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E.D.E.Nの結成の理由


紅蓮は全身に力を込めて、そこへ落ちる。


地面に触れた瞬間、凄まじい衝撃波が辺りを伝う。


突然のことで集団は焦っているようで、騒がしかった。


「な、何が起きたの!?」


「わ、分かりません!ただ、空から何か落ちてきました!」


「身体は…無事だな。」


俺は直ぐに立ち、驚いているE.D.E.Nなど、どうでもいいとばかりに無視して、居世を探す。


思った以上に衝撃波が強かったのか、殆どが壊滅状態と化していた。


「此処にいたのか。おい、起きろ。」


「はっ!?わ、私は確か…あれ?なんで此処にいるんだろ?遊黎さんの寮に帰ってたはずなのに…。」


ブンブンと首を振り、周囲を見る居世。


紅蓮は、いつもの頑張って作っている冷静な顔はどうしたと心の中で思い、目を細める。


「貴方…何者よ!」


「待って!お姉ちゃん!この人は───」


「お前、居世の姉か。なら、妹の話を冷静に聞かない、破天荒な姉だな。」


飛び込むようにして、俺の頭に触れようと片腕を伸ばして来る居世の姉。


俺は、伸ばしてきた片腕を瞬時に掴んで後ろに回る。


そして、もう片方の腕も掴み取り、そのまま頭上に上げてそこら辺の大木に押しつけた。


「ちょっと、何処触ってんのよ!」


「何処って、手首だが。それより居世、学園に戻るぞ。コイツを連れて。」


「え?は、はい!…ん?お姉ちゃんを連れて!?」


ギャーギャー騒ぐ居世の姉と居世を担いで、地面を蹴る。


先ほどの落下中に、学園都市の場所は把握済みだ。


居世の姉以外のE.D.E.Nは…まぁ、放置でいいだろう。


今回の目的は、居世の回収だからな。


それに居世を起こした反応を見る感じ、何かがあって捕まったわけじゃなく、ただ捕まっただけのようだからな。


「え…ここ、空中?はわ…。」


「なんだ?急に大人しくなったが。」


「あはは…お姉ちゃんは、高いところが物凄く苦手なんですよ。」


何から何まで正反対の姉妹をつれて、学園都市に向かう紅蓮だった。


そして、場面は遊黎に戻る。


「よっと!どうしたのぉ?全然当たらないけど?」


「ちょこまかと、鬱陶しいな。」


「あはっ!」


正直に言ってしまえば、“ヌルゲー”だった。


いくら空間転移とはいえ、ラグはある。


私が戦ったバグった存在である“鏖覇紅蓮”に比べれば、こんな奴は大したことなかった。


最近、ずっと紅蓮ちゃんを比較対象にしてしまっている気がする。


ま、仕方ないよねっ!


「もう、愉しくないかも〜!」


「は?」


相手が転移した瞬間に足を蹴り、重心を崩させる。


そして、流れで腹に蹴り込み、吹き飛ばす。


「うごぁ!?」


「あっ!強くやり過ぎて、壁を壊して外まで行っちゃった!」


───


な、何が…起きた?


腹を蹴られてから、記憶が失くなっている。


とりあえず、現状を把握しなければ。


「は、早く状況整理を…がはっ!?」


「おい。さっさと起きろクソ野郎。“私の紅蓮”を何処へやった?惚けなくていい。お前がやったことは分かっている。答えろ。早く。」


「あぁ〜刹那ちゃ──っ?!(殺気やっばぁ!?首絞めちゃってるしぃ。何より、眼が本気なんだよねぇ。く、空気が重いや…。お願いだからこっちに八つ当たりしてこないでよぉ〜?)」


殺気が強過ぎて、近づけない遊黎と今にも締め殺してしまいそうな刹那。


その頃、学園都市に向かっていた紅蓮は───小休憩をしていた。


「オロロロッ!」


「学園都市との距離を確認するために等間隔で飛んでいたが、やめにするか。数回毎にこのフェーズになるのは、厄介だからな。」


「大丈夫?お姉ちゃん?」


居世は姉の背中を摩りながら落ち着かせている。


しかし、こうしてみると姉妹なのに“見た目”に整合性がない。


少し、聞いてみるか。


「なぁ、お前ら。“本当の姉妹”じゃないだろ。」


「!?ゲホッゲホッ!」


「あぁ!お姉ちゃん、無理しないで!説明は私がするから。───紅蓮さんの言ってることは正解です。私たちは本当の姉妹じゃない。言うなれば、“E.D.E.Nの中で出来た偽りの姉妹”ってことです。」


