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《頂華決戦》開幕

遊黎との戦闘から数日後、寮の帰路についている時に考えていた。


「次に控えている行事は、学園都市全体で行われる《頂華決戦(クラウン・バトル)》だったか。」


試験を除いた一学期最後のイベント。


ということは、このイベントが終われば夏休みまで試験しか無いということだ。


…いくら何でも詰め込み過ぎなのではないかと思ってしまう。


《頂華決戦》は学園都市の中央に設けられた巨大なエリアで行われる、学園のランク代表生徒らが戦い競い合う行事…なのだが、面倒なことに俺と遊黎がCランクの代表生徒に選ばれてしまった。


選ばれたのは、交流戦を勝ち抜いたからだろう。


担任が交流戦をしたのは、このためだったらしい。


怪しいと思っていたが…してやられた。


「まぁ他学園の勢力を知れるのはでかい…か。」


「貴方が代表に選ばれたんだ、紅蓮?」


突然後ろから刹那の声がしたので、振り向こうとした。


が、振り向かなかった。


理由は単純だ。刹那は、もう前にいるのだから。


「あれっ?何で後ろ向かないのよ〜?ちょっかいかけようとしたのに〜。」


「完全に振り向いてから前に来ればいいだろ。」


「はぁ〜、まぁいいや。私から言えることは、代表戦頑張って!ぐらいかなぁ。SSSランクの生徒は寮から見ているだけだし。」


「SSSランクは参加しないのか。」


「しないよ?なんかSSSランクは、格が違うらしいんだよね〜。SSランクがない理由も、SとSSSの間に絶対的な壁があるからとか何だとか。」


SSSランクは参加しない、ということは代表戦はSランクまでしか戦わないのか。


確かにSSランクはなかったが、そんな理由があったとは。


至上主義を壊すなら、他学園のSSSランクの奴らもいずれ戦闘しなければいけなくなるかもと思い、少しでも情報収集をしたかったが仕方ない、追々やるとしよう。


刹那が手を振って去っていったのを見送り、再び歩き出す。


空は茜色に染まり、建物の影が長く伸びていた。


「『至上主義を壊す』…か。いずれ、成し遂げてみせよう。」



──《頂華決戦》当日。


紅蓮と遊黎は会場である中央エリアに向かっていた。


途中、遊黎が謎の宣言をしたのだが、それは遊黎の今後全てに関わる宣言だった。


中央エリアは、戦闘用にカスタマイズされた特別なフィールドで構成されており、大型イベントなどは大体ここで行われる。

分かりやすく言うなら、競技場だろうか。


「やっと着いたね。バスでも結構かかるってどれだけこの学園都市は大きいんだろうね。紅蓮ちゃん?」


「全くだ。俺が本気で走った方が速い。」


遊黎が笑いながら歩く足取りとは対照的に、紅蓮は黙々と会場に備えられている待機室へと歩いていく。


「此処が待機室か。」


黎明学園のCランク待機室──学園ごとに区別されているのは分かるが、ランクすらも区別されているとは思わなかった。


入室して数十分後、壁にあるスピーカーから青年の厳格な雰囲気を纏った声が響く。


『──これより、《頂華決戦》を開始する。私は学園都市評議会会長“査定者”見鑑(みかがみ) (とおる)。貴様らの“実力”を正しく見極めるために、ここにいる』


まるで、神が下した審判のような言葉。


『これはただの行事ではない。この戦いは、全学園、そして中央評議会にも伝えられる。選ばれし代表たちよ。戦え。そして、証明しろ。“お前の存在価値”を──』


──宣戦布告のような開幕宣言だった。


しかし、まるでランクが変わる可能性があるような言い方をしていたことが気がかりだ。


もし、SSSランクになることで能力至上主義を壊せることに近づくのなら記憶に留めておこう。


いや、別にそんなことしなくてもいい。


俺は俺のやり方でやるだけなのだから。


(学園都市評議会……か。場合によっては、邪魔な存在となるかもしれない。)


宣言が終わり、参加生徒の概要が室内にあるモニターの画面に表示される。


モニターに映っている神禍学園のSランク代表生徒“櫻舞(さくらまい) (はるか)”という名前に紅蓮は聞き覚えがあった。


(あの名前……過去に斬反から聞いたことがあったな。)


記憶を探っていると、アナウンスが流れた。


『Cランク戦、第一試合。黎明学園Cランク代表、“鏖覇 紅蓮”および“天楽 遊黎”。対するは、冥耀学園Cランク代表、“黒川 陣”および“塔越 静流”。』


「一番手かぁ。あはっ!行こっか〜紅蓮ちゃん!」


「あぁ。」


アナウンスに従い、俺と遊黎は待機室を離れて戦場へと向かう。


入場ゲートを抜け、俺らの姿が見えたのと同時に、観客席の一部がざわついた。


能力なしで学園に入学した少年──すでに噂は、他学園にも広がっていたらしい。


「…なんだよ、あいつが紅蓮か。無能力ってマジかよ?」

「隣の女は不憫だよな。能力なしと一緒なんて。」

「どうせ話題作りのための演出だろ?観客受け狙いってやつさ。」

「けど、代表に選ばれてるってことはそれなりに実力があるってことかなぁ。」


(観客は言いたい放題ってところか。)


