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第24話 召使い

「……今日はずいぶんと馬車が多いな」


 今起きた話題をそらすようにグリムは業者に話しかける。


「あ、あぁ……おらたちは王子様に命じられただぁ」


 呆然としていた業者はグリムに話しかけられて我を取り戻したように答える。


「舞踏会は三日後っていってだだよ」


「み、三日後?」


 業者の口から突然舞踏会の日程を告げられて、リオンも驚いてしまう。


「そうか、三日後か」


 グリムはそれだけ言うとその場から離れようとした。


「ど、どこいくのよ」


「この町から……シンデレラの世界から離れようと思う」


「えっ!?」


 舞踏会の日程を知った時よりも大きな驚きの声がリオンの口から出る。


「物語が完成したらこの世界は消えてしまう、その前に離れる、一体何を驚く?」


 グリムは当然だと言わんばかりに説明する。彼が言っていることはもっともではあったが、理由はそれだけではない様に感じた。


 今日この世界を一望できる場所で彼に出会った時点でなんとなく出ていくのではないかと感じていた。


 あの夜を最後に別れるのを嫌だと思ったリオンは町の中へ彼を連れ戻した。グリムは手を引かれて町に戻ってきてくれたのでもう少し滞在するのかと思っていた。


 しかしすぐに彼は出ていこうとしていた。


「じゃあな」


「ま、待ちなさい」


 背を向けて歩き始めようとしたグリムを止めようとする。


「っつ……!」


「……おい、大丈夫か」


 慌ててグリムのもとへ駆け寄ろうとしたが、けがをした方の足が痛み、バランスを崩してその場に転びかけてしまう。見かねたのか、グリムが両肩をもって支える事で転ばずに済んだ。


「あ、ありがとう」


「ケガをしたんだ。舞踏会までは大人しくしていろ」


「これぐらいなら一日休めば大丈夫よ……それに今日この後、靴屋さんにお金を渡しに行かないと……」


 一人で歩こうとするが、グリムは支える体を離そうとはしなかった


「別に一日ぐらいいいだろ」


「だめよ、私の為にあれだけ素敵な靴を作ってくれた彼との約束を守らないわけにはいかないわ」


「…………だめだ」


 グリムは一向にリオンを離そうとはしない。彼の手に込められた力から相当に心配をしてくれている様子は伝わってきた。



 その時、リオンは頭の中でグリムを引き留める方法を思いついた。



「それなら……舞踏会まで私の面倒をみてくれるかしら?」


「なに?」


 リオンの提案にグリムは一瞬体の動きが止まる。このようなことを言われるのは想定外だったのだろうとリオンは理解する。


「最初に助けた分のお返し……これでチャラにしてあげるわ」


 リオン自身、彼の親切心に漬け込む行為は良くないと十分に分かっていた。それでもこう言わなければ彼は今日この世界から旅だってしまう……そんな気がした。


「……分かったよ」


 グリムの言葉を聞いてリオンは内心でホッとする。


 この場所でこのような形でお別れすることは嫌だと思ったリオンは些細な約束で彼をこの世界に引き留めることに成功する。


「まずはシンデレラの様子を見に行きましょ」


 グリムの肩を借りてリオンはシンデレラのもとに向かった。


    ◇


 人々はシンデレラの安全を確かめ終えたらしく、殆どの人はシンデレラから離れて人込みはなくなっていた。おかげですんなりと彼女のもとに行くことが出来た。


「シンデレラ、大丈夫?」


「はい、お姉さま私は大丈夫です……あ」


 シンデレラはすぐにリオンの右足をけがしている事に気が付いた。


「これくらい平気よ」


「ほ、本当ですか?」


「ちょうど舞踏会まで私専属の召使いも手に入ったしね」


「誰が召使いだ」


 グリムはリオンの言葉に呆れながら突っ込みを入れる。


「グリムさんもありがとうございます」


「大した事をしたわけじゃない……馬には悪い事をしたしな」


 シンデレラはぺこりと頭を下げてお礼を言う。グリムはシンデレラから視線を逸らした。

 最初は照れくさくて視線を逸らしたのかと思ったが、どちらかというと馬に対しての申し訳なさによって素直にお礼を受け止められない様子だった。


「あのお馬さんは……死んでしまったのですか?」


「まぁ……そんなところだ」


 リオン達を襲った馬はグリムによって姿も形もなくなってしまった。

 業者が言った通りなら彼が馬の胴体を貫いたことによって死んでしまった。しかしリオンが見た時、馬は役割に反して燃えてしまったわけでもグリムに殺されてしまったようにも見えなかった。

 ただ精気を失って消えてしまった、そんな感じだった。


「あなた、何をしたのよ」


「…………」


 グリムは何も答えようとはしない。彼が無言を通すのは決まってそれ以上聞いてほしくない時である。ここ数日の付き合いで分かっていた。


「とにかく私達が助かったのはあなたのおかげよ、ありがとう」


「…………」


 リオンの言葉に対してもグリムは視線をこちら側には向けようとはしなかった。


「さあ、舞踏会ももうすぐ始まるみたいだし、家に帰ってしっかり休むわよ」


「……あれ?」


「どうかしたの、シンデレラ?」


 シンデレラは何かに気づいたかのような声を上げた。


「……な、なんでもないです」


「あら、そう?」


 シンデレラはにこりと笑う。その笑顔は何かを隠している時に彼女が取り繕うごまかしの顔だった。


「……お家まで帰りましょうか」


 その後リオンはグリムの肩を借りて、二人は家にたどり着いた。

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