CAMERA DA LETTO DEL MATTINO 朝の寝室 I
ドアをノックする音がした。
しばらくすると返事を待たずにドアが開き、簡略的な正装の金髪の青年が入室する。
レナートだ。
「食堂広間に朝食の用意ができているそうです。起きてください」
言いながら窓ぎわに行き、カーテンを開ける。
朝のうすい陽光が射しこみ、天蓋のなかにもさわやかな光が入りこむ。
よく晴れているようだ。
外からは運河に停めた小舟のぶつかり合う音がかすかに聞こえる。
起きてすぐに感じる潮の香りが、そういえばリヴォルノにいたのだったと朝をむかえるたび思い出させる。
「休暇はまだ一日二日のこっているそうですが、早めに島に戻られるそうですね。こちらも帰る準備をしないと」
言いながらレナートは、カーテンをタッセルでまとめる。
窓ぎわのカーテンすべてを開け終えると、つかつかとこちらにこちらに近づき、天蓋を開けてベッドを覗きこんだ。
「起きてください」
「ああ……」
イザイアは、気だるげに起き上がった。
彫刻のような均整のとれた裸体で三角座りの姿勢になると、後頭部に手をあてて長い髪をバサバサとほぐす。
あきらかな性交の跡の残るベッドを恥ずかしがることもなく、もの憂げに息を吐いた。
「朝か」
イザイアは、ベッドを覗きこむレナートのほうを見ると口の端を上げた。
「ゆうべは楽しかったよ、従者殿」
事後に読んでいた書物をおもむろに枕元からとると、レナートにさし出す。
「書棚にもどしてくれるか」




