表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】背徳 〜サイコパス医師に堕とされた御曹司の恋〜 〘R15版〙  作者: 路明(ロア)
27.運命は風に翻弄され

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

87/116

IL DESTINO È IN BALIA DEL VENTO 運命は風に翻弄され VI


「ジュスティーノ様! 何をやっているんですか!」


 レナートが羽交(はが)()めにして止めようとする。

「イザイアはいまどうしている!」

 ジュスティーノはかまわず声を上げた。

 こんな事態に慣れているのか、それともレナートに押さえつけられて銃の(ねら)いがブレているせいなのか。エルモは落ち着いていた。

「あたしもよくは知らないんですよ。ご存知のとおり直接お会いしてるわけではないですから」

 ジュスティーノは泣きそうになり目を眇めた。

「あのう……」

 エルモがなだめるように苦笑いする。


「何でしたらピストイアの兄君にお聞きしては。たしかな知らせを受けとってるでしょうし、いまはすっかり顔見知りでしょ?」

「あの御仁がほんとうのことなど教えるわけがないだろう!」


 ジュスティーノは声を張り上げた。

 ようやく話の内容をつかんだのか、レナートが羽交い締めにした腕をゆらす。


「パガーニ家の兄君には、ついさきほどお会いしたさいに "だれも死んではいない” と言われたばかりだ」


 レナートがそう補足する。

「あらら……」

 エルモは両手を上げたまま苦笑した。

「若様の性格を読んだか。そうとうお(なげ)きでしょうに気遣いする方だな」

「嘆くわけがないだろう! イザイアをあんなところに送りだして!」

 ジュスティーノは力づくで(もが)いてエルモに銃口を近づけた。


「注文はいつ途絶(とだ)えた」

「言うな」


 レナートがエルモに向けて言う。

「言う必要はない」

「言え!」


「ジュスティーノ様」


 レナートが脇の下に入れた腕をグッと上げ、さらに力をこめて押さえこもうとする。

「こう言っては何ですが、いい機会では。医師殿のことは忘れてください」

「そんなことができるか!」

 ジュスティーノは声を上げた。

 嗚咽(おえつ)しそうになるのをムリやりおさえる。


「言え! 知っている限りのことでいい」


 エルモは小さくため息をついた。

「……注文が途絶えたのは、二週間ほどまえで」

「助手は何か伝えてはこなかったのか」

 ジュスティーノは銃口を向けたまま問うた。


「助手さんたちは単に医師と一商人のあいだがらとしか思ってないんじゃないですかね。旦那がとくに何も言わなければ、途絶える理由も予告もなしじゃないかと」


 ジュスティーノはじっとエルモの顔を見た。

 とりあえずは落ちついたと判断したのか、レナートが腕の力をゆるめる。

 ジュスティーノはその腕を軽くふり払い、拳銃を丸テーブルの上に置いた。



「リヴォルノに行く」

「は?」



 スタスタと応接室の出入口に向かうジュスティーノの背後で、レナートが声を上げる。

「いまからですか? やめてください!」

「エルモ」

 ジュスティーノはふり返った。

「このあとリヴォルノに戻る予定だったのか?」

「ええまあ……」

 エルモがようやく両手を降ろす。

「ちょうどいい。おまえの馬車に同乗する」

「行かせるわけがないでしょう!」

 レナートが駆けより、背後から肩をつかむ。

 ジュスティーノは(ほお)(こわ)ばらせた。


 表情にも話し方にも抑揚(よくよう)がなくなっているのが自分で分かる。


 イザイアに何があったのか。これ以上は考えたくなかった。

 ともかくイザイアの近くに行けば、べつのいい情報が得られるのではという根拠のない考えだけで動いている。 


「レナート、外出着の用意をしろ。それと」

 ジュスティーノは応接室のドアを開けた。


「おまえには休暇を出す。実家に帰るなり好きな相手のところに行くなりゆっくりと過ごせ」


「そんな休暇など、とるわけがないでしょう!」

 レナートは主人の肩を強く引いた。

 ジュスティーノは半歩ほどうしろによろめいたが、足も思考ももはやリヴォルノにしか向いていない。

「港から助手宛に手紙を出す。彼がいまどうしているのか即刻(そっこく)伝えろと」

「いやそれなら、若様がしたためた手紙をあたしがあずかって港から渡せばすむのでは……」

 エルモが困惑した表情で言う。


「それに若様」


 エルモが真顔になり続ける。

「旦那の助手は、すでに一人ずつ島から帰ってるらしいです。これから行ってもだれも残ってないかもしれない」


 ジュスティーノはドアを引いた手を止めた。

 目を大きく見開き、応接室の外の廊下をじっと見つめる。 

「こうなるともう、確実なのかなと」

 「ペストでなのか」とジュスティーノは問おうとした。

 だが(のど)がつまり声が掠れる。

 言いたいことを察したかのようにエルモがさきに答えた。


「ペストではなく、ひどい過労のようだって渡し守に聞きました。だからあたしも、ありえるなと」





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