第5話:結果
話の区切りの関係で今回は文字数少なめです。何卒ご容赦ください。
ふと意識が戻ってくるのを感じた。
先ほどまであった激しい頭痛や耳鳴りはいつの間にか治まっている。
真っ白であった視界も次第に景色を取り戻していく。自分の体が浮かんでいた感覚も消え、今はしっかりと地面を踏んで立っていた。
「…!…ん!…ゅん…」
声が聞こえる。女性の声だ。視界はぼんやりとしているが、目の前に誰かがいるのが分かる。
そしてその視界ははっきりと映り、耳鳴りが消えたことで、周囲の音も鮮明に聞こえてくるようになった。
「純!?聞こえてる!?」
「え…あ…」
こちらを心配そうに見つめる女性の正体は、母の芹だった。
「母さん…」
「どうしたの?話してる途中で急に固まっちゃって。目カッ開いて口パクパクしてたけど…」
「いや、目の前が真っ白になってさ。急に」
そう言ったところで、純はおかしなことに気づいた。
自分が立っているのは、自分の部屋ではなく玄関であった。
「あれ…?なんで俺、ここにいるんだ?」
純の言葉に芹は目を丸くした。
「は?何を言っているの?今帰ってきたんでしょうが」
そう言われ、純は自分の体に目線を持っていった。
…シャツにネクタイを付けており、スラックスを履いていた。右肩にはスクールバッグをかけている。
「どういうことだ…俺さっきまで課題をやってたんだよ?自分の部屋で」
芹の眉間に皺が寄る。
「…熱でもあるの?純はたった今、帰ってきたのよ。『ただいま』って、自分でも言ってたじゃない」
「そんな…」
冷や汗がブワッと滲んでくるのを感じる。
こうなる前、俺は何をしていた?純はパニックになりながらも必死に思い返した。
課題が終わって、少しあの水晶玉を観察して、スイから届いていたメールに返信して…そうだ!
純は震える手で左ポケットにしまっていた携帯電話を取り出し、開いた。
そして、その時刻を見る。
19時27分。
「まさか…」
受信フォルダを開くと、メールを受信していた。受信時刻は、19時25分。明からであった。
本文は…
『そういえば明日は僕の好きなバンドのアルバムの発売日なんだ!一緒にタワレコに行くぞ!』
純は凍りついた。そしてすぐに送信フォルダの方もチェックする。
そこに、返信したはずの純のメールはなかった。
さっきこのメールを見たのは、このメールが届いてから40分ほど経過した頃だった。20時を回ったのを携帯の時刻で確認しているから、間違いないはずだ。
ならば、結論は一つとなる。信じられない。が、消去法で全ての可能性を消していくとそうであるとしか言えない。
「時間が…戻っている…」