RAPPORTO SESSUALE PERVERSO 背徳 III
「服を着ているなどめずらしい」
部屋にもどったイザイアが、ジュスティーノの姿を見るなり口の端を上げる。
ジュスティーノはベッドに座り、さきほどあわてて着た服に何かを察せられるような汚れがなかったか確認した。
「レナートが来たのだが」
「あの従者殿か」
イザイアが、シャツの袖の留め具を外しながら応える。
「部屋を出る許可を出したとたん若様の居場所を聞いてきたが」
「何も貴殿の私室にいると言わなくても」
「何か不都合でも」
イザイアが平然と言う。
ジュスティーノは視線を泳がせた。
この医師にしてみれば、自堕落な生活を人に知られるなど何でもないことだったか。
イザイアがベッドに近づく。
「感じたか若様」
そう問う。
何に対してか。
イザイアの獲物を見すえるような目つきをジュスティーノは見つめた。
彼の独特の甘い匂いに惚ける。
「何も知らない従者殿のまえで男との情交を意識するのは、感じたか」
イザイアが耳元に唇をよせる。
ジュスティーノは当惑して目を左右に泳がせた。
そんなことは発想したこともない。
またひとつ、理性の壁を崩されたと感じた。
「かわいそうに。従者殿がいるあいだ、ずっと我慢なさっていたのか」
脳が心地よくしびれ、ジュスティーノは熱のある息を吐いた。
「健気な方だ」
「……してくれ」
ジュスティーノは熱い息を吐いた。
イザイアが口角を上げて、じっと見ている。
ジュスティーノはイザイアのシャツを両手でつかむと、うすい唇に口づけた。
冷静な舌に、たのみこむように舌をからめる。
イザイアに教えこまれた懇願のしかただ。
この男の手と体温が欲しくて、常識の軸は日に日に狂っていった。
不意にイザイアの唇が離れる。
拒否されたのかと不安になり、ジュスティーノは薄目を開けた。
イザイアは、鼻先でじっとこちらの反応を見ていた。
口元はおだやかに笑んでいるが、目は笑っていない。
いつもの彼独特の微笑だ。
つぎは何をすればいいのか。
「イザイア」
「脱いでくださらないか、若様」
イザイアが口の端を上げる。
「服など着られていては、拒否されているようで何もできない」
イザイアが髪に口づける。
「こちらは常に怖いのだ、若様」
イザイアが情に訴えるように苦笑する
「高貴な御家の御曹司に手を出すなど、御家から咎められ罪に問われはしないかと」
イザイアがやさしく髪をなでる。
シャツ越しにつたわる体温が、ジュスティーノにしがみつきたい衝動を感じさせた。
「高貴なお体を好きにしていいと、許可をくれないか若様」




