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謎の二人組と無双の刃


「うわ。面倒くさい事になってるな。」


「何で、み〜んなやられてるの?」


紅蓮は掴んでいた首を離し、遊黎は愉しそうに笑みを浮かべる。


「あの女の子の持ってる能力なんだろ〜?気になる〜。」


「えぇ〜?戦うの怠いから無しで。取り敢えず、俺達はそいつらを回収して帰ろ?」


話しながら近づいて来るが、今まで誰も見かけなかったというのに急に現れるのはおかしい。


何より、このタイミングで出て来たことと『回収』と言っていること。


このことから、コイツらがこの状況に関わっているのは間違い無いだろう。


「悪いが、情報を聞き出せて無いんでな。」


「そうだよぉ?それにぃ〜私もまだまだ愉しめてないし!」


対峙しようとする紅蓮達を見て、青年は更に面倒くさそうな表情を浮かべた。


「はぁ〜だる。ベルゼ、さっきのやつ使って回収するよ。」


「手に入れたばっかなのに?」


「いいよ。早く帰りたいし〜コイツらヤバそうだし。今のままじゃ、戦ったとしても勝てるか分からないから。」


女の方は、見れば分かるほどの狂気に満ち溢れている。


それとは逆に、男の方は何も感じない。


だからこそ、女よりも危険視しなくてはいけない。


それを考慮すれば、今戦うのは愚策だ。


てか、怠いし。


「女の子の能力気になってたんだけどな〜。ま、いっか。また会うことになるしね〜。それじゃあ───“煙幕”」


白い煙が何処からとも無く現れ、辺りを包む。


紅蓮が拳を振り下ろし、風を起こして煙を退けようとしても、一向に薄くなる気配は無い。


「見えなくても、感じればいい。」


俺は目を閉じた。


視界が無意味になるのなら、目を閉じても変わらない。


むしろ、そうすることで感覚を研ぎ澄ますことが出来る。


「成程な。だとしたら、こうすれば回収出来ない。」


紅蓮は目を閉じながら、さっき首を掴んでいた奴をもう一度掴む。


一方遊黎は、この煙の中でも、まるで見えているかのように動いていた。


しかし、実際は見えていない。


遊黎は、己の本能に従い、思うがままに動いているだけなのだ。


「ベルゼ、こっちは回収終わった。」


「こっちも終わったから〜、撤退〜」


俺とベルゼは、撤退しようとした。


だけど、出来なかった。


気付かなかったのだ。


直ぐそこまで、近づかれていることに。


「声で居場所がバレると思わなかったのか?」


「そこに居たんだぁ?どうせ逃げちゃうなら、一発ぐらい喰らっていきなよ!」


紅蓮は気怠げな青年を殴り、遊黎はベルゼと呼ばれていた少年に蹴りを入れた。


「チッ、これだからっ!ヤバい奴らと戦いたくないんだよ!」


「どうする?戦闘する?」


「しねぇよ!早く撤退するぞ!」


煙が晴れると、辺りは紅蓮と遊黎以外誰も居なかった。


一人を除いて。


「あれ?わ、わたしは!?」


「俺が掴んでいたからな。」


「私も誰か掴んでればよかったなぁ〜」


さて、これからどうするか。


経過時間は、俺らの試合が終わってから二十五分程度。


Bランクの試合は、終わっていると見ていいだろう。


今から行っても、Aランクの決勝戦ぐらいか。


「遊黎、コイツはお前の好きにしていい。」


「ん?その子はあいつらに渡さないのぉ?」


「情報を何も聞き出せていないというのに、渡すと思うか?」


紅蓮が聞き返すと、遊黎は少し考えた後に「思わないかもっ!」と答えて少女を受け取る。


「てか、なんで私に?」


「尋問を、自分の方が上手く出来ると言ったのはお前だろ。」


「覚えてたんだぁ。ま、そういうことなら私が貰ってくね!」


「ねぇ?せめてわたしの意識が無い時にその会話してよ!」


私は少女の要望通り意識を飛ばし、背負って彼と待機室へ戻る。


本当に尋問を任されるとは思わなかった。


寮に帰ったら色んな事を試して愉しむとしよう。


戻った後、Sランクの試合が終わるまでの間について話し合った。


「もう直ぐSランクの試合が始まるな。」


「紅蓮ちゃんが見たいって言ってたから、実際に見れる観客席の方に行っていいよぉ?私は待機室で、この子を監視しながら試合見るからさ。」


「そうするとしよう。そいつの所有者では無い俺が監視するのもおかしな話だしな。」


そう言い紅蓮は、少女を遊黎に任せて観客席へと向かった。


見送った後、少女が着ていた白いフードを巧みに利用し、少女の手や足を縛って拘束する遊黎。


「はい、かんりょー。案外幼い見た目してるなぁ。全体的に華奢だし。ま、そんなこと今はどうでもいいや!試合見る時は、この子を隣に座らせながら見ようかなぁ。」


遊黎が色々な事をしている一方で、紅蓮は向かいながら、過去に斬反が櫻舞遙について話していた事を思い出していた。


(斬反はどんな事を言っていた…?)


