ANGELO CADUTO DAL CIELO 空から堕ちる III
「 “玩具にしてくれ” だ、若様」
イザイアがささやく。
「鳴きながらねだってくれないか」
ジュスティーノはのし掛かった男に潤んだ目を向けた。
何を言われているのか。
もはや冷静に意味を捉えることができない。
この男の指示に従いさえすればいいのだと性欲に引きずられた頭で思った。
「玩具に……」
口元がわななくのが自分で分かる。
強烈な性欲で、表情の箍がゆるむ。
「玩具にしてくれ……」
イザイアがゆっくりと耳元に唇をよせる。
さらに淫猥な言葉をささやかれ、くりかえすよう促された。
聞いたこともなかったような猥褻な表現を口にする。
言うごとに、イザイアに取りこまれていくと感じた。
それがたまらない快楽に思える。
うわごとのようにイザイアの言う卑猥なセリフをくりかえす。
ひとしきり言い終えると、イザイアは褒美のように口づけた。
していることの強引さに反して、接吻はやさしい。
やさしさがこの人の本性なのではないかと思った。
さきほども愛おしいという言葉を口にしていたではないか。
愛が理解できないと言いつつ、ちゃんと分かっているではないか。そう思う。
肩を抱いてもいいだろうか。
ジュスティーノは、ぎこちない動きでイザイアの両肩に手をそえた。
いちど離した唇をイザイアがふたたび唇の上にすべらせる。
唇の端をわずかに上げて笑み、唇を強めに押しつける。
褒美をもらっているように感じた。
「舌を。若様」
ジュスティーノはうす目を開けた。
舌をイザイアの唇のほうに差しだす。
「からめて」
イザイアの低めの声が心地よく感じられる。
形のいいうすい唇を舌で割り、歯牙のあいだをさぐってイザイアの舌を求める。
冷たいイザイアの舌を、自身の舌にゆっくりとからめる。
指示に従うのが欲情を煽った。
支配され翻弄され、獲物を捕らえるような冷たい目で無礼に扱われるのが欲情を焚きつける。
口づけた唇を離し、おおきく荒い息を吐く。
「まだだ」
イザイアがささやく。
「まだ唇を離すな、若様」
潤んだ目でイザイアの唇を捕らえ、乱れた息のなか懸命に口づける。
イザイアが口の端を上げた。褒美を与えるように、唇をやさしく押しつける。
ジュスティーノは小さく呻いて舌をからめた。
これをすれば、また褒美がもらえる。
愛が理解できないと話したイザイアに、奇跡のように湧いたやさしい感情がもらえる。
「いい子だ、若様」
イザイアが甘い声でささやく。
唇が離れ、ジュスティーノは熱くなった息を吐いた。
イザイアがジュスティーノの内股に手をそえる。
「かわいがってあげよう、若様」
イザイアがこちらを見下ろす。
「……ああ、玩具にしてほしいのだったか」
イザイアが、美しい顔に冷たい微笑を浮かべた。




