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第123話 急転

「……以上だ」


 グリムの説明を聞き終えたサンドリオンは何かを考えるように目をつむった。


「俺一人では間違いなくローズは介入してくる、協力してくれるか?」


 グリムは彼女が首を縦に振るとそう思い込んでいた。しかし、想定とは大きく異なる回答が彼女からは返ってくる。


「……悪いが私はその計画に賛同できない」


 その言葉を聞いてグリムは驚いてしまう。


「どうしてだ?」


「理由は二つある……一つ目はシツジの意思を確認していない」


 サンドリオンは人差し指を立てる。


「グリムの話を聞く限りではあの少年は別に魔法使いの役割を与えられても嫌ではない、そうだな?」


「……あぁ」


「本人の意思なくしてこの作戦を実行するのはどうなんだ?」


「それは…………」


 グリムもそこは気がかりであった。いばら姫の願いを叶えるうえで必須の問題点ではないが、協力者ならば気にするべき内容ではあった。


「二つ目の理由は当然一つ目に付随するものではあるが、もしもいばら姫の願いを叶えなければこの世界は滅んでしまう……それを看過することはできない」


「だが、シツジが魔法使いの役割を持ったら彼はこの世界から出られない」


「最初のその質問に戻ってしまうが、本人はどうとらえている?」


 質問のループに入りかかってしまい、互いに黙り込む。


「まずはシツジに確認するべきだ、それから判断しても遅くはない」


「それは……いばら姫が嫌だと言っている」


「……なぜいばら姫は拒んでいる?それはシツジが聞かれたら彼女にとって望まない答えが返ってくるからじゃないのか?」


「…………」


 グリムは何も答えることができなかった。サンドリオンには伏せて説明をしていたが、それはいばら姫がはっきりと断言していた。


「いばら姫というたった一人の願いを叶えるために他社の感情やこの世界の平静すべてを犠牲にする……最初にも言ったがそれならば私は協力することはできない」


「……そうか」


「私は何も聞かなかった事にする……王様にもマロリー達にもこの件は伝えない」


 それはサンドリオンのせめてもの計画に反対している彼女なりの計らいだった。


「そうだ……」


 グリムは胸ポケットから一つの石を取り出すと棚にかけられていた剣を持ち、さやの部分で軽くたたく。石はきれいに二つに分かれた。その片方をサンドリオンに差し出した。


「これは……?」


「羅針石と呼ばれるものだ……これがあれば境界線を越えても互いにはぐれることがなくなるらしい」


 グリムの説明を聞き終えるとサンドリオンは羅針石を受け取った。


 グリムは羅針石について説明を終えると一人でその場を離れた。



    ◇◇◇



「本当にローズの言う通りになった」


 グリムが去った後の部屋でサンドリオンは天井を見上げながらそう思った。


「彼は世界を滅ぼそうとしているの?」


 そんなはずはないと頭の中で彼女は否定する。しかしローズの言葉が頭の中から消えなかった。



    ◇◇◇



「そうですか……あなたの付き添いの方は協力しないと」


 翌日、グリムはサンドリオンが手助けをしてくれないことを伝えた。


「なぁ……シツジに真実を言うのはできないのか?」


 それさえ通ればサンドリオンも協力してくれる可能性が高かった。


「出来ませんよ……伝えたらそれこそこの計画は破綻します」


「シツジはあんたのために命をささげても構わないと思っているんだろ、それなら……」


「……この世界は父によってとっくに歪んでいます……シツジを突き合わせる必要はありません」


 彼女の意思は揺るぎのないものだった。


「……わかったよ」


 グリムは彼女の覚悟をくみ取って肯定する。世界よりもただ一人を救うことを選んだいばら姫はかつての白雪姫のグリムと重なるものがあった。似た境遇というのも影響しているのかもしれない。


「決行は明日にする」


「あなたの相方も知ってしまったものね」


 サンドリオンが他の人間たちにシツジを魔法使いにする計画を話していないとは言ったもののグリムと彼女以外に計画が漏れた時点で計画を早めに進行させるに越したことはなかった。




 その翌日、いばら姫の誕生日を迎える5日前に事件は起きた。



 シツジが行方不明になったのである。



    ◇◇◇



 誰よりも早く異変に最初に気が付いたのはいばら姫だった。いつもならば毎朝いばら姫の部屋に朝食を届けに来るはずのシツジが現れず、代わりに別の給仕が現れたのだった。


「シツジはどうしたの?」


「わかりません……王様からは今日からシツジのかわりにあなたの面倒を見ろと……」


 給仕のその言葉を聞いていばら姫は嫌な予感が芽生えた。


「直接私が聞きに行くわ!」


 給仕を背にいばら姫は部屋を飛び出して玉座へと向かった。


    ◇


「お父様、いったいどういうことですか!」


「朝から何の用だ」


 息を切らしながらいばら姫は玉座に座る自分の父親に詰め寄った。


「シツジはどこへいったのですか?」


「……お前が知る必要はない」


 王様は何も答えるつもりはないといった様子でいばら姫をこの場から遠ざけようとした。その行動からよからぬことが起きているといばら姫はその場に踏みとどまる。


「いいえ、あります!もしも彼がいなくなってしまったら……私たちは困りますから!」


 嘘は何一つ言ってなかった。父親にとっては魔法使いの代わりとして見ているが、いばら姫にとってはそれ以上の意味合いを持つ。


「そうか……お前も一応はこの世界の事を案じていたのだな」


 いばら姫の父親は娘もこの世界の完結を考慮していると解釈したらしく小さく息を吐くとシツジが消えた理由について語られた。


「シツジは私の命令である場所に監禁した」


「…………な」


 王様の言葉を聞いていばら姫は絶句してしまう。


「これは当然の判断だ」


 淡々といばら姫の父親は歯に衣着せぬように話した。


「納得がいきません。なぜシツジを監禁したのですか」


「お前の誕生日までもう時間がない……万が一に備えてシツジは城から逃げられないようにしたまでだ」


 シツジが消えた理由は王様の命令による拘束が原因だった。


「マロリー殿は相変わらず前日まで「頁」に役割を刻むことを拒まれた。それならば「頁」を持つものを決して逃がさないようにするのは必然だ」


「これまでは偶然にもたくさんの「白紙の頁」の所有者がいたから泳がせていたが、万全を期すに越したことはない」


「まさか……ほかの方たちまでこの世界の犠牲にしようとしていたのですか?」


「犠牲とはなんだ……私はただ、彼らをこの世界を完結させるための()()として見ていただけだ」


 同じ意味合いだといばら姫は唇をかむ。いばら姫の父親はこの世界のためならばグリムやリオン、そして世界を完結に導く能力と案をもたらしたマロリー達さえも利用しようとしていたのだった。


「お前は誕生日までおとなしくしているんだな……おい」


「ま、まだ話は終わっていないわ……放しなさい!」


 王の合図とともに兵士たちによっていばら姫は王の間から引っ張り出される。扉は占められ、これ以上は取り合ってもらえそうにもなかった。


「お姫様、王様に言われたとおりにお部屋にお戻りください!」


「…………嫌よ!」


 いばら姫は兵士の手を振り払い、西側の塔へと走り始める。この状況を一刻でも早く彼に知らさなければいけないと思ったのである。

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