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第13話 買い物

「それじゃ、いきましょか」


 時間通りに来たリオンと共に町の中を歩く。他に用もなかったグリムは昨夜彼女に言われた通りに今日は買い物に付き合うことにした。


「今朝あの子を講習場に連れて行ったら講師が腰を抜かしていたわ」


「そりゃそうだ……」


 いきなり一般の住民の家にこの世界の主人公が来て、しかも踊りを教えてほしいと言われたらそうなるだろうとグリムはあきれて声も出なかった。


    ◇


「着いたわ」


 リオンに連れられて歩くこと数分、大きな看板に衣類の絵が描かれたお店の前に到着する。


「ここは仕立て屋か?」


 リオンはそうよ、と肯定するとドアを開ける。後に続くようにグリムも店内に入った。


「やぁ、いらっしゃい」


 店主がグリムとリオンを迎え入れる。店内を見渡すと荘厳なドレスがマネキンたちに着飾られていた。


「頼んだドレスはできているかしら?」


 リオンが店主に話しかける。店主は相変わらず人使いが荒いなぁと言いながら部屋の奥から一着のドレスを持ってきた。


「ここの店主は服屋という役割なのか?」


 気になったグリムは受け取ったドレスを真剣な目で確認しているリオンに聞く。


「ダンス講習の人と同じで別に服屋でもなんでもなかったわ。ただ服をこしらえるのがほかの人よりも上手だったから、どうせなら舞踏会の衣装を作ってもらいたいと思っただけよ」


「おかげで俺もいっぱしの仕立て屋さ」


 店主は不満ではなく満足げに息を吐いた。その様子は前日に出会ったダンスレッスンの講師と同じものだった。


「さっそく着替えてみるわ……言っておくけど覗いたらぶっ殺すわよ」


 そう言うとリオンは衣服やの奥の部屋に入っていった。


「彼女のおかげで何人もの人たちが生きがいを持つことが出来た」


 ふくよかな体系をゆらしながら男性の店主がリオンを待つグリムに話しかけてくる。


「その話はもうすでに別の人から聞いたよ」


 店主はそうかい、とリオンが他者に役割を与えている行為を知っているかのような反応を示す。

 一体何人の人間に彼女は関わっているのかとグリムは改めて彼女に感心する。


「君は「白紙の頁」を持った人間かい?」


 正確には違うが、いちいちすべての人間に説明するのも面倒なため、無言で肯定したような態度をとる。


「役割を与えてくれる彼女に君も何か役割をもらったらどうだい?」


 店主の冗談とも本気とも言えない提案にグリムは肩をすかして笑う。


「ねぇ、グリムどうかしら?」


 着替えを終えてドレスに身を包んだリオンが颯爽と奥の部屋から現れる。


「てっきりもっとド派手なドレスを着るのかと思ったよ」


 リオンが来ているドレスはいくつかのバラの花の刺繡が入った大人びた赤色のドレスだった。


「あなた私の印象どう思っているのよ」


「人使いの荒いおせっかい」


「……もしかしなくても馬鹿にしてる?」


「さあな」


 グリムがそう言うとリオンは下唇を軽く突き出してむっとする。からかわれていることが気に食わないようだった。


「このドレス気に入ったわ。さすが私の見込んだ仕立て屋ね」


「それはどうも、俺も舞踏会に参加する女性のドレスを作ることが出来てうれしいよ」


「また舞踏会の開催日が決まったら服を取りに来るわ、それまではここで保管お願いね」


 ついでに舞踏会に参加する娘たち全員に腕のいい仕立て屋がいることを紹介するわ、とリオンが言うと店主は連日徹夜で仕立てかなと冗談を言って嬉しそうに笑った。


「じゃあまた着替えるわ、グリムはそこで待っていなさい」


 着替えに戻ってから今度は5分ほどで元の格好になって戻ってきた。


「次は隣の家のアクセサリー屋にいくわよ」


「まさか次の人間もお前が?」


「なによ、ただ手先が器用な人だったから装飾品を作ってみたらと提案しただけよ」


 グリムは彼女が町の人全員の役割を決めているのではないかと思えてしまう。


 今日何度ついたかわからないため息を吐きかけたが、リオンの嬉しそうな笑顔を見て呑み込むと彼女と共に次のお店に入っていった。

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