俺が思い出した情報を、簡単にまとめるとこんな感じだ。

・斬反と櫻舞遙は、幼馴染で仲が良かった

・櫻舞流剣術を扱う

・櫻舞流剣術と彼岸流剣術は、どちらとも代々続いている剣術

・能力者

大雑把だが、このくらいで十分だろう。


「そもそも、観客席が空いてるとは限らないか。」


観客席に着いた紅蓮は、空いてる席がないか辺りを見渡す。


通路側の席が空いていることに気付き、隣の席に座ってもいいか尋ねる。


「悪い、座ってもいいか?(まぁ、無理と言われても座るつもりだが。)」


「別にいいよ〜?だって、紅蓮だもん。」


俺は聞き覚えがある声がして、隣の奴の顔を見る。


隣に居たのは───斬反だった。


「何で此処に居るんだ?」


「知り合いの試合は寮からじゃなくて、実際に見たいじゃん?」


「そうか?」


何処か遠くを見ながら言う斬反を、横目に見る紅蓮。


アナウンスが流れ、戦場に生徒が現れる。


「あれが、櫻舞遙か。」


「あれとか言わないでよ〜。僕の幼馴染なんだからさ。」


学園だというのに制服では無く、着物の姿。


相手を見つめる真剣な瞳。


そして目を見張るのは、腰に携えている刀だろう。


まさに“武”に重きを置いている。


「おっ、開始の合図だね〜。紅蓮、しっかり見とくといいよ。」


「無論だ。今後、戦闘になるかもしれないからな。」


最初の試合は神禍学園と冥耀学園によるものだった。


Sランクともなると会場に及ぼす影響は大きく、申し訳程度の防御壁がメキメキと悲鳴を上げる。


しかしその音は、放たれた一太刀によって止んだ。


『Sランク戦、第一試合。勝者──神禍学園Sランク代表“櫻舞 遙”および──』


「抜刀するだけで、敵諸共吹き飛ばしたか。」


「ただの抜刀じゃなくて、ちゃんと能力も使ってるよ。」


「だろうな。櫻舞遙という人物は本当にSランクか?他のSランクと比べても圧倒的だと思うが。」


同ランクを一太刀で終わらせている時点で、力の差など歴然だ。


相手は櫻舞遙の引き立て役なのかと思えてしまう程に。


「どうなんだろうね。僕も遙は、SSSランクなのかと思ったんだけど…。」


「こんなに差が激しいとなると、この後の試合も同じ光景しかないだろう。」


紅蓮の予想は正しかった。


櫻舞の刃は止まる事を知らず、全てをその一振りで薙ぎ払っていった。


その後、全ての試合が終わると、遊黎を迎えに行く為に待機室へと向かう紅蓮。


「他のSランクの情報収集もしたかったが、出来たのは櫻舞遙のみか。(傍から見た、なろう系の無双はあんな感じか。)」


「そうだね〜。無双って言葉も生温い程だったし、仕方ないね。」


「何故、出場者でないお前が待機室方面に来ているんだ?」


「ま、大丈夫でしょ!僕、SSSランクだし。…ん?あれは…」


俺と斬反が歩いていると、前から先の試合で飽きる程見た着物の姿の生徒がこっちに走って来ていた。


だが、そいつは試合で見た時とは何かが違う。


それはまるで、別人のような雰囲気を纏っていた。


「あっ!斬反〜!」


「遙!試合全部良かったよ〜!また練度上げたね〜!」


「そうか!そうか!…ええと、隣の人は───」


櫻舞は斬反から視線を外して紅蓮を見ると、目をぱちくりとさせ、黙り込んだ。


「貴方は…鏖覇紅蓮だったか?」


「そうだが、何だ?」


「鏖覇殿、貴方の事は斬反から聞いていたよ。『幼馴染に能力者に勝る無能力者が居る』と。」


「そうか。」


「私も最初は疑っていた。だが、試合での戦闘によって証明させられたよ。是非、いつか手合わせ願いたい。」


櫻舞は胸の前で拳を握りながらそう言って来る。


俺が返答する前に、もう一人の神禍学園Sランク代表生徒が後ろから櫻舞を呼んだ。


「呼ばれたから、またね!斬反!それと鏖覇殿!」


「またね!…遙。」


斬反はいつも通り笑みを浮かべ、櫻舞に手を振る。


しかし紅蓮には、哀しい表情をしているように見えた。


「何故、そんな哀しい顔をしている?」


「っ!?…ん?何でも無いよ〜。」


「…ところで斬反、櫻舞に俺の邪魔になるような事を言ってないだろうな?」


「うぇ?言うわけ無いじゃん!能力至上主義を壊す邪魔をするって事は、紅蓮だけじゃ無くて僕の邪魔もしてるって事になるんだし。」


櫻舞との会話を終えた紅蓮達は、話しながら再び歩き始める。


会話内容の殆どは、白いフードの奴らについてばかりだった。


歩き始めてから数分後、待機室に着き扉を開ける。


室内に広がる光景に、紅蓮は疑問を浮かべた。


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