居世は姉を見つめながら悲しげに、だけどどこか誇りを持っているかのように話した。


それを聞いて紅蓮は、深掘りはせずただ「そうか。」と溢すだけだった。


居世の姉の嘔吐から数分後、紅蓮は弱っている居世の姉はお姫様抱っこを、元気な居世はおんぶをして学園都市に向かった。


「これは妹の頼みだから、従ってやってるだけよ!」


「ごめんね紅蓮さん。…あれ?お姉ちゃんを連れて行くって言ったのは、紅蓮さんであって私ではないから───謝る必要なかったんじゃ?」


「居世は姉の前だと、随分とお喋りになるんだな。」


恥ずかしそうにギュッと抱きつく居世。


俺は遊黎のこともあって、一段と向かう速度を上げた。


その際、居世の叫び声が聞こえた気がしたが、恐らく気のせいだろう。


「更に速度を上げる。居世は振り落とされないようにしろ。」


「ここから、速くなるんですか!?ちょ、ちょっと待───」


居世の言葉を無視して、速度を上げる紅蓮。


走ること数十分後、学園に着いたが、見た光景は紅蓮の予想を遥かに超えていた。


「何をやっている?」


「あっ!ねぇ、紅蓮ちゃん帰ってきたよ!刹那ちゃん!だから、ほら!ね?とりあえず、首を離そうか!」


「なぁに遊黎?いま取り込み中なんだけど?あ・と・に・し・て?」


見て分かるほどの殺気を出している刹那が、チラッと遊黎の方を見ると二人の少女を抱えた紅蓮を発見し、フリーズしたかのように止まる。


そして、掴んでいた首を離す───かと思われたが、そのままどこかに吹っ飛ばし紅蓮に抱きつく。


「よかったぁ〜。紅蓮?心配したんだよ?……ところで、おんぶしているのは居世ちゃんだよね?じゃあ、そのお姫様抱っこしているのはだぁれ?」


「こいつは、居世の姉だ。だからなんとなく連れてきた。」


「何はともあれ、本当に無事でよかったぁ!」


刹那は遊黎達が居ることを忘れて、楽しげに会話をする。


一方遊黎は、居世達の体調確認をしていたようで、居世の姉は寝ていて、居世は目をぐるぐるさせて疲労困憊と言った感じらしかった。


「遊黎。情報整理をするぞ。」


「おっけ〜!そうと決まったら、早く移動しなくちゃ!」


外に居た為、先程の休憩室に移動したのだが、気が付いてしまった。


他の者が居ない事に。


他の奴らは何処に行った?


まさか、全員空間転移されたのだろうか。


それとも───


「じゃあ、情報整理といこうか!」


「あぁ。」


紅蓮は転移させられた後の事から、今に至るまでの事を伝え、それに対して遊黎は、紅蓮が居なくなってからの事を話した。


「後は…居世の姉とその男子生徒から情報を吐いてもらうぞ。」


「この身は、E.D.E.Nの為に!」


「そうさせると思うか?」


刹那によって作られた血の鎖で縛られている男子生徒が、舌を噛み切って自害しようとしたので、そこら辺のものを口に突っ込んで防ぐ。


舌を噛み切って情報の漏洩を防ぐのは定番だ。


だから、逆にそれを防いでやる。


「コイツから聞くのは、後回しだ。先に、居世の姉から話してもらおうか。」


「な、何よ!貴方達に話す事なんてないわよ!」


「…ねぇ、お姉ちゃん。私の知らないE.D.E.Nの事、話して…くれる?」


「私が知っているのは───」


上目遣いで姉に頼み込む居世。


それを見て、一瞬の迷いもなく答えたその姉。


この瞬間、紅蓮達は同じ事を思っただろう。


この姉、妹に弱過ぎやしないかと。


「へぇ〜?E.D.E.Nってのは、“神に能力を返す為”にあるんだぁ。なんか案外、薄っぺらいんだねぇ。」


「神に能力を返す為…だとしたら、どうやって返すつもりだ?」


「ねぇ紅蓮?多分なんだけど、死亡する事で神に能力を返しているんだと思う。だって、さっき私から紅蓮を奪ったクソ野郎も自害しようとしてたじゃない?」


刹那の言っていることは一理ある。


ただそれだと、死ぬ事で返せると何故確証が持てるのか、という別の疑問が出て来てしまう。


“神に能力を返す”…刹那の理論を基に考えると、これは能力者を殺す建前ではなかろうか。


今のままでは根拠が薄い為、あくまで憶測だがな。


それと、返し方についても気になったが、俺が最も気になっていたのは、何故その理論に至ったのかだった。


この能力至上主義に、嫌気が差したのだろうか。


仮にそうだとしたら、ランク制度によって虐げられていた者が首謀者の可能性が高い。


でなければ、こんな行動はしない。


俺達みたいなのは、除いてな。


だが、そういう事で結成されたのなら───などと同情する事はない。


その理論がどうであれ、俺の邪魔をしたのだから。


組織自体は壊すだけだ。


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