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無慈悲なBランクと理不尽なSSSランク


最初はただの体術勝負だったのが、段々と変わっていく。


少年は多種多様な能力を使い、攻撃を仕掛けるようになった。


それに対して遊黎は、限りなくこの状況を愉しむ為に、能力など使わずに悉く体術で相殺する。


「あはっ!愉しいねぇ!」


「こんなに色々な能力を使ってるのに、効いてない…。なんで?そういう能力?」


「どうだろうねぇ?てかさ、貴方も大概だと思うけど。」


私が一番気になったのは、その能力の多さ。


戦闘の中で見た限り、既に十個以上の能力を使っている。


能力の複数持ちは聞いた事あるけど、流石にこんな多く持ってるのは聞いた事ない。


この子が特別なだけかな?


何にせよ、普通じゃない。


ま、味の種類が増えたとでも思っておこう。


「因みに、()()能力使ってないよ?」


「わーふせーだー。ほんとに人間?」


「それ、すごいブーメランだからね?確か、ベルゼちゃん…だっけ?」


「なんで…名前…。」


遊黎の言葉に少年───ベルゼは、目を見開く。


しかし、その表情の変化は一瞬で元に戻った。


ベルゼは一呼吸すると、複数ある能力の内の二つ“念力”と“煙幕”を使い、視界を遮りながら散らばった瓦礫を遊黎に向かって投げる。


(へぇ?視界を奪って攻撃かぁ、面白い事すんじゃ〜ん!)


(さっさと終わらせて、ベルフェのところにいこー。)


ベルゼの作戦は、投げた瓦礫と自分で挟み撃ちにする事だったが、これには重大な欠点があった。


それは───()()()()()()()()()()()()()()()()である。


早くベルフェのところへ向かおうとした為、それに気付かなかったのだ。 


だからこそ、ベルゼの攻撃は遊黎に当たらず、空を切る。


「学ばないなぁ。あの時に何で攻撃を受けたのか、理解してなかったの?」


「横っ!」


ベルゼは、声が聞こえた方向に攻撃をしようとしたが、もう遅かった。


煙幕の中、遊黎の蹴りが横腹に食い込む。


「うっ!!!」


「あはっ!ビーンゴォ!」


私は当たる感触がすると、そのまま思いっ切り蹴っ飛ばした。


本当だったら、ベルゼちゃんの攻撃は当たっていたんだろうなぁ。


───私が能力を使っていなければ、だけどっ♪


私は、紅蓮ちゃんともう一人の青年が話し合っていた時から、能力を使用していた。


紅蓮ちゃん以外、気付かなかったけど。


「うっ…。そーてーがいだな…。」


周りの障害物に身体を叩き付けられ、ゲホゲホと咳が出てしまう。


前を見れば、煙幕の中から姿を現す、こっちを嗤いながら見つめている少女。


その時、僕は気付いた。


…気付いてしまった。


早く戦い終わらせたかったのは、ベルフェのところに向かおうとしたのではない。


その圧倒的な洞察力と不気味さから、この少女から離れたかったのかもしれない…と。


「あはは…。やっぱり、人間じゃないじゃん。うそーつきーってやつだ。」


「いや、人間だよ?逆に、こぉんなに人間らしい人間、他に居ないと思う!」


「自分の事をまともと思い込んでいる奴程、やばかったりするんだけどなー。」


溜息をつきながら、再び戦闘する為に立とうとするベルゼ。


その時、遊黎の背後を横切るように、何かが吹き飛んでくるのが見えた。


ベルゼは、それが何か一瞬で気付く。


「ばけ…もんがっ!」


「案外、耐えるもんだな。」


「ベルフェだー!」


「あはっ!此処からは2on2(タッグ戦)だね!」


遊黎は愉しそうに言うと、急加速してベルゼに近づく。


辛うじて反応し、防御は出来たベルゼ。


しかし、ただそれだけであり、再び蹴り飛ばされてしまう。


(動きが速過ぎて、反撃出来なーい!)


「ねぇ?そんな無防備な格好を晒して…大丈夫?追撃されないとでも思ってるのかなぁ?」


「何処から…!」


私はベルゼちゃんの身体を、地面に叩き付けるようにして殴る。


さっきからベルゼちゃんは、防御だけしかしてこない。


これじゃあ、一方的にボコボコにしてるだけじゃん!


なんか、つまんないなぁ〜?


あ、そうだ!


私は、紅蓮ちゃんの方を見て言う。


「ねぇ!紅蓮ちゃん!相手交換しない?」


「別に構わないが、余所見しない方がいいぞ。」


「へぇ?」


遊黎が一瞬だけ紅蓮の方を見た隙に、体勢を立て直し、蹴りを放つベルゼ。


遊黎は、防御出来なかった───いや、しなかったという方が正しく、この世界の法則に則って吹き飛んで行った。


その後、ベルゼはベルフェを連れて、その場から逃げる。


その様子を紅蓮は、攻撃な妨害などせず、ただ見届けているだけだった。


何故なら、気付いていたのだ。


逃げた先に、丁度こちらに向かって来ている()()()()()が居る事に。


それが意味するのは、ただ死に方が変わるだけ。


“無慈悲な殴殺"か、それとも“理不尽な鏖殺"か。


そのどちらかである。


───


「一旦引いて正解だな。てか、変化させた奴らからの情報は?!」


「分かんない。戦闘する前から音沙汰なしー。」


「はぁ!?」


そんな馬鹿な。


あれだけの人数を変化させて、何も情報が無いってどういう事だ?


