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ドラゴンは幸せが分からない  作者: ほのぼのる500
目覚めと国を捨てた冒険者
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―ドラゴン ルクス視点―


 ガガガーン。

 ドンドンドン。

『……』

 耳障りな音に、意識が浮上する。

 なんの音だ? うるさい。

 ガガガガガガッ。

 ドドーン、ドドーン。

『攻撃! 上から焼き払え!』

『……ぅぅう~……うっ?』

 雑音にどんどんイラつきが高まる。誰だ? 我の眠りを邪魔するのは誰だ?

 ガツン。

 何かが体にふりかかる。

 あぁ、イラつく。

『んっ? ここは……』

 目を開けた瞬間、膨大な映像が頭の中に流れる。その量の多さに頭が割れそうに痛み、意識がはっきりする。そして、

『うわぁ~』

 激痛にのたうちまわる。

「なんだ? 大地が揺れている! ドラゴン部隊は上空から確認!」

『あぁあぁぁぁああ゛あ゛あぁぁぁぁ』

 いたい、いたい、いたい。

 この映像はなんだ? いったい、誰の記憶だ?

 車? バス? 飛行機? ロケット?

 見た事がない物なのに、それが何か分かる。

 それに王族? 孤児? 人間? エルフ? 獣人? 

 我はドラゴンとして生まれ、今までずっとドラゴンだった。それなのに、彼らとして生活してきた記憶がある。

 どうしてだ? 我に何が起こってる?

『あぁぁ……はぁ、はぁ』

 頭の中で流れていた映像が消えると、痛みが落ち着いて来る。

『何が起こったんだ? それに、ここは何処だ?』

 周りは暗く、冷たい場所。そして狭い。

『洞窟か?』

 夜目がきくので暗さは問題ない。でもこんな場所を我は知らな……いや、知っている場所だ。

『そうか。ここは、我が眠りについた洞窟だ』

 周りの事がすべて面倒に感じて、ずいぶん長く生きたし「もういいか」と死のうと思ったんだった。で、襲って来た者たちの前に無防備にこの姿を見せたんだが……奴らは弱すぎた。頑張って攻撃してくれたが、我に傷一つ付けられなかったからな。よくあれで「打倒ドラゴン」と叫んだものだな。

 しかも奴等はもの凄く、諦めが悪かった。そのせいで、つぎつぎと意味のない攻撃を受け、本当に苛立った。しかも我が死なない事に、勝手に焦り攻撃が増えた。そうだ。あれが続くと思ったら、本当に面倒で。それで眠ったんだった。眠っている間に殺されてもいいと思ったし。

『生きているなぁ。死ぬために、膨大な魔力を外に放出して自己治癒力を弱らせておいたのに』

 あれ? 眠る前より魔力量が、増えている。外に放出した魔力が眠っている間に補充され元に戻るのは分かるが、増えた原因はなんだろう?

 パラパラパラ。

『んっ?』

 何かが体に当たり視線を向けると、壁の一部が崩落していた。

『この洞窟は、もう限界のようだな』

 よく見れば、記憶の洞窟よりかなり狭くなっている。眠りについた時は、我が体を横たえてもまだ余裕があった。なのに今は、半分以上が崩れ落ちている。それだけ時間が経ったという事なのだろうな。

