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魔法契約騒動編


 ――夜の孤児院は静かだった。

 月明かりだけが薄い廊下に落ち、古い床板のきしむ音がやけに響く。


 私は、その廊下を裸足で忍者のように歩いていた。


「……ふふ、経営者にとって契約更新時期ほど、よだれが出るイベントもないわ」


 目的はもちろん――院長室。


 ドアロックが小気味よく外れる。


「便利よね、魔術。現世でもこれが使えれば…」


 契約書の場所はもうわかってる。聖職者は聖職者…中にはとんでもない悪人もいるのが常識だけど…ここの人達はいい人達…おかげで管理もずさん…


 私はうっすら笑う。


 私は自分が作った契約書と見た目にはわからない。


 ――そして差し替える。


「よし、完了。明日が楽しみね(笑)」



◆パン屋の違和感


数日後、パン屋ロルフの店は毎日行列だった。


「ロルフさん! 昨日の新作また売って!」 「バゲット5本予約してたの私だから!」


 まさにバブルだ。


 その様子を、私はシスター達の世間話から聞いていた。


「……素晴らしいわ。これで毎日のパンに困ることはなくなったわ…(笑)感謝してほしいわね」




 しかしその成功が、ロルフに嫌な疑問を抱かせ始めた。


「……なぁ、なんかおかしいよな? こんな急に売れるか?」


 ある日彼は契約書を知り合いの魔法会計士にみせた。


 彼はそして気づいた…


「魔力認証印がない……!」


「ていうことは…… これ違法契約魔法なんじゃ……!?

こんなの公取に知られたら――吊るされる!!」


 


◆国家が動く



ある日孤児院の前に、黒い馬車が停まった。


馬車には――


魔法経済省・魔力公正取引機関の紋章。

シスター達が不安そうに出迎える。

馬車からは3人が降りてきた。


孤児院は大騒ぎ、シスターたちは右往左往。

私もなにが起こってるのか全然わからなかった。

するとしばらくしてシスターの一人が私を呼びに来た。

呼び出された私は全然理由がわからなかった。

シスターに付き添われて部屋に入るとそこに3人の職員と院長がいた。

「この子ですか…」

目つきの鋭い一番若そうな男性職員がそういうと私をじろりと見た。

嫌な目つき…この目つきは前世でもみたな…官僚の目つきだ…


「ほんとにこの子なんでしょうか…まだこんな子供なのに…まだ信じられません…」


院長はもうおどおどするばかり。


「まあ調べればわかることですからね。ご協力願います…」

嫌な目つきのあの職員はそういうとまた私を見た。

身長が違うからまさに上から目線。


「この役人が…」


と心の中で地味にキレた。

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