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第5話 世界征服…?

 「世界征服って、できると思うか?」




 予想外の質問に驚く。社長は新聞を見つめたままだ。




 「世界征服、ですか…?」




 あまりにも現実的ではない質問に、どの角度から返答すればよいのか困る。


 世界征服…


 この世界をすべて掌握すること…


 思うままにすること…




 「…できるんじゃないでしょうか?」


 「ん?」




 本日初めて、社長と目が合う。私の倍くらいの年齢は行ってそうな風貌だが、その目は少年…いや、アイドルのように輝いていた。




 「過去の歴史をさかのぼってみても、いまだかつて世界征服をした人、もしくは国や組織は存在しないぞ。それでもか?」


 「カリスマ的な存在がいれば、不可能じゃないと思います」




 何も確信はない。正直、あまり考えていない発言だった。


 でも、そのくらい規模の多いことがあるほうが、面白いと思っただけだ。




 「…お前、バカだな」


 「えっ…」




 真剣に応えたにもかかわらず、急に梯子を外されてしまう。


 社長の読んでいる新聞をのぞき込むと、アメリカ大統領選の記事が書かれていた。そういえば、候補者の一人が「世界をすべてアメリカにする(All For America)」というキャッチコピーを使っていたのを見たことがある。つまり、そこから世界征服に話が繋がったということか。




 「悪の組織に世界征服されたら、お前は真っ先に死ぬタイプだな。ご愁傷さま」




 冗談なのか皮肉なのかわからないが、とりあえず社長を呆れさせたことだけはわかった。社長は両手を広げて伸びをしながら、今度は独り言のように「バカだなー」ともう一度言う。




 「これ、参考にしとけ」




 そういって渡してきたのは、一冊のスケジュール帳だった。社長のものにしては、少々可愛すぎる薄ピンク色をしている。手に受け取ってみると、ほのかに暖かかった。




 「これは?」


 「お前の前のマネージャーが置いていったものだ。プロデューサーとの接し方とか差し入れリストとか、なんか色々と細かく書かれているから、勉強になるだろ」







 仕事を終えて家に帰り、真っ先にスケジュール帳を開いた。前半のページはウィークリーで予定が書かれていて、後半はメモが書けるスペースにびっしりと文字が書いてあった。


 適当にページをめくっていくと、社長が言っていた「プロデューサーとの接し方」のメモ書きがあった。




<番組プロデューサーとの接し方>


①明るく笑顔で!


②新企画の話を聞く!


③メンバーの売り込みはしない!




 きれいで丁寧な字だ。会ったこともないのに、好感を持てる。


 しかし、「明るく元気で」と「新企画の話を聞く」はわかるけど、「メンバーの売り込みはしない」ってどういう意味だろう?


 メモスペースの最初のページから読んでいく。各メンバーの好きなもの、営業の方法、ライブの段取り…などなど。時々よくわからないことが書いてあるが、社長が言っていた通り、すごく勉強になる。


 時間が経つのも忘れて読みふけっていたら、気が付くと夜中の2時になっていた。“差し入れリスト”に入っている食べ物を調べるのに時間を使いすぎた。プライベートでも今度買ってみよう。明日は朝からインタビューがあるから、早く寝ないと。


 スケジュール帳を閉じようとしたその時、ある文字が目に入ってきた。




“世界征服”




 まただ。


 社長と言い、前のマネージャーと言い、何なんだ、世界征服って。あの事務所の合言葉なのだろうか?トップアイドルを育てようという意気込みの比喩表現とか?




 まさか本当に、二人で企てていたとか…?





 …んなわけあるか。

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