 ドドドドドドドーン

『……はぁ、眠る時も騒がしかったが。目覚めも騒がしいとは』

 ドドドーン。

 うるさい。とりあえず、何が起こっているのか確かめるか。

『……確かめるの……面倒だなぁ』

 ドドーン。

 ガガガガガガガッ。

「攻めろ! ドラゴン部隊は上からこの森を焼き払え! 地上部隊は敵を徹底的に殺せ!」

『あぁ、うるさい……もう一度眠るにしても、こううるさいと無理だな』

 ドドドドーン。

 ドドドドーン。

 ドドドドーン。

「はははっ、獣人共! お前たちはここで死ね! 一斉こうげ――」

 プチン。

『いい加減にしろや~』

 頭上の岩を頭で割りながら地上に出る。そして上空を飛ぶ何かに向かって、ブレスを吐く。

 空が一瞬、真っ赤に染まる。そして上空にいた何かは、すべて消えた。


 一瞬の静寂。


 あれ? ブレスの勢いが増してる。

「なんだ、あれは?」

「攻撃! 攻撃! あの化け物を殺せ!」

「敵だ! 殺せ!」

 あちこちから声が届く、しかも四方から攻撃がくる。先ほどの攻撃で少し落ち着いていた気持ちが再度苛立つ。その気持ちを表すように、尻尾をバタンと地面に叩きつける。

 ガタガタガタと揺れる大地。叫び声が悲鳴に変わった。

『ちっ。相変わらず、うるさいな』

 空に飛び立ち、地上を見下ろす。

『あれは? ゴーレム?』

 視線の先には巨大なゴーレムが数十体。その巨大なゴーレムの前には、岩で作られた大きな壁があった。

『壁を壊していたのか?』

 巨大なゴーレムの前にある岩の壁が、ところどころ崩壊している。ゴーレムが破壊した痕だろう。

『ゴーレムに指示を出しているのは人間か』

 巨大なゴーレムに向かって叫ぶ人間が見えた。興味が湧き見ていると、一体のゴーレムが我に向かって飛び跳ね手を伸ばす。

『鬱陶しいな』 

 我に手を伸ばす巨大なゴーレムに向かってブレスを吐く。

 我のブレスで、地上が真っ赤な炎の包まれる。しばらくして炎が消えると、数十体の巨大なゴーレムも壁も、そして人間も消えていた。

『ふん』

 風に乗って空を飛ぶ。久しぶりに飛ぶ空は、気持ちがいい。

『そういえば、眠りにつく前から空を飛んでいなかったな。どうしてだったっけ?』

 眠る前の事をゆっくりと思い出す。

 あぁ、そうだ。仲間のドラゴンがこの世界から去り暫くすると、ドラゴンの存在も忘れ去られてしまった。そんな状態で空を飛ぶと、人間や獣人がうるさく騒ぐから飛ばなくなったんだった。

『もったいない事をした』

 空を飛ぶのは、これほど気持ちがいいのに。

『んっ?』

 腹に何かが当たった。当たったと言っても、鱗にコツンと振動した程度。痛みもなく、特に問題はない。

 下を見ると、こちらに向かって攻撃をしている者たちが見えた。

『無駄なのに』

 人間は昔と変わらないようだ。獣人はどうだろう?

 上空から森を見渡す。木の影や洞窟の近くに獣人たちの姿が見えた。どうやら、彼等は何かから逃げいているようだ。いや、一部の獣人は森にいる人間と戦っている。

『まだ、人間と獣人は争っているのか?』

 我が眠りについた時も、人間と獣人が争っていた。しかもあの当時の人間は、その戦争に我を利用とした。我の傍にいる者を利用して。

『あの者は、我が眠ったあとどうしたんだろう?』

 我の事を友と呼び。勝手に傍に来て勝手に話をし、満足すると帰って行く不思議な獣人。我と一緒にいる時間が長くなってせいで、我を利用したい者たちに狙われてしまったのだったな。眠る前に、あの者を狙う者はすべて燃やしたが、大丈夫だっただろうか?

『それにしても、相変わらず弱いな』

 腹の方の鱗にコツン、コツンと振動を感じる。無駄だと分かるはずなのに、愚かな事だ。

 攻撃をしている者たちに向かって口を開ける。その瞬間、人間が四方に逃げたが気にせずブレスを吐いた。人間も木々も消えた場所を見て、大空に視線を向ける。

『もっと高く飛ぼう』

 高みを目指し、羽を動かす。もっと高く、もっと高く。

『気持ちがいい』

 ずっと眠っていたせいで、少し体がギシギシと言っているが、すぐに治るだろう。

 階下に広がる森を見ると、先ほどの騒々しさが嘘のように静かになっていた。

『さて、静かになったしまた眠るか』

 起きていたら面倒な事になりそうだしな。

 地上を目指して飛ぶと、同じ大きさの石が綺麗に並ぶ場所が見えた。そこは森の中で一番高い崖の上。

『あれは、何だ?』

 少し気になったので、寝床を探す前に崖に向かう。

『これは、なんだ?』

 綺麗に並んだ石を見る。どれも同じ大きさで、文字が刻まれていた。

『名前のようだな。あっ、一つだけ大きな石がある。んっ? リーガス?』

 この名前には憶えがある。かつて我の下によく来ていた者の名だ。


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