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【完結】背徳 〜サイコパス医師に堕とされた御曹司の恋〜 〘R15版〙  作者: 路明(ロア)
6.夢魔

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INCUBO 夢魔

 人の気配を感じてジュスティーノは目が覚めた。

 寝ていたのかと気づく。

 部屋のなかはすでに真っ暗だ。

 夜になってしまっていたのかと見当をつける。


 読書机のそば。ロウソクにあかりをつけている人物が目に入った。

 しばらくながめて、イザイアだと気づく。


 オレンジ色の火に照らされて、整った横顔に濃い影が差している。

「使用人にはやらせないのか」

 ジュスティーノは、ぼんやりとした口調で尋ねた。

 隔離(かくり)されていたときも夕刻の診察のさいにイザイアが手ずから灯りをつけていた。

 あのときは医学面での意味でもあるのかと思っていたが。


「留学中は、わずかな付き人だけで暮らしていましたからな。まあこれくらいは」

「なるほど……」


 ぼやけた頭を懸命に覚醒(かくせい)させながらジュスティーノは応じた。 

「立派だな貴殿は。そうして医学を修めて」

 ジュスティーノは笑いかけた。

 シャツ一枚の姿で寝ていたことに気づく。ヘッドボードにかけられたズボンを見た。


「私は眠ってしまったのか……」


 ジュスティーノはゆっくりと起き上がった。

「寝づらいだろうと思い、服を脱がさせていただいたが」

 イザイアが灯りをつけ終えて、そう告げる。

「手数をかけた」

 ジュスティーノは苦笑いした。

「酒で寝たことなどなかったのだが」

「疲れていたのでしょう」

 イザイアがそう答える。手燭(てしょく)をこちらに持ってきて、サイドテーブルに置いた。

 ジジ、と(しん)の焦げる音がする。

「何もせずにいたのに疲れているのか」

 ジュスティーノは苦笑した。

「経験したことのないこと続きで、心がやられているのでは」

 イザイアが天蓋(てんがい)を片手で軽くどける。こちらの様子を伺うように上体をかがめた。


「どんな夢を見ていました?」


 イザイアが尋ねる。

「夢……」

(ほお)が紅潮して、汗ばんでいらした」


「そうなのか……」

 ジュスティーノは自身の胸元を見た。

 そういえば診察を受けている夢を見ていた気がするが、はっきりとは覚えていない。

「私の寝姿に病の兆候でも?」

 ジュスティーノは問いかけた。

「いや。きわめて健康な青年の体だ」

 イザイアが答える。

 ジュスティーノは、ホッと息をついた。

 医者にこんな言い回しをされると、いちいち心配になるものだなと思う。

「おどかしてくれるな。健康ならよかった」

「ええ、ほんとうに」

 イザイアは読書机にもどると、こちらに背を向けて水差し(カラッファ)を手にした。


「なかなかよかった」





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