無数の視線がこちらに突き刺さる中、紅蓮は無感情に群衆を一瞥し、静かに目を閉じる。


「おやおや、キミたちが噂の“異質”組か。…いや、異質なのは君だけだったかな?」


悠然と話しかけて来たのは、黒い制服に金色のペンダントを身につけている少年。


「改めまして、冥耀学園二年生の黒川 陣だ。宜しく頼むよ。…ただ、無能力者と一緒のランクというのは実に不愉快なものだなぁ。そうは思わないかな?隣のお嬢さん?」


「そうかな?逆に面白そうじゃない?」


遊黎が愉しそうにしながら返す。

黒川を見つめるその目は、まるで『その程度の観察眼か』と嘲るようだった。


「ど、どうも。手加減してもらえたら嬉しいな。(無能力者だから手加減も何もないけどね。)」


一方、黒川とは対照的な性格をしている塔越が辿々しく話しかけてくる。


「随分と噛ませ役にピッタリな奴らがいたもんだな。」


無表情で相手を煽る紅蓮をよそに、試合開始の合図が鳴る。


「遊黎はどっちと相手したい?」


「ん〜じゃああっち、黒なんとかって方。」


「わかった。俺は猫被り野郎をやる。」


「黒川だ!/誰が猫被り野郎だ!」


俺は、“猫被り野郎”こと塔越静流の相手をすることになった。


塔越が右手を掲げると、空間が歪んだ。


その歪みの中から、銀色のナイフが次々と顔を出す。


──十本、二十本、いや、三十以上か。


それらが、まるで指示を待っていたかのように一斉に放たれた。


「確かに、Cランクに相応しい能力だな。」


紅蓮は、弾道を全て予測し向かっていくと、最初に飛んできたナイフの先端を下に弾き、向きを変えて手に取る。


手に取ったナイフで、残りの放たれたナイフを点と線を繋ぐように全て弾き飛ばした。


「はぁ!?何だそれ!?こんのっ化け物がっ!」


鳩が豆鉄砲を食ったような顔して叫んでいるが、化けの皮が剥がれていることを忘れているのだろうか。


「これくらい動体視力が良ければ、誰にだって出来る。」


「無能力者のくせに!生意気なんだよ!」


ナイフの一群を弾いたのも束の間、背後からもう一群が現れた。


俺は、背後の飛んでくるナイフよりも速く動き、体勢を立て直す。


過去の物語にこんなやつがいた気がしたが、確証はない。


いい戦術──だが、当たるわけがない。


もう“経験”してるのだから。


「その無能力者に負けてるお前は、それ以上に生意気ということになるが。」


「黙れよ!何でこうなった…?い、いつもなら…」


紅蓮は瞬時に塔越の前に移動し、腹に一発殴る。


気絶したようで、倒れ込んでから起き上がってこなかった。


「遊黎、そっちはどうだ。」


「もう終わってるよ〜だ!もっと愉しめると思ったんだけどなぁ。期待外れだったかも。」


口を尖らせて言った遊黎の後ろには、呻き声一つ上げれずに倒れている黒川の姿があった。


額を見てみると、殴打と蹴りの跡がついている。

どうやら、連続する痛みに耐えられなかったらしい。


「宣言通り、能力は使わなかったみたいだな。」


──そう、向かう時にした遊黎の宣言とは、『能力を“あまり”使わない』という能力世界においてあり得ないことである。


『貴方の観ている景色がどういうものなのか気になった。』と言っていたことから、好奇心と戦闘をさらに愉しむためにやっているのだろう。


愉悦に忠実な奴らしい考えだ。


「なんだよこれ…。」

「無能力者が…」

「勝った!?」


観客はどうやらこの状況が飲み込めないようで、暫く黙り込んでいた。


だが、一人が拍手を始めると、それは波紋のように広がり──やがて歓声と響めきがコロシアム全体を包む。


『Cランク戦、第一試合。勝者──黎明学園Cランク代表“鏖覇 紅蓮”および“天楽 遊黎”。』


査定者の淡々とした声が響くと、観客は大盛り上がりだった。


賞賛の声、驚愕の声、様々な反応が見られたが、俺はそんなあからさまな手のひら返しを見ていられない。


「人間は、手のひら返しが上手いな。」


「そうだねぇ。」


その後、次の試合まで遊黎とは別々に行動することにした。


俺は少しの間、コロシアム内を散策していた。


その最中、ついさっき戦った相手──塔越静流に話しかけられた。


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