桜の木の下で。
思いつきで書き殴ったショートショートです。初作品ということもあるので多めに見ていただけると嬉しいです。
「緋音ちゃーん!一緒に帰ろ!」
桜色の髪をした彼女…浅倉織桜ちゃんは私…南野緋音に屈託のない笑顔を向けながらそう言った。
「うん。いいよ、」
特に断る理由もなかった為承諾しては、帰る準備をささっと終わらせて一緒に教室を出る。彼女と私は高校1年生になり立てで、少しも汚れていないローファーに履き替えては校舎を出て、校門を出る。織桜ちゃんはこの春この街にやって来たらしいけれど、そんな様子を微塵も見せずに…他愛のない話をしながら、お互いの帰路へ続く別れ道まで一緒に歩いた。
「じゃあまた明日ね、緋音ちゃん!」
大きな桜の木が咲き誇っているその別れ道で彼女はまた此方に笑顔を向ける。少しの陰りもない、自分には少し眩しすぎるほどの笑顔。
「うん、緋音ちゃん、また明日。」
織桜ちゃんにそう手を振っては、家に帰る。学校から出された宿題をやって、ご飯を食べて、ゲームをして、気がついたら23時でそろそろ寝なければと思ってお風呂に入り、寝る準備と明日の学校の準備をする。
何事もなく1日が終わって、何事もなく朝を迎えて。私は学校に行く準備を終えて、織桜ちゃんとの合流地点で彼女を待つ。暫くして彼女がやって来て、
「おはよう、緋音ちゃん!夢見た〜?」
「おはよう、織桜ちゃん。夢…うーん、眠りが深くてみてないかな。」
そう返せば、彼女が「そっか〜。」と言いながら歩き出したのを見て、私も彼女に遅れないよう歩き出す。
暫くして学校について、何事もなく終わり、また1日が終わって。
そんな毎日が続いて、夏には夏祭りに行って、まるで自分に降り注いでくるんじゃないかってくらい大きな花火を見て。
ハロウィンにはトリックオアトリートなんて言ってみたけど、お互いお菓子を持ってなくてお互いにいたずらしあって。
クリスマスにはお互いが喜びそうなプレゼントを贈って、元旦には一緒に初詣に行って。バレンタインには友チョコを贈りあって、ホワイトデーにはお返しをまた贈りあって。
そうして季節が一巡りして、また、桜が咲く春がやって来た。
ある日の放課後、織桜ちゃんは珍しく私を引き留めた。
「あ…緋音ちゃん、!!」
「?織桜ちゃん、どうしたの?」
「…話したいことが、あって。」
いつも私たちが別れる、あの大きな桜の木の下で。織桜ちゃんは私にそう告げた。
「桜の木の下には死体が埋まってること…緋音ちゃんなら知ってるよね。」
いや。知らなかった。初耳だったけど、口を挟めるような状況じゃなかった。
「私は…実は、幽霊なんだ。」
なら何で実体化して、足もあるんだろう…。まあ、一旦その不思議は保留にしておく。
「緋音ちゃんは覚えてないかもしれないけど、幼馴染だったの。」
いやばっちり覚えておりますとも。ええ。幼稚園の時に引っ越したよね。
「実は、この桜の木の下にある死体は……私の死体なの。」
それも知らなかった。初耳学。
「……もうすぐ、霊力がなくなっちゃうから…私は緋音ちゃんの元を去らなきゃ行けないの…」
何やら霊力というもので実体化していたらしい…ふむ、幽霊界ってなんだか面白そうだなって思ったけどやめておこう。
でも、織桜ちゃんが去るなんて嫌だなぁ……そう考えた私は咄嗟にこう言っていたのだった。
「なら私に憑けば?」
もし面白かったと思ってくださったのなら白いお星様を暗く塗りつぶしていただけると助かります…!!