28
―元冒険者 ガルガ視点―
正面に座ったルクスが小さく口を緩めたのが見えた。それに驚く。
「ガルガさん、どうしたんですか?」
隣に座ったミルフィを見る。そして首を横に振った。
もしかしたら見間違いかもしれない。ルクスが、あんな優しく笑うなんて。
もう一度ルクスに視線を向ける。いつもの無表情だ。いや、無表情に見えるが微かには感情が見える。ただ、もの凄くわかりにくいだけだ。
「やっぱり見間違いだったのか?」
いや、でもあれはたしかに笑っていたように見えた。チラッとルクスを見る。今の彼女からは全く想像できないな。うーん、やはり見間違いだったかもしれないな。
ルクスの隣に座っているバズを見る。最初に会った時とは違い、何かを期待しているような目をしている。それは隣に座っているミルフィも同じだ。
これまでずっと我慢してきた二人、これからどうなるかわからないが、後悔をしても笑える未来になればいい。その手助けぐらいならできるはずだ。
それにしても、不思議な縁だよな。
賢者に助けを求めに行って、ドラゴンに会って。バズを拾って。ミルフィが落ちて来て。全く関係なかった俺達が、冒険者でチームを組もうとしているんだから。
まさか国を捨て冒険者も辞めたのに、もう一度冒険者に登録しようと思うなんて。それが「幸せ」を探す旅の為に。人生は何が起こるかわからない。言葉はよく聞くけど、まさか自分が経験するとは。本当に面白い。こんな出会いが出来た俺は、幸運だよな。
三人を見る。そしてフッと笑顔になる。
「これからの旅が楽しみだ」
あれ? そういえば、冒険者登録の話はしたがチームを組む事は言ったかな? まぁ、いいか。そんな事は登録した時に話せば。
「出発しますよ」
御者の声が聞こえると、ゆっくり馬車が動き出した。
本日で「ドラゴンは幸せが分からない」は完成となります。
誤字脱字が沢山あったと思いますが、読んで頂きありがとうございます。
少しでも楽しんで頂けたなら嬉しいです。
私としては短い作品で、書きたい事をギュッと纏めるのが大変でした。
本作は2月28日 スターツ出版より単行本が発売されています。
助言などを頂き、色々追加しています。
こちらもどうぞよろしくお願いいたします。
ほのぼのる500




