第47話 真実
辺り一面の霧が晴れた……
息を吹き返したクレアは、ユーリと抱き合っている。
そして見渡してみると倒れている魔族に、
カートがトドメを刺そうとしていた。
「カート、待て」
その行為を中断するよう、クレアが一声かける。
「お前、魔王軍の関係者なんだろ?
エルフの里に何を企んでいる?」
「貴方達、知っていたのではないの?」
身体半分が消滅していながらも、
メデューサは口を開いていく……
「四天王、魔女エレノア。
あのお方がエルフの里に入り込んでいる」
「な、魔女だと!」
「時間をかけてエルフを弱体化させているのよ」
その言葉を聞き、ユーリは震えていた……
繋いでいる俺の手に不安が伝わる。
「あのお方は、魔の血が流れる者を、
使い魔にしてしまう……」
「………」
「私は使い魔になって以来、名を名乗る資格は無い」
「せいぜい、その女の子を守ることね……」
メデューサはユーリを見つめながら呟く。
そして、身体を維持できる限界を超えて、
光の粒子となり消えていった……
「魔女がエルフの里に……」
「ユーリ!大丈夫だ!」
クレアはユーリを抱きしめる。
魔王軍、エルフの里といった言葉が、
ユーリを苦しめると分かっているからだ。
「あねご……」
ユーリの中で様々な感情がせめぎ合う。
過去の因縁もあり、これから自分がどうしたら良いのか分からなくなっていた。
「ひとまずエルフの里は危険だ!
私達は、あの方の居る場所に向かうぞ!」
そして流れから、次の目的地の話に繋がる。
「今は緊急事態だから許してくれるだろう……
クリス、カート!お前達も連れて行く」
「え?」
「賢者の所へだ」
そして俺達は、山道を降っていく。
過去の賢者に会う為に……
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
カートは目が飛び出そうなほど驚いていた。
何と言っても約500年前に生きていた偉人、
賢者が今も生きている事実に驚愕している。
そして今は、荒野の岩場の前に来ており、
この隠し通路が賢者の家へ繋がる。
「あ、あねご……
この岩が道になるの?」
「ふふふ、まあ見てなさい」
王から託された秘宝を手に持ち、岩の前へかざす。
巨大な岩は、音を立てながら移動した。
「わーー!こんな風に道が」
ユーリは信じられないという表情をしながら、
動いた岩をチェックしている……
そして暗闇の道を歩いて行く。
ふとカートが疑問に思ったのか口を開いた。
「あのさ、この暗い道を抜けたら、
あの世でしたって事はないよな?」
「ば、ばかもの!
へ、変なことをいきなり言うな」
クレアは今まで意識した事は無かったが、
いざ言われてみると意外に怖い場所だと、
意識してしまい震えてきた。
「あねご、大丈夫だよ!
霊も鍵がないと入れないから……」
「そ、そうだな……
この鍵は私が持っているのだからな」
ユーリは、ジト目でカートを見ている。
頭に手を当てて、ごめんとカートは合図した。
テヘペロおじさんである。
そして明かりが見えてきた。
隠し通路の出口に近づいていく。
目の前に見える光景は、ひまわり畑。
丘に一軒だけ建っている家がある。
10年前も変わらない賢者の家だ。
「す、凄い……」
あまりの絶景に、みんなが感動している。
特にユーリは、子供のようにはしゃぎ始めた。
「お、おい!
あまり走るなよ~」
「あははは、あねごーー!」
ユーリは、ひまわり畑を走り抜けた……
純粋に楽しんでいるユーリを見ると、
こちらも何故か幸せな気持ちになってくる。
そして家の前に立ち、
クレアがドアをノックする……
「師匠、クレアです。
ただいま到着しました」
「はいよーー!」
そしてドアが開くと同時に、賢者が現れた。
「クレア、久しぶりだね~」
「お師匠様、お久しぶりです」
「ん?あんた、まさか!
覇王を持っているのかい?」
賢者は俺を見ると同時に、覇王所持者と見抜く。
「はい、賢者様……」
「ん?どうやら訳ありのようだね……
まあとりあえず、みんな中に入りなさい」
そして賢者の家の中へ入り、俺達は着席した。
「まあ、旅疲れもあるだろう。
茶でも飲んでゆっくりしな!」
目の前に紅茶とクッキーが置かれて、
ユーリは、目を輝かせている。
「食べて良いぞ……」
クレアが苦笑いしながら言う。
ユーリは、お腹が空きすぎて、
我慢しているのを知っていたのだ。
「ところで、クレアとユーリだけでなく、
この二人まで来ているのは盟約違反だが、
勿論理由があるのだろう?」
「エルフの里に四天王魔女エレノアが、
入り込んでいると情報を得ました……
それで、一旦はこちらに避難しました」
「なに、エレノアだと!」
賢者は四天王の人柄、実力を把握している。
エレノアと聞き、眉間に皺を寄せた。
「エレノアか……
かなり姑息な手を使ってきてるだろう」
「もしかすると謎の果実も、
その者が原因の可能性が……」
カートが果実について言及する。
まだ調査段階だが疑惑を口にした。
「果実の効果か分かれば、
手を打つことも出来るんだがね……」
「あの……」
賢者が言った事に対して俺は口を開く。
「それは弱体化か、
スキルを消滅させる効果の可能性が高いです」
「ん?何でそんなことが分かる?」
俺が答えた内容に疑問を感じて、
母上は問いかけてきた……
「賢者様、そしてみんな……
ここからは俺に少し時間を下さい!
俺の全てを打ち明けます」
いよいよ全てを打ち明ける事になった。
みんなに、託された想いを伝える時。
そしてここから、未来を変える物語へ繋がっていく。
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