少しぐらいは、情報があるはず…。


まさか、コイツら以外にも誰かが居る?


そう考えていると後ろから声がして、突然身体が動かなくなる。


「君達が、この騒動の原因かい?」


「聞くまでもないわ。だって、紅蓮達が居る方向から来たもの。間違いない。」


「逃げた先にまた敵…ぴーんち。」


「…そういう事か!あいつが逃げる時にこっちを傍観してたのは、コイツらが居たからか…!」


動けないベルフェに、堂々と近づいて行く刹那。


そして通り過ぎた瞬間、ベルフェの鎖骨から腰まで斜め一直線に血が溢れ出す。


ベルフェは、突然の事で理解が追いつかず、意識が朦朧とする中で力無く倒れた。


その不可思議な出来事を見ていたベルゼは、いつの間にか足元に彼岸花が咲いている事に気付く。


こんな場所に彼岸花なんて、咲くはず無い。


そう考えた時には既に遅く、何かに斬られたかのように首から止め処なく血が飛び散る。


「あ、ぇ…?」


僕は思わず、咄嗟に首を抑えてしまう。


無意識の行動だった。


しかし、止まらない。


止まる気配が、しない。


もはや本当はただの幻覚で、血なんて出ていないのかもしれないとも考え、首から手を離して確認する。


───手の平が赤い。


つまり、幻覚なんかじゃなくて。


僕は、地面が自分の血で染まって行くのを見ながら、その場に崩れ落ちた。


「呆気な。」


「そりゃそうでしょ。行動が不可能な状態で、一方的に攻撃しただけだから、無理もないよ。…とは言っても、動けたとして結果は変わらないけどね。」


そう言いながら、刃に付着した血を払う斬反。


刀を鞘を納めると、倒れた二人が本当に意識がないか確認する。


一方刹那は、出た血を操作し二人の体内に戻していく。


完全に戻し終わると、今度は血の循環を加速させ、自己能力を高めて傷を治していく。


「意識がないと、操るのが楽で助かるわ。」


「半吸血鬼ってのは種族として最強格だよね〜。」


「安心しなさい。他の血も操れるのは私だけよ。それに、自我が強いと少ししか操れないし。」


その後、一通り終わったのか身体を伸ばす刹那。


後は、紅蓮達を待つだけ。


流石にあんな騒ぎが起きた以上、人は残っていないと思うが、念の為、周囲を警戒しておこう。


まぁ、いざとなったら能力を使えばいい。


そう思い、いつでも抜刀出来るよう、鞘に手を当てて待機する。


数分後、特に異常も無く紅蓮達と合流した。


遊黎は二人が倒されていた事に、口を尖らせながら不満を漏らす。


だがそれよりも、まるで戦闘をしていなかったように、傷一つ無い状態で倒れているのかについて疑問を持たないのだろうか。


服だけボロボロで傷だけ付いてないのは、どう考えても怪しい筈だ。


…取り敢えず、話を進めるか。


「で、どうする?残り日数結構あるけど。報告の為に早く帰るかい?」


「いや、俺達が情報を確保してからでいい。報告する内容も必要な事だけで済む。何より、学園よりも先手を打てるからな。」


「そうしましょう。」


「はーい。」


私達は、適当な近くのホテルの一室に移動する。


この時には、既にベルゼちゃん達に対して、興味なんて消えていた。


私が考えていたのは、ただ一つ。


「居世ちゃん達は、大丈夫かなぁ?」


───


「ちょっと!何で服が脱ぎっぱなしなのよ!」


「お、お姉ちゃん…!」


「え〜?私じゃ無いですよ?」


パソコンをカタカタいじりながら、首を振る奴隷ちゃん。


戀は脱ぎ捨てられた服を掴み、確認してみろと言わんばかりに近づける。


「そんなわけないじゃない!これよ?これ!」


「だから〜本当に私じゃ無いですってぇ〜!」


「だって、サイズが───」


「お姉ちゃん!!!!!」


私は、恥ずかしかった。


だってその犯人は、私だったから。


事を大きくしないよう、最初に反応したのに。


お姉ちゃんの、私への信用が裏目に出た結果がこれだ。


…というより、お姉ちゃんは忘れている。


この三人は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()事を。


だからサイズは、その人である理由にならない。


ただ、ちょっとデザートを先に食べたいから、脱ぎ捨てただけなのに。


まさか、それを忘れるなんて…。


てか、遊黎さんはいつ帰ってくるのだろう。


住まわせてもらってる身だから、料理を練習したんだけど、帰ってきたら食べてほしいな。


おっと、こんな事を考えてる場合じゃないや。


後始末をしないとっ!


「そ、それ、私のなんだよね…。」


「え?ほんとに?」


「だから言ったじゃないですか〜!私じゃないよって!」


「それは、え〜と、ごめんなさい!」


───


特に何の変哲もない一室にて、俺は───いや、正確に言うなら俺とベルゼは、目覚めた。


「目覚めたか。では、尋問といこう。」


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