイル2。目だけ笑わないやつ。
「やっぱり。君――わざとだ。」
背筋が冷える。
(……バレた?)
だが、私は笑った。
可愛く。無邪気に。何も知らないふりで。
「えへへ〜」
その男はその笑顔を見て――確信した顔で呟いた。
「――面白い。国家的財産だな…保護の対象だ…いやそれ以上かな…」
私は気づいた。
この国が――私を利用する気でいることに。
そして同時に思った。
(いいわ。利用しなさい。
――その代わり、いずれ私がこの国を買い取るわ。)




