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魔力バブル崩壊

魔力バブル崩壊…

 王国は、まるで色彩が抜け落ちたように静まり返っていた。


 昨日まで歓声にあふれていた市場通りは、今は怒号とすすり泣きで満たされている。


「どうして……! 俺の魔力量が三分の一の価値しかないなんて……聞いてない、聞いてないぞッ!」


 魔力量の査定表を地面に叩きつけ、男が膝をつく。

 彼の腰の魔力証明石が、光を失った赤いランプのように、侘しくくすんでいる。


 別の路地では、老婦人が呆然と立ち尽くしていた。


「わたし……家を売ってまで、魔力を買い足したのに……。こんなはずじゃ……こんな……」


 震える手で胸元の魔力袋を握りしめる。

 しかし、袋の中身は昨日の半分以下の価値になっていた。


 ――みんな、信じていたのだ。

 “魔力の価値は永遠に上がる”と。

 “魔力は資産だ”と。


 日本のバブル崩壊で“土地神話”が崩れたのと、まったく同じ光景だった。



 学園寮の前でも、退学届けを手に、泣き崩れる生徒たちがいた。


「……嘘だよね? お父さん、家がなくなるって……。借金だけ残って……」


「魔力を担保に借りたお金、もう返せないの。利息だけで毎月、給料が全部消えるって……」


 彼女たちの顔から、以前の浮かれた笑顔は完全に消えていた。


私にも崩壊の余波が来た。


国からの支援は今年限りだ。

まあ所詮仮の世界。

食べていければそれでいいと思った。

今働いてるアルバイトで食いつなぐしかない。

まあ、なんの未練も無いが…


 本当に、現実は残酷だ。



 街の中心部では、倒産した魔力取引会社のビルが、人々の罵声を浴びていた。


「責任者を出せ! 俺の魔力石を返せぇぇ!!」


「詐欺だ! 国もグルだったんだろ!?」


「なんで魔力省は止めなかったんだ!」


 怒号が渦を巻く。

 警備兵が幾重にも壁を作るが、暴徒の波は止まらない。


 その場を、私は遠巻きに見つめていた。


(……これが、バブル崩壊)


 前世で得た知識をそのまま魔力に置き換えた地獄。



 一方で――

 どこ吹く風、と優雅な生活を続ける者もいた。


 その最たる例が、元宰相アルデン・ローレン。


 魔力価値が頂点近くまで上がった頃、彼はさりげなく国外に資産を逃していた。

 そして崩壊の直前、こっそり辞任し、王都を離れた。


 市民が借金に怯えて震えているこの時、彼は湖畔の別荘でワインを飲んでいるらしい。


 ――あの顔で、“魔力は国の未来だ”とか言ってたんだよな。

 よくもまあ、ぬけぬけと。


 怒りよりも、もはや呆れに近い感情が胸に湧いた。



 崩壊後の街には絶望が満ちていた。


 仕事を失った者は路地で野宿し、家庭が破綻して学園を去る生徒は後を絶たなかった。

 魔力査定所には、夜明け前から長蛇の列。

 損失を確認する覚悟のない人々は、窓口前で泣き崩れた。


 ――だけど、私は知っていた。


(ここが“底”だ)


 絶望が価値を底まで押し下げた時、買いに動ける者だけが、次の時代の勝者になる。


 バブル崩壊の研究で、何度も何度もそう書かれていた。


(やるなら……今しかない)


 そう思った矢先だった。


「久しぶりだな、シエラ」


 私の前に現れたのは、バブルの始まりに気づいて国外へ去っていった――

 あの元魔力省長官。


 彼はゆっくりと笑って言った。


「……一緒に来ないか? お前の魔力でこの国を買い叩くんだ(笑)」


 私はその提案に、なんにもためらわず即座に迷わずうなずいた。


(――ここから、私の本当の転生人生が始まるんだ!)

なんだか笑いが止まらなかった!

私の魔力はこのためにあったんだ!

前世の経験も知識も!

これからが私の無双の転生人生!


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